2. 春の女王様どこですか?
男の子は雪道をざくざく鳴らして走っていました。北風がビュービュー吹いて、とても寒いのです。
帽子はカチンコチンに凍ってしまったので、頭も寒くてお耳も真っ赤、早くお城に行かないと、寒さでお耳が取れちゃいそうです。
ようやくお城に着いた男の子は、暖炉の前でぽかぽかと耳を温めながら、王様に冬の女王様のお話をするのでした。
「ふむふむ、それはありがとう。ご褒美なにが欲しいかな?」
「ぼくはあたらしい帽子がほしいです」
男の子の言葉に王様は目を丸くしました。
「ふむふむ、そうか帽子が欲しい。でもでも他にもいろいろあるぞ」
王様は大臣を呼ぶと、たくさんの宝物を見せて、これでもいいよ、これもすてきだよと男の子に言いました。しかし、男の子は首を右に左にふりふりとして、どれもいらないと言いました。
「宝物はすてきだけど、帽子がないと寒くて困るんです」
「ふむふむ、それなら仕方ない。大臣、帽子をあげなさい」
王様がそう言うと、大臣は男の子にもこもこの帽子をあげました。もこもこの帽子をもらった男の子は大喜びです。
「ふむふむ、そうだもう一つ。お願い聞いてもらえるか? 君には春の女王様に、お手紙とどけてもらおうか。お手紙とどけてくれたなら、ご褒美ひとつあげましょう」
そうして男の子は、春の女王様の家にお手紙を、とどけに行くことになりました。
雪の道をざくざくと歩きます。もこもこの帽子は温かくて、寒い道でもへっちゃらです。
森の中の春の女王様の家に着いた男の子は、とんとんとんと扉をたたきます。
ですが、誰も出てきません。
もう一度、とんとんとんと扉をたたきます。
でずが、誰も出てきません。
でもでも、するりと男の子の目の前に、ひらひら紙が落ちてきました。
紙は春の女王様のお手紙だったのです。
「わたしは夏の女王様のところへお出かけしています。なにかあったら夏の女王様のところへ来てください」
春の女王様に会えないと、王様のお手紙を渡せません。お手紙を渡せないとご褒美も春もやってきません。男の子は今度は、夏の女王様のところへ行くことにしました。
男の子が夏の女王様のお家に着くと、大変なことになっていました。なんとお家が燃えていたのです。
「だれか助けて!」
夏の女王様の声が聞こえて、男の子はあわてて雪をかけて火を消しました。すっかり燃えてしまったお家の前で、夏の女王様はがっくりとしていました。
そして男の子の手ぶくろも少しだけ焼けて、穴が開いてしまいました。
「どうして、こんなことになったんですか?」
「うん。それがねおイモを焼いていたら、火事になってしまったの」
どうやら夏の女王様は、春の女王様のためにおイモを焼いていたようなのです。魔法の言葉でおイモを焼いたら、あっという間にお家まで燃えてしまったようでした。
「困ったわ。春の女王様、おイモを楽しみにしていたのに。どうしましょう。おイモがないと、春の女王様はカンカンに怒ってしまうわ」
そうこうしている間に、春の女王様が帰ってきてしまいました。お家が燃えて無くなってしまっているのを見て、春の女王様もびっくりしています。
ですが、それよりも大事なおイモがなくなってしまったので、春の女王様はカンカンに怒ってしまいました。
「おいしいおイモが無いなんて、信じられないわ」
カンカンに怒った春の女王様でしたが、男の子の手紙に気がついて、ふいっと手紙を取りました。
「ああそうか。もうそんなに時間がたっていたのね」
春の女王様は手紙を読んで、早く春を呼ばないといけないと思ったようでした。
ですが・・・
「でも、わたしはおイモが食べたいの。おイモが無ければここを動かないわ」
春の女王様は男の子にそう言うと、ふいっと顔をそむけてしまいました。
そんな様子を見た夏の女王様は、男の子にこう言いました。
「王様のところへ行ってくれるかしら。王様ならおイモがどこにあるか知っているもの」
男の子は大きくうなずきました。夏の女王様は、それを見てにっこり笑って、最後にこう尋ねました。
「ところで、ご褒美には何が欲しいの?」
「ええと、今はあたらしい手ぶくろが欲しいです」
男の子はそう答えると大急ぎでお城に戻っていきました。