ホムンクルスの箱庭 第3話 第9章『ヌル』 ①
やっと新章に入りました~(*´ω`)
新キャラクター登場です(*ノωノ)
実験に使われたはずの子供たちが奇跡のように意識を取り戻し、アインたちと喜びを分かち合っている。
そんな光景をどこか遠いもののように眺めてしまっていたソフィは、いつのまにか膝をついているアハトに気付いて駆け寄った。
「アハト、大丈夫なの!?」
「ああ、問題ない。」
あちこちがボロボロになってはいるが、アハトは口元にいつも通り何を考えているかわからない笑みを浮かべている。
それを見てほっとすると同時に、なぜか怒りが込み上げてきた。
「いつもいつも、こんな無茶ばっかりやらかして。
またあの時みたいになったらどうするつもりだったのよ!?」
「また・・・か?俺は以前もおまえの前で、こういうことをしたって言いたいのか。」
ソフィはアハトの腕をつかむと、自分の方に引き寄せる。
「前も同じことしたじゃない!?」
「おいおい、どうしたんだおまえ。いつのことを言ってるんだ?」
言われてみれば、それはいったいいつのことだと言うのだろう。
確かにアハトは普段から無茶をしがちだが、自分が思っているのはそういうのとは違う。
もっともっと根本的に、命にかかわるような・・・そんな無茶をされた気がして怒ってしまっていたのだが。
「あれ?前にも・・・こういうことがあった・・・?」
茫然としながらソフィが見つめ、アハトが困ったような笑みを浮かべた時だった。
カツーン、カツーンと廊下の方から響くような足音が聞こえてきた。
その音にびくっと震えると、フィーアはツヴァイの後ろに隠れる。
「フィーア・・・?」
その様子を見て何かを感じたのか、アインがこう叫んだ。
「フィーア、そうちゃんの中に子供たちをしまうんだ!」
「う、うん・・・!」
びくびくと震えながらもフィーアがそうちゃんを前に出すと、光が子供たちを包み込みその姿が消える。
「どうやら、来てしまったようだな。」
「え・・・?」
立ちあがったアハトは、不思議そうにするソフィを庇うように一歩前に出た。
「ねえ、アイン、誰が入ってきても絶対にいきなり攻撃したりしちゃだめよ?」
「ドライ・・・?」
真剣な面持ちで言われてアインが戸惑っていると、近づいてきた足音が扉の前で一度止まった。
そして・・・
ギギ・・・
思っていたよりも重い音を立てて試験場の扉が開く。
どんな化け物が来るのかと戦々恐々としていたメンバーは、入ってきたモノの姿を見てあっけに取られてしまった。
「へ・・・?」
最初にそんな声をあげたのは誰だっただろう?
入口に、一人の青年が立っていた。
獣人族と思われる白い狼の耳としっぽ、白銀色の髪。
少し線が細くも思えるその立ち姿は、誰もが見たことのあるものだった。
「な・・・!?」
アインですらその姿を見て思わず絶句してしまう。
「ああ、これでようやく全員そろった。」
にこっと笑ったその人物の姿を見て、フィーアが震える手でツヴァイの服の袖をぎゅっと握る。
その顔は蒼白で身体はガタガタと震えていた。
「こわい・・・こわいよ・・・」
小さな声で呟きながらフィーアはツヴァイの腕にしがみつく。
そして、アインは茫然とフィーアの隣にいる人物と入口にいる人物を見比べながら、ようやくその言葉を口にした。
「ツヴァイ・・・?」
その呟きの通りだった。
ツヴァイによく似た何かが、そこには立っていたのだ。
「銀牙・・・いや、今はアインと呼ばれているんだったか?
ひどいな、俺をツヴァイと呼ぶなんて。
あんなに昔は仲良くした仲じゃないか、それを忘れてしまうなんて・・・」
特に残念そうには見えない笑みを浮かべながら、その人物はこう続ける。
「兄としてとても悲しいな。」
「く・・・あ、頭が・・・」
急に頭が鈍く痛んで、アインはめまいを覚える。
「せっかくこうやって兄弟で再会できたんだ、思い出してくれないと。
あと・・・ドライにフィーアもそろっているみたいだな。
それ以降は失敗作ばかりだけど、おまえたちまでは俺の兄弟だと思ってるんだ。
会えてとてもうれしいぞ。」
「本当に、おにいちゃん・・・?なにか、違う・・・」
その言葉に、ドライが今にも泣きそうな、それでいて何かを疑うような複雑な表情を浮かべながらそう呟いた。
ツヴァイと唯一違う赤い瞳をどこか楽しげに細めながら、彼はフィーアの方を見つめた。
「特にフィーア、そんなに怯えないでくれ。昔仲良くした仲じゃないか。」
「やだやだ・・・こっちに来ないでっ!!」
「それ以上近づくな!おまえをフィーアに触れさせたりはしない・・・っ!!」
怯えるフィーアを庇うように前に出たツヴァイが鋭い口調でそう言った。
「ああ、そういえばいたなツヴァイ、俺の劣化コピー。」
その言葉に対して厳しい表情を浮かべたアインが、その人物とツヴァイの間に入る。
「アイン、どういうつもりだ?」
「ツヴァイはコピーなんかじゃない!」
「コピーさ。なんせそいつは俺のクローンとして、試験管で造られた『ホムンクルス』なんだからな。
能力としては違うものを得たみたいだが、姿形は俺のコピー品にすぎない。
だからおまえが兄弟としてそいつの傍にいるのは違うんじゃないのかアイン?
やっぱり家族は一つじゃないといけない。そうは思わないか?」
「・・・ちがう!」
「違わないさ。」
「ツヴァイは僕の弟だ!」
「わかった、わかったよアイン。」
聞き分けの悪い弟をたしなめる兄のような態度で、彼はにっこりと笑ってこう言った。
「おまえがこれから先もそのコピー品と一緒にいたいって言うんなら、俺はそれを叶えてやれる。
俺はお前に教えてやっただろう?家族はいつも一緒にいなきゃいけないって。
だから、俺の元に来い。俺はいつだって家族にとって一番いいと思える方法を見つけてきた。
アイン、おまえとおまえの大切なものは俺が守ってやる。」
「そ、その言葉は・・・!?」
どこかで聞いたことがあるような懐かしい言葉に、アインの頭の中で記憶がフラッシュバックする。
「この、写真は・・・!?」
懐から取り出した写真のツヴァイと目の前の人物はとてもよく似ているが、ようやくその違和感に気付いた。
自分が子供なのに対し、写真のその姿は今のツヴァイと変わらない大きさをしている。
『アイン・・・家族っていうのはいつでも一緒にいなきゃいけない。
俺がお前を守ってやる。どんな時でもだ。
だからおまえも家族にとって一番いいと思える方法を見つけたならそれを迷わずにやれ。』
そうだ・・・その言葉を僕に教えたのは・・・っ!
アインが頭を抱えて膝をつくと、その人物は今度は再びフィーアに向かって話しかける。
「なあ、フィーアもそう思うだろう?」
「思わないもん・・・っ!」
「やれやれ、相変わらず素直じゃないな。
あの時、おまえが逃げたりしなければ俺たちは一つになれていたっていうのに。」
「いやっ!来ないで、来ないで・・・っ!!」
「ちょっと、さっきから黙って聞いてれば・・・っ!
フィーアのことをいじめていいのは私だけなんだからね!?
それに私なんて生まれたときからフィーアと一つみたいなもんなんだから!
双子なんだからね!お姉さんなんだからね!!どう?恐れ入ったでしょう!」
ドライがドーンとした態度でそう言い放ったのだが、相手はそれを完全にスルーしている。
フィーアを落ち着かせるように抱きしめたまま、ツヴァイが静かな口調で語りかけた。
「ヌル、おまえの言っていることは間違っている。
おまえの言う一つになるっていうのは、相手を喰らって自分の中に取り込むことを指しているんだろう?
おまえの中に入るって意味では一つになるかもしれないが、それは家族として一つになるってことじゃない。」
ツヴァイはひそかに焦っていた。
自分が相手のクローンだったことにではない。
相手が予想通りの相手だったことに対してだ。
本当はもう少し情報を集めてから戦いたいたかったのだが。
「ほう?おまえは俺と初めて会うにも拘らず、俺が『ヌル』だとわかっていたのか。」
それに対し、相手は片眉を上げて楽しそうに笑う。
「意図的に情報が入ってきていたのと、大切な人が教えてくれたからね。
もう一度言うが、家族っていうのはお互いを認めて共に支え合って行くものだ。
互いを信じ、感じあえてこそ家族なんだ。
おまえの言っているそれは違う!そんなやつをフィーアに触れさせたりはしない。
もちろん他の家族たちもだ!!」
そして、フィーアに優しく微笑みかけると。
「フィーア、ここで待っていて?」
アインの横にツヴァイも並んで立った。
次回は月曜日更新で時刻は20時の予定となります(`・ω・´)
よろしくお願いします( *´艸`)




