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三家の日々  作者: びけ
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女子力(物理)ってもう女子力関係ないよな

 授業後の休み時間、俺はきゃっきゃうふふと乳繰り合う女子たちを目で追っていた。別に百合趣味があって眺めてるわけじゃない。今の自分に必要なものを改めて考えていたのだ。ぼーっとしていると視界を塞ぐように立ちはだかって雪音が文句を言ってくる。


「またイヤラシイ目してる。あなた本当にスケベよね。どうする?抉る?」


「抉らねーよ!言いがかりも大概にしろよこのスケベエクステンドが」


「誰がスケベエクステンドよ!あなた本当に頭おかしいんじゃないの!?溺死すれば!?」


「別に頭おかしくねぇよ!女子視界に入れただけで言いがかりつけてくる奴の方が余程頭おかしいわ!」


 別に俺イヤラシイ視線で見てないし。むしろ視姦だと言い張る雪音のほうがムッツリなまであるから。


「あなたと話してると私まで頭おかしくなるわ。私もう行くから。もう話しかけないでね」


 話しかけてきたのお前からだろうが…。雪音の理不尽さに未だに慣れず、溜息をつきながら思考を元に戻す。女子の友達欲しいなぁ、と。雪音の言うような下心があるわけじゃなくて単純に円滑に合唱のやり取りができるような女子と交友を結びたい。


夢たんは話しやすいけどクラスのグループじゃ少数派で影響力も実のところあまりないのだ。ここらで声がでかいのを1人味方につけたい。


「となると・・・矢吹か」


矢吹桃子、クラスでも声が大きく発言が通りやすい。女子の友達も多く、男子相手でも物怖じしない胆力もある。完璧だ。完璧なんだが・・・正直に言うわ!こいつと話すの怖い。


見た目は華奢で身長も低め。頭の横で二つに結んだ髪も愛らしい。しかし忘れてはいけない特徴がある。女性としてはあり得ない握力と腕力を持ち、クラスの男子全員を腕相撲で敗北に追いやった『サン〇オピ〇ーロランド春の陣』(彼女はリボンをつけた猫のマスコットの大ファン)は記憶に新しい。ちなみに俺も完全に敗北している。思い出すだけで恐ろしい。


「ねぇねぇ手加減してない?これで全力じゃないよね?マジうけるー!」


「いや…!マジで!本気なんですけど…!なんなら全体重かけてるんですけどォ…!」

 全力で力を入れているにもかかわらず1ミリも矢吹の腕は動かない。


「女子相手に怪力みたいに言わないでよぉ!本気じゃないならもう終わらせるからねっ!」


「ひっ・・・」


『ズダン!!!』

腕相撲では出るはずのない音が教室に響いた。俺の肩は無事に外れた。保険医に再び肩を嵌めてもらった際の激痛はいまだに俺の中にトラウマとして息づいている。ついでにいえば彼女は数学係も務めていて、数学の課題の徴収役もこなしているんだが…これがまたえげつない。元借金取りのソンサンも舌を巻く徴収だ。


課題を忘れた者は彼女と握手という罰ゲーム、通称『握手会』が行われるのが通例だが、万力さながらの力で利き手と男のプライドを破壊されるその催しの存在こそ男子の数学の課題提出率の向上に一役買っているのは間違いない。ちなみに俺は数学が大嫌いで課題提出率も群を抜いて悪い為、2日に一度は彼女に処刑されている。握手したいわけじゃない。断じてない。


そんな関係性もあって会話はすることは多いものの俺は彼女が非常に苦手なのだ。


キーンコーン…


おっと、授業始まるわ。次の授業なんだったっけ…数学……あ。


「みーけっ!ちゃんと課題やってきた?♪」


「んーん、課題の代わりにゲームやってきた♪」


「握手の時間だね♪」


「超握手したいんだけどさァ!残念だなァ…!マジ残念だなァ!今日両手首折れちゃったんだよなァ…!」


「手首ダメなら首でいいよ。早く出して。握手しよ♪」


「まってまって超まって首握るのは握手じゃなカッ…がハッ…オぇ…」


『首』に『握手』されて涙目で咳き込みながら誰に宛てるものでもなく思った。課題はちゃんとやれよ?

ちゃんと提出しないと矢吹が握手会しに来るぞ。

課題はちゃんとやりましょう。矢吹が来るよ!

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