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金返せ   作者: 津嶋朋靖


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 母親が部屋に入ってきたのに気が付いた息子は、キョトンとした目で母を見る。

「ママ。どうしたの?」

 その瞬間、綾子は頭に血が上り、息子をひっぱたいていた。

「ごめんなさい。ごめんなさい」

 なぜ、自分が叩かれるのか分からないまま泣いて謝り続ける息子を、綾子はさらに殴り続ける。

「なんで、帰ってきたなら、ちゃんと『ただいま』って言わないの!! あんたがまだ帰ってないと思って、ママがどれだけ心配したと思っているの」

「ごめんなさい。でも、ちゃんとぼく『ただいま』って言ったよ。ごめんなさい」

「ウソおっしゃい。ママはそんなの聞いてないわよ!」

 実際には、綾子は佐久間との会話に気を取られ、息子の帰宅に気が付かなかったのであるが、今の綾子にはそんな事を考える心のゆとりはなく、息子への折檻はさらに続いた。

「何をしているんだい!!」

 突然、初老の女性が親子の間に割り込んできた。

「お母様!!……」

 いつの間に来たのか、夫の母親が泣きじゃくる息子を抱え上げ、綾子を睨み付けている。

「綾子さん!? あんた、こんな小さな子に、なんて事するんだい! 自分の子を殺す気かい!?」

「いえ……わたしは……そんなつもりじゃ」

「あんたが、ストーカーに狙われているって聞いて、あたしゃ心配して来たんだよ。なのに、あんたは息子ほったらかしてほっつき歩いてるわ、帰ってきたと思ったら息子を折檻するわ」

「いえ……ですから……これは……」

「これは、いったいなんだい?」

 義母は息子のシャツを捲り上げて言った。

 幼い息子の体には、痛々しい青痣が無数にできている。

「そ……それは……」

「転んだ傷には見えないよ。あんた、やっぱり洋介ようすけを虐待していたんだね」

「虐待だなんて、そんな……それは……その躾です」

「ふざけんじゃないよ! こんな酷い傷を、作っておいて何が躾だ! とにかく、あんたの頭が冷えるまで、この子はあたしが預かるよ。いいね」

「待って下さい。話を聞いて下さい」

 だが、義母に聞く耳はなかった。そのまま、息子の手を引いて家を出て行ったのである。


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