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グラスパ  作者: Lika
2章
21/23

最強の騎士

スコルア東、70万の魔人は50万ほどに減らされていた。二人の魔術師が戦う戦場。その二人が時間を稼いでいる間に騎士団30万が展開する。ナハトは二人の攻撃が街と騎士団に被害が及ばないよう結界を張っていた。


(そろそろか……)


ナハトはラスティナとマリスの様子を東門の見張り台から伺っていた。二人は巨大な力の持ち主だが限界がある。制御できなくなったら最後だ。その力は暴走する。


守護霊の巨人が突如膝が折れ、動かなくなる。それと同時にラスティナが地面に蹲り、泣き叫んでいた。


「お母さま……お父様ぁ……! やめて……殺さないで……止めて……!」


それと同時にマリスの魔術が狙いを失ったように、星々が街に降り注ぐ。それをナハトは結界で受け切り……


『ウォーレン! 限界だ! 二人を頼む!』


展開を完了した騎士団が唸る。


「待ちわびたぞ、これ以上こいつらを押さえつけるのは無理がある。」


ウォーレンが自身の長剣を抜きかざす。


「貴様ら! すべてをかけて守り通すぞ! 魔人共を制圧せよ!」


それと同時にすべての騎士団が魔人の軍勢へと突進する。


ラスティナとマリスは騎士によって抱きかかえられ……


『ラスティナ、マリス、ご苦労だった。私の所に帰って来い』


「ナハト様……ナハト様……」


騎士に抱きかかえられながら虚ろな目で空を仰ぐ。


二人は東門見張り台に居たハナトの所に着くなり二人で抱き付き、泣きじゃくった。


「もう大丈夫だ、すまなかったな。優しい夢の中で休め……」


ナハトの暗示により二人は眠る。もう一度マシルの地下へ戻されるのだ。


(この二人も……残酷だ。使い終わったら道具のようにしまう。私にもっと力があれば……)


ナハトは眠った二人がマシルに地下へ馬車で運ばれるのを見ながらイリーナの顔が思い浮かぶ。


「あいつも道具のように……子供を奪われて騎士になって……魔人なんぞ可愛く思えてくるな……」


ナハトはそれ以上考えない。今ある危機を乗り越える、その後だ、その後にまたゼシルに我儘を聞いてもらおう、あの二人をなんとか解放する手を……

その時、ナハトの元へ魔術師が駆け寄る。


「ナハト様! ジュール大聖堂で……イリーナと姫様が……その……」


ナハトは振り向かずに……震える。


「なんだ、何があった。」


「魔人の……攻撃を受けたと思われます……その……」


報告した魔術師は震えるナハトを見てマズいと思う。血まみれで倒れていたイリーナのことなど報告すれば、このマシル最強の魔術師は騎士団ごと戦場を吹き飛ばすと。


「もういい、下がれ、報告はもう受けた」


「は?」


混乱する魔術師はそのまま下がり、ナハトは一人歯ぎしりする。


「あのバカ…っ……」







ウォーレン率いる騎士団は明らかに劣勢だった。いくら50万に減ったとはいえ、数の上で負けている上に魔人は強大な物ばかりだった。だからといって下がるわけには行かない、さがる場所などない。ウォーレンは魔人を倒し続ける。たとえ自分一人になっても戦い続けると誓っていた。


魔人を蹴散らし進む。


その先に、かつての戦友が立っていた。


オズマ、その手には長剣が握られている。そしてどこか虚ろな目。今にも消えてしまいそうな……


「オズマ……! 何があった! 」


ウォーレンはかつての戦友へ問う。だが返答はない。その代わりにオズマは長剣を構える。


「貴様……っ……貴様ほどの男が魔人の手管にかかるとは……」


オズマはウォーレンに向かって走る。長剣を振りかざし、切りかかる


「魔人よ……オズマを堕としおって……」


ウォーレンはオズマの剣をやすやすと剣で叩き折る。

そして心臓へ剣を突き刺した。かつての戦友の胸へ


「眠れ、英雄オズマ……」


そのままオズマは霧散する。


それに続くように、騎士団5000が消える。まるでオズマに付いて行くように




だが戦況は変わらない、魔人50万に押されるようにスコルアへ押される。


(このままでは……街へなだれ込まれたら……)


ナハトは歯ぎしりする。あんな大口叩いていたが、もうナハト自身も限界だった。街を覆いつくす巨大な結界が維持できない、このままでは終わる、スコルアの街が……すべてが無くなる。




その時だった、ラスティナの守護霊が目につく。ナハトは怪訝な顔をする


なぜあの守護霊はあのまま残っていると。ラスティナはもう眠っている。普通ならば霧散するはずだが……


その時、通信魔術が頭に響く


『これは何の冗談でしょうか、シンシア……』


思わず、ビクっと背筋が凍る。この声……私の本名を知る者……ヤツしかいない……


『西の辺境へと魔人の討伐に赴き……やっとの思いで殲滅して故郷に帰ってきてみたら……また魔人……何の冗談でしょうか、シンシア……2回も言ってしまいました、これは嫌がらせですか?』


ナハトはため息を吐きながら、ラスティナの守護霊を見る。すると主人が眠ったはずの守護霊が再び動き出す。轟音と共に。立ち上がり、魔人の群れの中で歩みだし、踏みつぶしながら蹂躙する


「おかえりなさいませ、リエナ様、あと私はナハトです、先代ナハト様」


『嫌ですよ、シンシアの方が可愛いじゃないですか』


それだけ言って通信は消える。そしてナハトは西の空を見る。


やっと帰ってきた……西へ赴いていたレインセル最強の騎士団。





西の空が消える。空を覆い隠すほどのドラゴンの群れ。


その先頭にその男は居た。ハルバートを担ぎ、ゆっくりと手を上げ


「やれ」


それだけ呟く、そして星の光とは別の光、約20万のドラゴンの咆哮

ナハトはそれを見て慌てる、あのバカ……と思いながら……


「ウォーレン! 下がれ! バカが来るぞ!」


前線に居る騎士団を引き上がらせろと指示する。それと同時に東の戦場へ降り注ぐドラゴンの咆哮。


スコルアへ迫っていた魔人の先頭集団が一瞬で焼き払われる。


そしてレインセル最強の騎士が大地へと降りる。





「シェバ……」




ウォーレンは一年ぶりに再会した騎士の名を呟いた

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