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再び運転席の方を向く。
「急いで!! あれが見えないの!!」
「あれってなんです? 何もいませんよ」
「何を言って……?」
振り返ると、猫はいなかった。遙か彼方に後続車の姿が見えるだけ。
「え?」
不意に車の速度が落ちた。
「あの? どうしたんです?」
運転手は答えず、タクシーを路肩に停止させる。
「あの……」
運転手は振り返った。
「ひ!!」
その顔は、顔中が髭に覆われた佐久間の顔だった。
「さ……佐久間さん」
佐久間は赤く光る眼でで綾子を睨みつける。
「金……返せ」
了




