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カーステレオからは、眠気を誘いそうな曲が流れている。
「これを、聞いてると落ち着くんですよ」
佐久間はハンドルを切りながら言った。時計を見ると、家を出てから小一時間経っている。
……今、どこを走っているのかしら? まさか、県境を越えているんじゃ……
「あの……奥村は引っ越したんですか? あの人の家は、相模原市だったのでは……」
「ええ、今は八王子市に住んでます」
「それじゃあ、ここはもう東京都?」
「そうですよ」
車は閑静な住宅街の中に入って行った。
……奥村に会ったらなんて話せばいいかしら? しゃくだけど、やはりわたしから謝るべきかな? 先に約束を破ったのはわたしだし、それにしても、あれから七年も経つというのに……
綾子は運転席の佐久間を見つめた。
「どうしました?」
視線に気が付いた佐久間がこっちを見返す。
「い……いえ……」
綾子は慌てて視線を逸らした。
……この人……昔どこかで会わなかったかしら?……
「さあ着きました」
車は住宅街の中の一軒の家の前に止まった。
「僕が先に家に入りますので、奥さんは僕が携帯で呼ぶまで車の中で待ってて下さい。くれぐれも、無闇に車の外に出ないで下さいね」
佐久間はそのまま車を降り、家に入っていった。




