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『だから、金なんか借りてないって!』
電話の向こうで夫はうんざりした口調で言った。
「じゃあ、なんでこんな薄気味悪いメールが毎日送られてくるのよ!?」
メールは一週間ほとんど毎日続けて送られて来ていた。
最初の一日は一通だけ。二日目には二通。三日目には四通。
一日毎にメールは倍になっていき、昨日は三十二通になっていた。
ついに堪りかねて、九州にいる夫に電話をかけたのである。
この日は電話を掛ける前に五十通のメールが届いていた。
すでにメールBOXはいっぱいになり、全消去したばかりである。
「わたしは借金なんてした事ないのよ! こんなメール送られてくる覚えないわ!?」
『僕だってないよ! 君こそ誰かから金を借りて、忘れているんじゃないのか!? そいつは君の電話番号を知っていたんだろう。だったら君の友達じゃないのか』
「こんなうす気味悪いメールを出すような人に、番号を教えたりしてないわ。とにかく、お願いだから帰ってきてよ!」
綾子は哀願するように言う。
だが、それに対する夫の答えは冷たかった。
『バカいえ! 仕事ほったらかして帰れる分けないだろう。警察に知らせたらどうだ』
「そんな事とっくにやったわよ」
五日前、警察は犯人を探し出してやめさせると言っていたが、それからは何も言ってきてない。
警察が頼りにならない事を、改めて思い知らされた。




