第十三話
「あんたどれだけサラダ食べる気よ」
神尾が俺の山盛りになったサラダボウルを見てげんなりと言った顔をして目の前の席に座った。
席は今日もいくらでも開いているが、俺は仕方がなくイヤホンを外した。
ハロウィン以来俺は酷く元気で食欲がある。
神棚は結局買っていない。
クッキーは次の日に食べた。
食べられるものは食べられるうちに食べなければいけない。
食べ物を粗末にしてはならないのだ。
ちなみにクッキーはカボチャの味だった。
「そんなに野菜ばっか食べて、美味しい?」
「美味い」
ここのサラダバーは種類も多く美味い。
特に今はカリカリに素揚げされた蓮根の入ったサラダをオリーブオイルとザクザクの玉ねぎで作ったドレッシングをかけて食べるのがお気に入りだ。
ちーちゃんさんにも食べさせたい。
国立科学研究所の社員食堂は毎日ではないが解放されていて誰でも食事することが可能だ。
そこまで高くないし和洋中とメニューも豊富だ。
食べに来ないかな。
此処で会えたらどうしよう。
私服だよな。
私服、私服、至福。
ちーちゃんさんは俺に気づくだろうか。
白衣だから気づかないか。
そもそも食事をしに店に来て他の客の顔なんかわざわざ見ないか。
あの店毎日来る客とかいるのかな。
スーパーやコンビニとかと違うから毎日は来ないか、でもコーヒーだけでもいいんだしな。
ちーちゃんさんは見れるし、同じ空間にいられるし、そういやカヌレ食べたいな。
今日買って帰ろう。
後エクレアも買って、バターの塊のようなガレットも食べたい。
「カツ丼美味しそうね」
「美味い」
ちーちゃんさんの食生活ってどうなっているのだろう。
見たところ健康そのものというか、全身の隅々にまで栄養がいきわたっていると感じる。
バランスの取れた食生活を送っている証左だろう。
だがジャンクフード大好きなちーちゃんさんも捨てがたい。
ハンバーガーをもぐもぐし、シェイクをがぶ飲みするちーちゃんさん。
可愛い。
食べ過ぎでムチムチになるちーちゃんさん。
「ムチムチになっちゃって」とか言って白い頬をつねって欲しい。
可愛い。
せめて食費だけでも出させてもらえないだろうか。
ちーちゃんさんの豊かな食生活に一枚かみたい。
人間の身体は食べたもので形成される。
ちーちゃんさんの血肉に一役買いたい。
会いたい。
見たい。
聞きたい。
話せなくていい。
ただ彼女の声が聞こえる世界にいたい。
だから休憩時間は一人がいい。
一人で食いたい。
ちーちゃんさんの声を聞きながら、美味いものを食べ午後に備えたい。
まあ、やったら終わる。
いつだって帰れないことはない。
終わったらケーキだって買いに行ける。
それだけで十分だ。
何も望んでなんかいない。
ただこの日々がずっと続けばいい。
そう思っている。




