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暗い話です。
この主人公、絶対に好きになれません。 読むと嫌な気分になります。
暗い小説なんか読みたくないと思う人は、すぐにブラバして作者の他の小説を読みましょう。
少女と猫の友情物語「秘密兵器猫壱号」や勧善懲悪スペースオペラ「時空穿孔船リゲタネル」がお勧めです。
ピピ!
うららかな朝の日差しが差し込む室内を、携帯の着信音が鳴り響いた。
綾子は飲み掛けのトワイニングティーを、テーブルに置くと、リビングのどこかにあるはずの携帯を捜す。
着信音がずっと鳴っていれば、容易に見つかっただろうが、音はすぐに途絶えてしまい、サイドボードの上にある携帯を見つけるまで少々時間がかかった。
スマホではなく、今時珍しい電話とメール機能しかない二つ折りの携帯。よく言えば節約家、悪く言うならケチな綾子は、携帯に金などかけたくなかった。今の携帯は亡き母のおさがりである。
綾子はメールを送ってきそうな相手を思い浮かべる。
九州に出張中の夫。
小学校に通っている息子の友達の親。
かつての職場仲間。
不意に綾子の脳裏に疑問が浮かんだ。
携帯のディスプレーを見た時、相手の番号が表示されていたのを思い出したのである。
覚えのない番号であるが、それを変だとは思わなかった。
そもそも、綾子は人の電話番号などいちいち覚えてはいない。
友人知人の番号はすべて携帯のメモリーに登録してあり、電話をかけるときも番号など打たず、メモリーの中から相手の名前を探し出して、かけているのだ。
綾子が疑問に思ったのは、メモリーに登録されている番号なら、番号ではなく相手の名前が表示されるはずだからである。
「ん?」
誰かの視線を感じた。
出窓の向こうから、黒猫がジッと綾子を見つめている。
「気味の悪い猫……」
気を取り直してメールを開く。
ディスプレーに短い文が表示された。
〈金返せ!〉




