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「どうかしましたか?」
運転手が心配そうに声をかける。
「い……いえ……なにも……」
……あのおばあさん。まだ、こんな事を……
もう、佐久間の家など見えるはずないのだが、綾子は振り向いた。
「……!!」
綾子は再び悲鳴を上げそうになる。
さっきの猫が追いかけてきているのだ。
運転席を見てると、メーターは時速八十キロを出している。
猫が追いつける速度ではない。
それでも猫はタクシーの数メートル後を、二股に分かれた尻尾を激しく揺らしながら、目を赤く光らせて追いかけてくる。
走りながらも、猫はまっすぐ彩子を睨みつけていた。




