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時計を見ると、息子はもうとっくに小学校から、帰っていなければならない時間である。……ま……まさか!?
自分の事ばかり心配していて、子供の事を完全に忘れていた。
慌てて、小学校に電話をする。
もうすでに、帰ったという返事が返って来ただけだった。
続いて、息子の寄りそうな友達の家に電話を掛けまくる。
どこにもいない。
子供にもしもの事があったら、夫や姑からからなんと言われるかという不安が綾子の中で大きく膨らんでくる。
家を飛び出した綾子は、息子が立ち寄りそうな公園や広場を捜し回った。
ポケットの中で携帯の着メロが鳴りだしたのは、小学校の前まで来た時である。
『もしもし』
佐久間の声だった。
『奥さんが血相変えて家を飛び出したと、警備の者から報告を受けたのですが、何かあったのですか?』
「子供が……子供が……」
『落ち着いて下さい。お子さんがどうしたんです?』
「子供が、帰ってこないんです」
しばらくの間、佐久間は無言でいた。
「佐久間さん……」
『失礼。今、警備の方に問い合わせてみました。大丈夫です。お子さんは、家にいます』
「なんですって!! だって……」
『奥さん。あっちこっちに電話を掛ける前に、家の中は捜しましたか?』
「あっ!」
捜してなかった。メールを見た後、気が動転してしまったのである。
大急ぎで家に戻ると、息子は自分の部屋でテレビゲームをしているところだった。




