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『……結婚前にあんたに金を貸さなかったかって? なんで?』
電話の相手は、かつて綾子が保険会社に勤めていた時の同僚の幸子である。
「……その……」
綾子はぽつりぽつりと経緯を話した。
『……ふうん。少なくとは、あたしは貸した覚えはないわ。というか、あんたって金に関していつもキチンとしてたじゃない。あんたから借りた人はいても、貸した人はいないんじゃない』
「でも……お昼代がなくて借りた事はあるわ。ひょっとして……」
『あのねえ……そんな微々たるお金で、ストーカーする奴なんていないって。それよか、相手の番号分かっているんでしょ。こっちから、かけて文句言ってやれば』
「とっくにやったわ。でも、いくらかけても相手は電話に出ないし。メールを送っても返ってくるのは『金返せ』の一点張り」
『じゃあ、警察に番号をチクってやれば』
「それもやった。まだ、警察からはなんの返事もないの」
『警察に知らせたなら大丈夫よ。番号が分かっているなら少しぐらい時間がかかっても、じきに捕まえてくれるわ。それじゃあ、あたし仕事中だから、これで切るね』
「あ! 待って」
電話は切れていた。
……冷たいわ。わたしがこんなに苦しんでいるというのに、それでも友達なの……
夫。
実家の両親。
友達。
近所の主婦。
綾子の脳裏にいくつもの顔が浮かんでは消えていく。この、一週間の間に相談を持ち掛けた相手ばかりだ。
誰一人として助けにはならなかった。
……なんで……? なんでわたしだけがこんな目に会うのよ。
ピピ!
「ヒッ!!」
お馴染みの着信音に、綾子の思考は中断された。
恐る恐るディスプレーをのぞき込む。
夫からのメールだと知り綾子は安堵した。
〈探偵社に話を付けた。後日、探偵がそっちへ行く〉




