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バカでした

色々と名称は適当です。

後、おかしいと思ったところがあれば教えてください。

 生えている雑草を踏みつぶし、連中を連れて歩く。

 一応、獣道でここらの道を歩き慣れていないだろう奴らを連れて歩くのでゆっくりと慎重に歩く。

 後ろをちらりと確認してみると割と楽そうに歩いていた。これならペースを上げても大丈夫だろう。


「なあ」


 クレイが気まずそうに俺に話しかけてきた。


「なんだ?」


 首を後ろに向けてクレイの方を向く。

 うーん、やはり美形を目の前にすると目に毒だな。劣等感が湧き上がってくる。


「君ってこの森に慣れているようだけど、どうして」


 どうやら俺の様子を見て、疑問に思ったらしい。

 まあ、確かにそう見えるかもしれない。


「ここらに住んでるからな」

「へえ、ここの近くに家でもあるの?」

「いや、野宿だな」

「野宿ね。こんなところでよく野宿なんてしてるもんだ」


 ここは、多種多様な魔物が生息している。全体的にここの魔物は強い。確かにこんなところで野宿するなんて物好きもいいとこだろう。


「どれくらいここにいるの?」

「あー、一年ってところだな」

「い、一年?」

「そう、一年だ」

「何?ここにいることに信念でもあるの」


 とんでもない愚か者を見るような目で見られた。というか実際そんな目で見ているだろう。

 思い返してみても我ながらなぜここにいるのかが分からない。


「まあ、一番は金がないからだな」


 これが一番切実な問題だった。

 どの国も入国料なんてとるから中にも入れないし、飯も食えない。住む場所もない。ないないづくしだ。


「でも、入国料さえ払えれば無料でギルド登録でも出来るだろ」

「ああ、いや、冒険者は嫌いなもんでね。出来るなら登録はしたくない。それにここの生活も思いのほか楽しいしね」

「そうか。誰にでも事情はあるだろうさ。深くは聞かない」


 まあ、別に聞かれても何も困ることはないのだが。別にここにいるのも大した理由はない。言ってしまえば何となくだ。やろうと思えば金ぐらいはそれなりに稼げる。

 だが、そもそもそこまでするほどの気力がない。基本的には面倒くさがりなのだ。だから、しばらくはこのままでも良いと思っている。流石にここで永住するわけには行かないが。

 今度は遠いところにでも行こう。まあ、次は旅の途中に金でも稼いでみるか。

 ああ、そう言えば。


「お前らはなんでこんなところにいるんだ?」

「なんでって?」

「だから、どうしてこんなところを通ってるんだ」


 それなりに強い魔物を跋扈する森なんて通るよりも、何もいないもう一つの森を通る方が良いはずだ。ここの森ももう一つの森もいける道はほとんど変わらない。わざわざこちらから行く意味などないはずだ。まあ、、こんなところに住んでいる俺が言える台詞でもないが。


「ここの森に用事があってね」

「用事ね。内容を聞いても」

「別に良いさ。多分君の迷惑になることでもない。ちょっとした足止めさ」

「足止め、ね。それは魔族の事か?」


 クレイの目が大きく見開いた。

 いや、後ろの連中も一緒にだ。


「どうして君がそれを知っているんだ?」

「それぐらいは分かるさ。それにお前、勇者だろ」

「そんなことまで……」


 別にそう驚くほどでもないだろう。こんな所でもクレイという名前の勇者がいることぐらい知っている。

 それに聖剣なんて腰にかけていたらそりゃあ分かる。


「まあ、手伝えることもないがせいぜい頑張りな。俺の生活を脅かさないようにな」

「分かってるさ」


 まだ少し俺に不信感を持っていそうだが気にはしないでおこう。どうせ今日限りの関係だ。どう思われようが関係ない、


「――ねえ、こいつどう思う?」

「――さあ、でも悪い人ではないのではないのですか?一応は助けてくれたのですから」

「――でも、何考えてるか分からないじゃん」

「――それは、まあ、そうですね」


 のだがこうもこそこそと俺の事を話されるといささか不愉快だ。

 特に茶髪の方はさっきから俺に何か言いたいことでもあるのだろうか?


「おい、お前ら」


 そう話しかけると二人はびくっとしてこちらを見た。

 その反応はなんだ。俺が悪者になった気分だ。


「名前は?」

「なんであんたなんかに言わないといけないのよ」

「セシリアと申します」

「ちょっとセシリア!」


 何故か俺に反抗的な茶髪と違って、金髪の女の方は素直に俺に名を名乗って来た。

 素直でよろしい。それにしても金髪に名前がセシリアね。


「聖女様も一緒か」


 まあ、勇者が一緒の時点で分かっていたが。


「いえ、過ぎた称号です。私なんてとてもとても。私はただのセシリアです」


 しかし、セシリアは手を左右に振ってそう言った。意外と謙虚らしい。そうでもないと聖女とは呼ばれないだろうけどな。


「そうかい。で、そっちの茶髪は?」

「ああ、こちらはシリカです」

「勝手に人の名前言わないでよ!」

「助けてもらったというのに名乗らないとは失礼でしょう。それに、こちらはキースさんの名前を知ってるのですから」


 未だに不満そうに頬を膨らましているが渋々と首を縦に振った。


「分かったわよ。私の名前はシリ――」

「あ、着いたぞ」

「被せないでよっ!今、自己紹介してたでしょ!」

「タイミングが悪かっただけだ。気にするな」


 いや、本当はちょっと面白がってやったけど。

 まあ、軽い仕返しみたいなものだ。


「それに名前はもう聖女に聞いたからいい」

「だから、私はセシリアです」

「……セシリアが教えてくれたからいいさ」


 聖女を呼び捨てにするってなんだかやりにくいな。さん付けするのもなんか違う。

 まあ、俺に対する態度が微妙に神々しいせいかもしれない。


「ああ、絶妙にムカついてくる。とりあえず一度殴っていい?」

「何がとりあえずなのかが分からないけど、それはやめろ。お願いだから上げたその手をもう一度下ろしてくれ。俺はか弱いからな。お前と違って」

「よし、そこまで殴られたいらしいわね。私の一撃は重いわよ」


 即刻、離脱させてもらうことにした。

 俺はこんなところで死にたくはない。


「ああ、そこにいる無口っ娘はなんて言うんだ?」

「無口っ娘?ああ、フーラのことね。あの子はちょっと話すのが苦手だからね。悪気はないから許してくれ。別に君が嫌いだとかそんなわけじゃないから」


 一番後ろをトボトボと歩いてきていた少女の名前を尋ねたら、クレイがそれに答えた。

 後ろの少女もそれに頷いた。


「まあ、どうせ今日限りの関係だから気にはしないさ。それよりもさっさと服洗え」

「……ちょっと、いい?」

「――ああ。なんだ?」


 いきなり話始めたから少し驚いてしまった。

 聞いてみると鈴の鳴るような声だ。


「……匂い消すだけなら服を洗う必要ある?」

「どういうことだ?」

「……だから、違う匂いをつけるとか、服変えるとか」

「ああ、確かにそれでいいのか」


 匂いを消すことしか念頭になかったからそれは盲点だった。


「お前ら、何か違う服持ってる?」

「持ってはいるが防御力は全くないからな。出来るなら変えたくない」

「その服も防御力は無さそうだが」

「この服は特別からね」


 多少派手な色彩をした服だが、普通の服にしか見えない。

 一体何が特別だというのか。


「まあ、見ててよ。インスタリング」


 小さく何か言葉を唱えた。

 すると、クレイの着ていた服が淡く光る。

 それは徐々にクレイを包むように大きくなった。そして、ゆっくりと光が弱くなっていく。


「こういうことだよ」

「なるほど」


 見るとクレイは赤い鎧を身に着けていた。

 どうやら、変化する魔法式でも組み込まれているらしい。


「随分と派手な演出だな。光が体を包むって」

「僕も恥ずかしいんだけどね。でも、必要な光らしい」


 専門的なことはよく分からない。

 まあ、必要だというのなら必要なのだろう。


「でも、この光に包まれているときのクレイさんは素敵だと思いますよ」

「私もそう思う。格好いいよ。……まあ、いつも格好いいけどさ」

「……私も同意見」


 口々にクレイの事を褒めたたえた。

 なるほど、なるほど。そう言うことね。


「ふーん、そうかそうか。へー」

「えっと、どうしたのかな?」

「いや、別に一回滅んでしまえばいいんじゃないんだろうかと思っただけだ」

「なぜ!?」


 何故って、分からないわけでもないだろうに。もしかして煽ってんのか?


「いや、三人とよくも付き合えるなって」

「つ、つ、つ、付き合ってないよ」


 顔を真っ赤に染めて俺の言葉を否定した。

 あら、付き合ってないのか。あんなに女に惚れられているくせに勿体ない事だ。反応を見るに初心か。


「そ、それに彼女たちにも失礼だろ」


 は?何言ってるんだ、こいつ?

 ちょっと意味が分からない。


「僕なんかを好きになるわけがないだろう」


 ……なるほど、こういう手合か。

 ちらりとクレイの後ろの女三人を見て、憐れみを持って頷いた。

 三人とも力よく頷いた。

 つまりクレイはとんでもない、鈍感(馬鹿)らしい。

鈍感な奴は嫌いです。

という事でクレイは嫌いです。

……ひ、ひがみじゃないんだからね!


茶番、失礼。

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