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別の部屋を開けてみた。
六畳ほどの広さの洋室は、窓以外の壁がすべて本で埋め尽くされている。
窓に面した所に、小さな机があった。
その上にある小さな物体は携帯電話。
綾子の持っているものと同じタイプだ。
電源を入れたとたん、甲高い警報音が鳴り響く。電池切れだ。
机の隅にあった充電台に乗せたら、音はすぐに鳴り止んだ。
その脇にミニアルバムがあるのを見つける。
アルバムを開くと、最初のページに黒猫を抱いた男の写真があった。
男は髪も髭も伸び放題に伸ばしている。
綾子はようやく思い出した。
八年前に契約を取った髭面の男の事を……あの男の名前も佐久間。
ただ、昨日会った探偵の佐久間とは容貌にあまりにもギャップがあって、思い出せなかったのである。
そろそろ良いだろうと、携帯電話を充電台から外した。
送信メールボックスを開く。
ディスプレーに表示された電話番号は綾子のものたった。
〈採用〉のボタンを押してメールを開く。予想通りの文面がディスプレーに現れた。
〈金返せ!?〉
別のメールを次々と開いていく。
〈……子供はどうなった?〉〈俺の金返せ! 今木〉〈金返せ!〉
「……ここから、送ってたのね」
つぶやいた直後、背後に気配が生まれる。
振り返ると、入り口のところで黒猫がじっと綾子を見つめていた。




