ふざけが過ぎました
先に謝っておきます。
すみません。
ちょっと修正しました
「エイレス!」
そう呼ぶとエイレスはケリオスに向かって牙を向けた。
ただ真っ直ぐ一直線に狙いをつけて。
その動きは単純だからこそ捉えがたい。
無駄に動きがない分減速はない。そして初見だ。目も慣れてはいないだろう。
エイレスのその牙はケリオスの首にまるで吸い込まれるように届こうとしていた。
しかし、ケリオスが手で払いのけるようにしてそれをいなした。
そして、払った手を見てエイレスを見ると少し不気味に笑った。
そう言えばさっきからこいつが笑っている顔しか見ていない気がする。
違う顔も見せてもらうことにしようじゃないか。
そう思ったところにケリオスが話しかけてきた。
「お前召喚士かよ。……まあ別に良いけどさ。ちょっと詰まらねーな。そうだ、ちょいと素手でやり合わねえか?」
「馬鹿言うなよ。俺は貧弱なんだ。なんならお前の鼻息で死ねるぜ」
「ハッ、なるほど貧弱だ」
納得したかのように鼻で笑われた。
そして、俺を見て首を捻った。やはり笑みを浮かべて。
「なんだ死なねえじゃねえか」
「俺を殺すつもりだったのか。この人でなしめ」
「いや、お前の方から殺しにかかったじゃねえか。後、俺は人じゃねえし」
あー、しまらない。
ここまでしまらないともう脱力ものだ。
何とも調子が狂う。もしかして、クレイたちの緊張感の無さが移ったか?
だとしたら由々しき事態だ。俺は冷静さがアイデンティティーだったはずだ。うん、きっとそうだったはずだ。
なのにこれでは色々と危うい。
という事で八つ当たり気味にケリオスにナイフを振るった。
「おっと」
軽く胸を掠めたが致命傷には程遠い。
「避けんなよ」
「馬鹿言うな。普通避けるだろう」
口を尖らせて俺にそう言ってきた。
男がそんな顔してどこに需要があるというのだろうか。
しかもそれが魔族という事もあってかなり不愉快だ。
「避けなくてもどうせ大丈夫だったろうが。少しぐらい八つ当たりさせろ。どうせお前殺しに来てるんだ」
「お前、勝手すぎんぞ」
「知らんよ。それにお前らにそんなことを言われたくないね」
ケリオスは手を後頭部に当てて俺を見るとこう言った。
「そうかい。じゃあ、俺も八つ当たりをさせてもらおうじゃねえか」
そう言うと拳を上げ、それを俺の腹に打ち込んだ。
「かはっ」
内臓が潰される感覚と骨がいくつか折れたような音が聞こえた。
体が風を切る音が聞こえ、そして後ろの木にぶつかり背中に強い衝撃を受けた。
木にぶつかった後に重力に従ってずるずると落ちていく。
あーもう、痛てえな。
一体、今ので何本折れた?
5本?6本?もしかしたらそれ以上かもしれない。
「ごふ」
おっと、口から血が流れてしまった。あれ?軽く、死ねる。
これは本格的にやばいかもしれない。意識が薄れていく。
死ぬ直前は走馬灯が見えるとよく聞くがそんなことは全くない。むしろ、何も見えなくなっている。
痛覚もいい感じに麻痺して痛みなんか感じなくなってきた。
何ともまあ情けない事だ。
勝手に復讐なんて言って、結局死ぬなんてさ。
全く馬鹿みたいだよ。
ああ、足の方が冷たい。
そろそろ死ぬのだろうか?
「彼の者に慈悲を」
薄れていく意識でそんな声が聞こえた。
するとじわじわと体が温かくなっていった。
血が体中をめぐる感覚だ。
目を開けてみるとセシリアが俺の前に立っていた。
「ふー、良かったです」
「せ、……セシリア」
止まっていた息を大きく吸った。
ふー、生き返った心地だ。本気で死んだかと思った。
しかし、まあ。
「お前の聖魔法ってやっぱり凄いんだな」
体の不調がもうほとんどない。
既に元通りだ。むしろ今までよりも快適なくらいだ。
「あまり勝手なことはしないでください。下手したら死んでましたよ?」
「ああ、すまん」
正直こいつらのことを忘れてた。
もうケリオスの事しか頭になかった。……こう言うと語弊を招きそうだ。
というか、考えてみればケリオスとのやり取りが普通に馬鹿みたいだったことに気付いた。
なんか八つ当たりされて死にかけたんだが。いや、こっちも八つ当たりはしたし、殺しに来てんだけどさ。
「あんまり短気は起こさないでくれよ、本当に」
そうクレイが俺に行ってきた。確かに今のはカッとして無謀に飛び出していった。
結果がこのざまだ。なるほど、本当に短慮だった。
「悪い悪い。ちょっと違和感しか感じなくてな。つい」
「ついって……」
半ば呆れ顔だ。
何故か呆れられてしかいない気がするのは気のせいか。
「あんまり僕たちのいることも忘れないでくれよ。本当に君を連れてきたことを後悔しているところだ」
「ああ、すまん。本当に忘れてた。いたのか?って思うぐらい影薄いんだもんお前ら。ん、じゃあ俺悪くないんじゃ?」
「……君って開き直ること多いよね。というかこんな場所でよくそんな風に振る舞えるね。緊張感は持とうよ。緊張感は」
「む」
こいつに言われるのは意外と末期ではないだろうか。
いや、確かに今のはふざけたがこいつらもたいがいふざけているようにしか見えない。
やはりこいつらのものが伝染したのかもしれない。
だとしたら、
「お前らのせいだ」
「責任の押し付けが強すぎるんだけど。もう岩とか動かせるぐらいには押し付けてるんじゃない?」
はあ、とため息を吐いて俺を見る。
そして、手を差し伸べる。
「立ちなよ。まだ、戦闘中だ」
そう言うと空気を変えた。俺の時とは大違いな気迫だ。
やはり一番緊張感が無かったのは俺らしい。
他の奴も見てみると総じて殺気立っている。肌からびりびりとした痛みまで感じてくる。
「いーね。ほんとにいい感じだ。俺好みの空気だね。さっきのバカみたいなやり取りも嫌いじゃないがやっぱりこっちの方がいい」
グヒヒと気味の悪い笑い方でケリオスは笑った。
それを見てクレイたちは警戒レベルを引き上げた。
獰猛な目つきでケリオスはクレイに体の重心を傾ける。
さて、俺も出遅れたらいけない。
さあ、二回戦を始めよう。
い、いや次は真面目にやりますよ。ホントですって。……多分。
ということである程度は、どうか。…ね?ね?
あー、後更新ペースが明日から不定期になりますのでご了承を。
ストックが……ないんです。魔法みたいにストックが増えないかな……。