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『それより奥さん。これから二人で奴の所へ行ってみませんか?』
「私もですか?」
『心配ありません。安全は僕が保証します。相手だってヤクザじゃないし、危険はありません。それより、このまま相手を訴えても、起訴するのは難しいと思いますよ』
「どうしてです? わたしは散々苦しめられたんですよ」
『ええ、しかし、相手はただメールを送っただけですので、これを有罪にするのは難しいんですよ。ですから、これから直接奴に会って、止めるように説得してみてはどうでしょう』
「そんな生ぬるい! そんな事ぐらいで止めるような相手ですか!! それに、ストーカー対策の法律だってあるんでしょ? それを適用すれば……」
『奥さん。こう言ってはなんですけど、保険の外交員をやってた頃、かなり強引な勧誘をやってましたね。犯人はその事を根に持っているんですよ。ですから、もし裁判になれば、その事が明るみになって、旦那様やお姑さんの耳に……』
「う……」
それは困る。
仕事のためにやったとは言え、あの事が夫や義母に知れたら……
それでなくても、息子への虐待がばれた今、そんな事まで知られたら確実に離婚される。
恐らく、裁判所は綾子の親権を認めないだろうし、下手をすれば慰謝料も出なくなる。
「わ……分かりましたわ。わたし会ってみます。でも、本当に危険はないでしょうね?」
『ええ、奥さんには指一本触れさせません』
佐久間はその後、何時に迎えに行くかを告げて電話を切った。




