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自分が軽い気持ちで付いた嘘をずっと信じていた。
佐久間は死ぬまで洋介を、自分の息子だと思っていた。
でも、そうだとすると……
「それじゃあ! メールを送っていたのは?」
洋介を自分の子供だと思い込んでいた佐久間が、その母親である自分にあのようなメールを送ったりするのだろうか。
「メールはあたしが送ってました。アドレスは探偵社に調べさせたのです。もっとも最初は、そのために探偵を雇ったのではなく、あなたの子が敬一郎の子では無いという証拠を見つけて、あの子に治療を受けさせようと思ったのです。でも、手遅れでした」
床にへたりこんでいる綾子を見下ろせる位置まで来て、老女は足を止めた。
「一つだけ聞きます。あなたの子供は、私の孫ですか?」
老女は、いつでも綾子を刺せるように包丁を構えた。
「ち……違います」
「そうですか」
老女は包丁を振り上げた。




