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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第3話 第10章『アハト』 ⑤

あと数章で第3話が終わります(*´ω`)

この物語も残り3話の予定となっています。

第4話~第6話も頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。

「アハトを助けるためにみんな、力を貸してほしいの。」


 地下の実験室に皆を集めるとソフィは4人の顔を順に見つめた。


「もちろんだよ!僕たちは何をすればいい?」


 真っ先にアインが頷き、他のメンバーも同意する。


「グレイさん、この装置を使うことはできる?」


「このポッドと装置のことならある程度なら先に調べておいたわい。」


「ありがとう!その・・・これを使ってなんとかならないかしら?」


 ソフィが取りだしたのは少量だが赤い液体が入った瓶だった。

 古く変質した血は、ツヴァイの力で元の形に戻っていた。


「これは・・・!?」


「アハトの血なの。これを使って・・・」


「なるほど、あのポッドの中身はやはりホムンクルスじゃったか。」


「ええ、これでアハトの身体を取り戻すことができる。」


 確かに、それさえあれば人間だった頃のアハトと同じ身体を作ることはできるはずだ。


「でも・・・仮に身体だけあってもアハトの記憶や心は・・・」


 ツヴァイの言葉に誰もがハッとしたようにしてからうつむいた。

 そうなのだ、仮に身体を取り戻したとしてもそこにアハトの意思はない。

 アハトの形をしたホムンクルスが出来るだけだ。

 それでは、アハトを救ったことにはならない。

 そうだった・・・アハトを取り戻すには、それだけじゃ足りない。

 

 ねえ、あんただったらこんな時どうするの?


 問いかけるようにソフィが賢者の石の欠片をぎゅっと握ると。


「そ、それじゃソフィ!」


「え?」


「その欠片は短期間ではあったがあやつが肌身離さず持っていた物。

 だとすればその中にやつの記憶があるかも知れん!」


「なるほど・・・それが賢者の石だとしたらそれはありえるかもしれない。」


「じゃが、この欠片はあまりにも小さい。

 ホムンクルスの錬成時に消えてしまう可能性もあるかも知れん・・・」


 それほどまでに、その欠片は小さかった。

 アインやツヴァイの身体に埋め込まれている賢者の石がどれほどの大きさなのかは、実際にはわからない。

 しかし、それに遠く及ばないほどの力しかその欠片にはないのだろう。


「それなら、僕がその賢者の石に力を分けるよ!!」


「そんなことができるものなの?」


 アインの提案にソフィが不安そうに尋ねると、アインはにこっと笑ってこう言った。


「やったことはないけど、やってみせるよ。今度こそ僕は家族を助けるんだ!」


「兄さん・・・そうだね。それなら僕も力を貸すよ。」


「ツヴァイ、待って。あなたそれ以上力を使ったりしたら・・・!」


 先ほどの血液の錬成の際に、ツヴァイはかなりの力を消耗しているはずだ。

 だとすれば、今それ以上の力を使うのは危険なのではないか。

 ソフィの心配を見抜いたのだろう。


「大丈夫、フィーアが傍にいてくれるなら、僕はいくらでも頑張れるんだから。」


 ツヴァイは隣に寄り添っているフィーアをぎゅっと抱きしめて、微笑んでみせた。


「ふむ・・・しかし、このホムンクルスはだいぶ長い間ここに放置されておったようじゃ。

 肉体の組織が劣化している可能性がある。

 そうなると新たに身体を作り直すだけの何かが必要なのじゃが・・・」


 そればかりは、賢者の石だけでどうこうなるものではないようだ。

 グレイが悩んでいるのを見て、フィーアがそうちゃんの中から何かの瓶を取り出す。


「おじいちゃん。これは使えないかな?」


 それは、アハトが作ったアクアウィターエだった。

 先ほどグレネードにかけていたものの残りらしい。


「そ、そうか!

 真のアクアウィターエには及ばずとも、生命の水の力に似たものであれば確かに何とかなるやもしれん。」


 フィーアからそれを受け取ると、グレイはよしよしとフィーアの頭を撫でてやる。


「えらいぞ、嬢ちゃん。」


 嬉しそうに目を細めるフィーアはさっきまでの泣き顔ではなく笑顔だった。

 ようやく、皆の心に希望がともされる。


「それじゃあ、はじめるぞい!」


「ええ、おねがいします!」


 グレイはアハトの血と賢者の石の欠片、そして蘇生薬を順に装置にセットしてスイッチを入れる。

 ポッドにつながるように描かれている紋章陣の中心にはアインとツヴァイが立ち、術者の立つべき紋章陣では、フィーアが2人の力を届けるためにその術式を組み直していた。


「フィーア、紋章術のことがわかるのかい?」


 先ほどの実験施設での戦闘の時もそうだったが、フィーアは紋章術の組み直しという離れ業に思えることをすらすらとやっている。

 よほど紋章陣に関して知識がなければ、そんなことは不可能なはずなのに。

 尋ねたツヴァイに答えたのはフィーアではなくドライだった。


「・・・あんたは知らないかもしれないけど、記憶を失う前のフィーアは紋章術が使えたのよ。」


「僕は・・・それは知らなかった。」


「そりゃあそうでしょう。だってあの子が紋章術を使ったのは・・・」


 そこまで言ってから、ドライはしまったというように口を閉ざした。


「ドライ、何を隠しているんだ?」


「別に、あんたには関係ないでしょう?」


 これ以上話すことはないというように、ドライはツヴァイに背を向けた。

 それと同時にフィーアの紋章術も完成したらしい。

 アインとツヴァイの身体を淡い光が包んだかと思うと、それは紋章陣に広がりホムンクルスの入ったポッドの方へとつながる。


「グレイさん、いつでも準備OKです!」


「よし、これでいけるはずじゃ・・・!!」


 複雑な装置をいとも簡単に操りながらグレイがアインの言葉に頷く。

 これで、アハトを取り戻すことが出来るはずだ。

 紋章陣の上に立つアインとツヴァイからポッドに賢者の石の力が送り込まれる。

 

 しかし・・・


「な、なぜじゃ・・・!?なぜ反応しない!」


 グレイが困惑したように装置を見た。


「え・・・?どういうことなの?」


「ホムンクルスの形成自体はうまくいっているはずじゃ、なのに生体反応が・・・」


 その言葉は、ホムンクルスの錬成の失敗を現していた。

 もし仮にこの儀式が成功しているならば、ポッドが開いてホムンクルスが自ら出てくるはず。

 だが、そのような気配はまるでない。


「そ、そんな・・・」


 ソフィは茫然とポッドを見つめ、ふらふらとしながらその前まで歩いて行く。


「ソフィ・・・う・・・っ!」


「ツヴァイ!」


 装置が発動している間、アインとツヴァイはずっと力を送り続けている状況にある。

 負担が限界を超えたのかツヴァイが片膝をついた。


「だめじゃ、これ以上続けると小僧の身体が持たん!」


「だ、大丈夫、僕はまだ・・・」


「あう・・・!ツヴァイ!」


 紋章陣をコントロールするために動けないフィーアは、ツヴァイに駆け寄れずにおろおろとその様子を見ていることしかできない。


「く・・・っ!どうしたらいいんだ!」


 ツヴァイを支えながらアインが悔しそうに言った。


「アハト・・・」


 そんな中、ソフィがポッドに触れながらその名前を呼ぶ。


「なんで、よ・・・」


 皆が力を貸してくれていると言うのに、自分はアハトを失ったままでいることしかできないのか。

 ポッドの中の様子は見えないまま、そこにいるであろう彼は何の反応も示さない。


「ここまで来て結局、私は何もできないの・・・?」


 必死に思い出したアハトの最期の言葉。

 あの暗い穴の中に引きずり込まれていく最中、彼は言ってくれたのだ。


 『信じているからな』と。


「あんたがそう言ったから、私ここまでがんばったのよ?」


 思わずポッドを叩くように拳をぶつける。


「それを思い出せたから、皆に力を貸してもらってあんたを取り戻そうと思ったのに。」


 何度も何度も、いつかアハト自身にそうしたようにポッドをぽかぽかと殴った。


「ここまで来て、あんたが応えてくれなくてどうするのよ!

 あんたが信じるっていうから私はここまでやったの、だったらあなたも・・・」


 途中から涙があふれてきて、視界がかすんでしまってもソフィはそれをやめない。


「あなたも私に、信じさせてよ!?」


 泣きながらソフィが膝をついてうつむいた時だった。

 ポッドが急にまばゆい光を放つ。

 それは一瞬のことだったが全員の視界を奪う、まるでスタングレネードのような光。


「なんじゃ・・・!?この光は!」


 眩しさのあまり腕で視界を遮りながらグレイが叫ぶと、今まで沈黙していた装置が動き出す。


「これは・・・!?」


「まさか、アハト・・・!?」


 アインとツヴァイも眩しさに目を細めながらも、驚いた様子でそれを見守っている。


 そして・・・


 ピーっという機械的な音と共にポッドが開き、中に入っていた液体が下に流れ出した。

 その頃にはようやく眩い閃光が収まり、皆の視界が取り戻される。




 ポッドから出てきた人影の最初の言葉はこれだった。


「ふう・・・グレネードの力により、俺、爆誕。」


 いつも通りよくわからないことを言いながらポッドから出てきたのは、紛れもなく人の姿をしたアハト。


「アハト!」


「よかった、成功したんじゃな・・・!」


「よかった・・・おかえり、アハト。」


 メンバーが口々にアハトの帰りを喜んでいる中、ソフィはうつむいてふるふると震えていた。


「どうした、寒いのかソフィ。」


 アハトの言葉を聞くや否や、ソフィは急に立ち上がってアハトの両腕をつかむと自分の方に引き寄せる。

 その顔は泣き顔だった。


「ばか・・・」


「ん?」


「ばかばかばかばかばか・・・っ!!」


 ぽかぽかと胸元を殴るソフィの髪を撫でると、アハトはにやりと笑いながらこう言った。


「おお、痛い痛い。ナイフで刺された時の10倍は痛いな。」


 それを聞いたソフィは涙を袖で拭うと思いっきり息を吸い込んで。


「そんなわけないでしょ、ばかーっ!!」


 いつものように突っ込みを入れたのだった。


アハト復活!アハト復活!アハト復活!


『グレネード投げてぇ・・・!』


(; ・`д・´)

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