表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男の子と困った女王様たち  作者: ひかりばこうじ
2/4

2. 春の女王様どこですか?

 男の子は雪道をざくざく鳴らして走っていました。北風がビュービュー吹いて、とても寒いのです。

 帽子はカチンコチンに凍ってしまったので、頭も寒くてお耳も真っ赤、早くお城に行かないと、寒さでお耳が取れちゃいそうです。

 ようやくお城に着いた男の子は、暖炉の前でぽかぽかと耳を温めながら、王様に冬の女王様のお話をするのでした。


「ふむふむ、それはありがとう。ご褒美なにが欲しいかな?」


「ぼくはあたらしい帽子がほしいです」


 男の子の言葉に王様は目を丸くしました。


「ふむふむ、そうか帽子が欲しい。でもでも他にもいろいろあるぞ」


 王様は大臣を呼ぶと、たくさんの宝物を見せて、これでもいいよ、これもすてきだよと男の子に言いました。しかし、男の子は首を右に左にふりふりとして、どれもいらないと言いました。


「宝物はすてきだけど、帽子がないと寒くて困るんです」


「ふむふむ、それなら仕方ない。大臣、帽子をあげなさい」


 王様がそう言うと、大臣は男の子にもこもこの帽子をあげました。もこもこの帽子をもらった男の子は大喜びです。


「ふむふむ、そうだもう一つ。お願い聞いてもらえるか? 君には春の女王様に、お手紙とどけてもらおうか。お手紙とどけてくれたなら、ご褒美ひとつあげましょう」


 そうして男の子は、春の女王様の家にお手紙を、とどけに行くことになりました。

 雪の道をざくざくと歩きます。もこもこの帽子は温かくて、寒い道でもへっちゃらです。

 森の中の春の女王様の家に着いた男の子は、とんとんとんと扉をたたきます。

 ですが、誰も出てきません。

 もう一度、とんとんとんと扉をたたきます。

 でずが、誰も出てきません。

 でもでも、するりと男の子の目の前に、ひらひら紙が落ちてきました。

 紙は春の女王様のお手紙だったのです。


「わたしは夏の女王様のところへお出かけしています。なにかあったら夏の女王様のところへ来てください」


 春の女王様に会えないと、王様のお手紙を渡せません。お手紙を渡せないとご褒美も春もやってきません。男の子は今度は、夏の女王様のところへ行くことにしました。


 男の子が夏の女王様のお家に着くと、大変なことになっていました。なんとお家が燃えていたのです。


「だれか助けて!」


 夏の女王様の声が聞こえて、男の子はあわてて雪をかけて火を消しました。すっかり燃えてしまったお家の前で、夏の女王様はがっくりとしていました。

 そして男の子の手ぶくろも少しだけ焼けて、穴が開いてしまいました。


「どうして、こんなことになったんですか?」


「うん。それがねおイモを焼いていたら、火事になってしまったの」


 どうやら夏の女王様は、春の女王様のためにおイモを焼いていたようなのです。魔法の言葉でおイモを焼いたら、あっという間にお家まで燃えてしまったようでした。


「困ったわ。春の女王様、おイモを楽しみにしていたのに。どうしましょう。おイモがないと、春の女王様はカンカンに怒ってしまうわ」


 そうこうしている間に、春の女王様が帰ってきてしまいました。お家が燃えて無くなってしまっているのを見て、春の女王様もびっくりしています。

 ですが、それよりも大事なおイモがなくなってしまったので、春の女王様はカンカンに怒ってしまいました。


「おいしいおイモが無いなんて、信じられないわ」


 カンカンに怒った春の女王様でしたが、男の子の手紙に気がついて、ふいっと手紙を取りました。


「ああそうか。もうそんなに時間がたっていたのね」


 春の女王様は手紙を読んで、早く春を呼ばないといけないと思ったようでした。

 ですが・・・


「でも、わたしはおイモが食べたいの。おイモが無ければここを動かないわ」


 春の女王様は男の子にそう言うと、ふいっと顔をそむけてしまいました。

 そんな様子を見た夏の女王様は、男の子にこう言いました。


「王様のところへ行ってくれるかしら。王様ならおイモがどこにあるか知っているもの」


 男の子は大きくうなずきました。夏の女王様は、それを見てにっこり笑って、最後にこう尋ねました。


「ところで、ご褒美には何が欲しいの?」


「ええと、今はあたらしい手ぶくろが欲しいです」


 男の子はそう答えると大急ぎでお城に戻っていきました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ