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「それとですね、奥さん。外交員をやっていた時の、顧客データとか持ってませんか?」
「え?」
綾子は戸惑った。
もちろん、顧客データは持っている。しかし、当然それは社外秘であり、会社を辞める際に、全て返さなければならなかったものだ。
持っている事を、迂闊に他人に話せるものではない。
「会社を辞める時に、返しました」
咄嗟に嘘をついた。
いや、実際にはコピーを取った後でオリジナルのデータを返しているのだから、まるっきり嘘ではないが……
「そうですよね。持ってる分けないですね。分かりました。少々、お金が掛かりますが、探してみましょう」
「待って下さい! いくらお金を積んだって、そんなものは、保険会社が閲覧させては……」
「ええ、保険会社が相手じゃそうでしょうね。ですが、会社を辞めた外交員が顧客データのコピーを、名簿屋などに売ったりしてるんですよ」
「え!! そうなんですか」
綾子は引きつった笑みを浮かべた。実は綾子もそれをやっていたのだ。
「だから、金さえ出せは、データは探せるんです。もちろんこれは違法ですが」
「あ……そうえば……」綾子は今、思い出したかのように言った。「うちのパソコンのハードディスクに、まだ残っているかもしれませんわ」
かもしれないのではなく、事実残っているのだ。
本当は他人には見せたくなかったのだが、こんなもののために、余計なお金がかかってはたまらないと思ったのである。




