ホムンクルスの箱庭 第3話 第8章『歪んだ愛情』 ③
遅くなりました~(*´ω`)
今日も何とか更新できました♪
「あら、驚いたわね。」
「母さん・・・」
無傷のアインを見て、母親はくすっと笑った。
「褒めているのよ?この至近距離からの弾を叩き落すなんて、普通ならできないもの。」
銃が放たれた瞬間、アインは刀を一閃させて弾の軌道を変えていた。
「銃弾はゼクスの時に散々痛い目に遭わされているからね。」
「なるほど、戦闘の中で学んだということね。
まあ、学んだところで普通は無理でしょうけど・・・それも賢者の石に関係しているのかしら。興味深いわ。」
アインを撃ったことに関してまるで罪悪感を感じていないのか、母親は穏やかにそう告げる。
「犬!!」
そこにヒュドラを潜り抜けたドライが飛び込んできた。
「ドライ!」
「あんたたち!犬に何かするならあたしが相手になるわ!!」
勇ましく前に立とうとしたドライを、アインは手で制する。
「ごめん、ドライ・・・これは、僕が戦うべき相手なんだ。」
「そんなこと言ってる場合なの?さっさと何とかしないと、子供たちが死ぬんだけど!?」
背後で大暴れしているヒュドラはそのエネルギー源を子供たちから得ている。
遅かれ早かれ、子供たちの生体エネルギーは吸い尽くされてしまうだろう。
「わかってる・・・でも、僕は子供たちだけでなく、父さんと母さんも救いたい!!」
「正義の味方として?それが正しい選択だとは私には思えないけれど。
時には守るべきものを選ばなきゃいけない。
そういうのって、正義の味方がいつかは必ず迫られるもので、今がその時だと思うけど。」
厳しい瞳でドライがアインを見つめる。
彼女の言う通り、今の状況で全てを選ぼうとする自分の選択は愚か極まりない行為だろう。
だが・・・
「僕の目指す正義の味方は、必ず家族を助けなければならない。
そして、選択肢の中に家族しかいないのなら、僕はその全てを助けるべきだ。」
「それによって犠牲が出てからじゃ遅いのよ!?」
「犠牲は出させない。僕は・・・僕の正義は今ここで皆を助けるためにある。
それが出来なきゃ、正義の味方なんて名乗れないんだ!!」
2人が一歩も譲らずに対立する様子を見て、母親がため息をついた。
「正義の味方?アイン・・・あなた、まだそんな子供染みた夢を抱いていたの?」
「・・・子供染みた夢なんかじゃないよ、母さん。これは僕が大切な人と交わした約束だ。」
そうだ・・・遠い昔、あの人と交わした約束。
『おまえが正義の味方になる日を、俺は信じているぞ。』
こちらに向かって手を差し出す誰かの影が脳裏をよぎった。
「う・・・」
また一瞬、頭痛に見舞われる。
「犬、ちょっと、大丈夫なの!?」
頭を押さえてふらついたアインをドライは慌てて支えようとする。
「だ、大丈夫だ・・・心配しないでドライ。」
「あら、そんな約束は知らなかったけれど、なるほど・・・あなたもすべてを忘れたわけではないのね?」
「母さん・・・?知っているの、僕が何を忘れているのか・・・」
まるで何かを知っているようなその語り口にアインは思わず尋ねる。
「さあ、何を忘れていると言うか、むしろ何を覚えていられていると言うか。
ねえ、あなたらなら分かるわよね、ドライ?」
「・・・知らないわ。」
母親の問いかけにドライはキッと睨み返すことで答えた。
「いろんなことを記憶喪失で片づけられて、私たちも困っているんだよ?
君たちは大切大切と言いながら簡単に家族のことを忘れてしまうんだねぇ。」
にこっと笑った父親の言葉に、母親は自信に満ちた笑みを浮かべる。
「あのお方の力ですもの。当然だわ。」
「あのお方・・・母さんの言うそいつが、僕の・・・いや、僕たちの記憶を奪った?」
アインは思わずぎりっと奥歯をかみしめる。
自分から大切な人の記憶を奪った人物が、もうすぐここに来る。
その前に2人を説得して、そいつを倒さなければなるまい。
「無駄なことはおやめなさいアイン。
覚えているべきことも忘れたあなたたちに、ここから先はないわ。
あのお方の糧になることで終止符を打つのが、美しい終わりというものよ?」
「・・・さっきから聞いてれば、あのお方あのお方って!!」
唇を噛んで俯いていたドライが顔を上げ、2人に向かって手をかざした。
「そいつが何なのかは知らないけれど、私たちの未来はそんな奴に奪われたりしないわよ!!」
叫ぶと同時に、何もない空間からフェンリルが現れる。
「フェンリル!あの女からやりなさい!!」
飛び道具を持つ母親から始末するのが妥当だと判断したドライは、冷徹に命令を下す。
氷の狼はその言葉通りに跳びかかったが、その前に父親が立ちはだかった。
「やれやれ、ドライ、君ももう少し聞き分けがよくなったほうがいい。」
「な・・・っ!?」
フェンリルの牙はその腕に食い込んでいるはずだった。
それなのに、彼は何事もないかのようにその場に立っている。
相手を凍り付かせ、かみ砕くはずの牙が全く通っていない。
「君のペットでは、私には傷一つつけられないよ。」
その後ろから、母親が銃を放った。
ギャンっと悲鳴が上がり、フェンリルに数発の弾が撃ち込まれる。
「せっかくの魔獣が形無しね、ドライ。
それと・・・あのお方が誰なのか、あなた本当にわからないの?」
「え・・・!?」
思い当たる人物でもいるのだろうか?びくっとあからさまにドライの身体が震えた。
「うそ・・・そんなわけ、ないじゃない!?」
ドライの反応に満足そうに頷いて、母親はこう続ける。
「そう、その想像であっているわ。
だとしたら・・・これがどれだけ愚かなことかわかるでしょう。」
「ドライ・・・?」
小さく震えるドライの肩にアインが触れると、彼女はそれを振り払ってこう言った。
「あんた・・・これから来る相手と絶対に戦っちゃだめよ?」
「どうしてだい?そいつは僕やフィーアの記憶を奪った張本人なんだろう?」
「どうしてもよ!!後悔したくないなら、あんたは絶対に戦っちゃダメ・・・!?」
皆まで言い終わる前に、弱ったフェンリルが振りほどかれて床に倒れた。
それは紋章陣に吸い込まれるように消えていく。
「さて、おしゃべりの時間は終わりだよ。」
「そうね、余計な時間をかけて、あのお方の手を煩わせたくはないわ。」
アインは両親とドライを見比べてどうするべきかを考えた。
どういうわけか、ドライは戦意を喪失してその場に立ち尽くしている。
今の彼女を放っておきたくはないが、戦いを放棄することもできない。
覚悟を決めた強い意志を宿した瞳で、アインはそんなドライを守るように前に立った。
「ドライ・・・君が何を知っていて悩んでいるのか、僕にはわからない。
でも、まだ認めてもらえていないのかもしれないけれど、君も僕にとっては家族だ。
だから、僕は君を守るし、これから来る相手が僕の家族を傷つける相手なら戦わなければならない。」
「アイン・・・」
「君はそこで見ていて、僕の正義の在り方を!僕はすべてを守り抜いてみせる!!」
その決意に応えるように、アインの刀が淡く金色の光を纏った。
申し訳ありませんが、明日の更新も20時となります(´-ω-`)
よろしくお願いします(*ノωノ)




