3. おイモはおいしく焼けたかな
大急ぎでお城に戻った男の子は、暖炉の前で手を温めていました。夏の女王様のところで手ぶくろに穴が開いていたから、手がかじかんでしまったのです。
男の子は王様にお手紙を届けたことと、春の女王様がカンカンに怒っていることを話しました。
「ふむふむ、それはありがとう。ご褒美なにが欲しいかな?」
「ぼくはあたらしい手ぶくろがほしいです」
それを聞いた王様は目を丸くして、大臣に宝物をたくさん持ってこさせました。それでも男の子は手ぶくろが欲しいと言いました。
「ふむふむ、それなら仕方ない。君には手ぶくろさし上げよう」
王様が男の子にあたらしい毛皮の手ぶくろをあげると、男の子は大喜びです。
しかし、どうしたことでしょう。あわてた様子の大臣が王様にこう言いました。
「王様、王様、ありません。冬がながーく続いたせいで、おイモはどこにもありません」
王様は少しだけ考えると、男の子を見つめてこう言いました。
「ふむふむ、お願い男の子。君には秋の女王様に、おイモをもらってきて来ておくれ。おイモを春の女王に、とどけてくれたら、これをあげよう」
王様は頭にかぶっている王冠を男の子に見せました。きらきら光る王冠は、王様のあかしです。おイモをとどけたら王様になれると聞いて、男の子は大喜びです。
男の子は大急ぎで、秋の女王様のところへ行くのでした。
秋の女王様の家に着いた男の子は、秋の女王様におイモをわけてくださいとお願いをしました。
「まあ、そんなことがあったの。そうね。おイモは分けてあげてもいいけれど、わたしは寒くて困っているの」
秋の女王様はきれいなドレスを着ていましたが、とても寒そうにしていました。
そこで男の子は、着ている毛皮のコートを秋の女王様にあげることにしました。コートを受け取った秋の女王様はにこにこと笑っています。
「どうもありがとう。それじゃあ、おイモをあげましょう」
おイモを受け取った男の子は、寒い雪道を震えながら走っていきました。男の子はコートが無いので、寒くて寒くてたまりません。
ようやく夏の女王様の、焼けてしまったお家にたどり着くと、おイモを見せてこう言いました。
「秋の女王様から、おイモをもらってきましたよ」
これを聞いた春の女王様は大喜びで、飛びはねました。夏の女王様も春の女王様の機嫌がなおって一安心です。
「さあさあ、焚き火でおイモを焼きましょう」
焚き火でおイモを焼いているのですが、男の子は寒くて寒くてぶるぶると震えています。焚き火はあってもコートがないと、冬の寒さはたえられないのです。
「やっぱり、寒くてかなわないや。女王様たち、ぼくはお城にもどります」
男の子は二人の女王様にさよならを言いました。二人の女王様はにっこり笑いかけました。最後に春の女王様は、男の子にたずねます。
「ところで、ご褒美には王冠をもらうの?」
「ええと、今はあたらしいコートがほしいです」
男の子はそう答えると大急ぎでお城に戻っていきました。