ホムンクルスの箱庭 第3話 第4章『精神干渉』 ①
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今日はアインの過去に関わるお話となります( *´艸`)
「そういうわけで、ドライと一緒にちょっと頑張ってみることにしたんだ。」
約束通りに紋章術の準備をしてくれていたグレイとアハトにそう伝えると、2人はすぐに頷いてくれた。
「なるほどのう。」
「いいんじゃないか?」
他のメンバーもどこかに出かけているらしく、その場には彼らしかいない。
「その代わりと言っちゃなんだけど、これってうまく使えないかな?」
道具袋をごそごそと漁ってアインが取り出したのは、フェンフについていたパイプだ。
なんとなく捨てるのが惜しくて持ってきてしまったのだが、もしかすると何かに使えるかもしれない。
「これか・・・」
「ふむ、少し調べてみないとわからんが、確かに興味深いのう。」
アハトもグレイも興味津々に手に取ったりひっくり返したりしながら調べ始める。
錬金術師としてやはりこういった装置は気になるものらしい。
2人ならきっと、役立ててくれるだろう。
「それじゃあ、僕はドライと2人で部屋にしばらくこもるね。」
ドライは先に1階にある部屋の一室で待っているはずだ。
どうやるのかはわからないが、彼女との実践は部屋の中で十分らしい。
「そうか・・・色を知る年になったかアイン。」
「おぬしは何を言っておるんじゃ!?」
アハトが納得したように頷くとグレイがすかさず突っ込みを入れた。
「何を年甲斐もなく恥ずかしがっているんだじいさん。アインも年頃なんだからそれくらいは・・・」
「年は関係ないわい!というか修行をするんじゃろうが、下世話なことを言うでない!」
「といっても、なあ、アイン?」
意味ありげに口元に笑みを浮かべてアハトが尋ねると、アインは首をかしげる。
「え~と、色を知るって?賢者の石に色があるのかい?」
何を言いたいのか今ひとつわからないので尋ねると、アハトがガーンっと衝撃を受けたようにのけぞった。
「あ、アイン・・・おまえ・・・」
「え、どうしたの?」
「なんてかわいそうな奴なんだ・・・ほろり。」
「こら!変な同情をするでない、そういうのは人それぞれじゃろうが!」
「だが、アインも年頃なんだぞ?不憫というかなんというか。」
「そういうのは周りが口出しするもんでもないじゃろうが。」
「いや、これは由々しき事態だ。身近な大人として見逃すわけには・・・」
「やめんかい!」
なにやらアハトとグレイが楽しそうに会話を始めてしまった。
加わりたいところなのだがドライをこれ以上待たせるわけにはいかないので、アインはその場を去ることにした。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
部屋に行くと、彼女は窓を開けて外を眺めているところだった。
「別に。それにしてもこの部屋、埃っぽいわね。」
「ずっと掃除もしてないみたいだからね。」
椅子もベッドも分厚い埃が積もっているので、後で掃除をしなければならないかもしれない。
「ま、いいわ。それじゃあ始めましょう。」
「僕はどうすればいい?」
「こっちに来て。」
窓際にいるドライの元へ近づくと、彼女はスッと右手を差し出してきた。
反射的にその手を握り返す。
「言っておくけれど、手加減なんてしてあげないから。」
「もちろんだよ。」
「言ったわね?覚悟しておきなさい。」
にやり、とわざと意地悪そうな笑みを浮かべたドライの表情を最後に、アインの意識がブラックアウトした。
「ここは・・・?」
いつかと同じ暗闇、自分の心の中にアインはいた。
「ドライ?」
声をかけるが返事はない。
どうやら手加減なし、というのは本気らしい。
「ありがとう、ドライ。」
そう呟いてアインは暗闇に向かい合った。
ここでどうすればいいのか、それはまだわからない。
けれど、以前、賢者の石を使えるようになった時も確かに自分はこの場所にいた。
そういえば、あの時は確か声が聞こえたんだよね。
耳を澄ましてみる。
耳が痛くなるほどの静寂・・・何も聞こえない。
そう思った時だった。
『・・・まだ起きていたのか?
仕方がないな。絵本でも読んでやるから、そしたらちゃんと寝るんだぞ?』
「え・・・!?」
誰かの声が聞こえた。
それは以前のような女性の声ではなく、男性・・・いや、どちらかというと大人びた少年の声。
『そうか、おまえは絵本に出てくるような正義の味方になりたいんだな。
簡単なことじゃないぞ?それにはそう、まずは身近な人間。家族を守れるようにならなきゃいけない。』
「う・・・」
声が聞こえると同時に激しい頭痛に見舞われた。
なんだろう・・・僕は、この声を知っている。
思い出せない、なのに心がそう言っていた。
『・・・さあ、もう眠るんだ・・・俺はこれから・・・』
だんだんと声が遠ざかってく。
「待ってくれ・・・!」
どこにいるともわからない相手にそう叫んでいた。
伸ばした手がむなしく空を切り、暗闇の中にぽつんと存在している自分のことがとてもちっぽけに思える。
大海原に放り出されたような心細さを感じていると、背後に気配を感じた。
反射的にアインはそちらを振り返る。
「・・・なっ!?」
そこには、獣人が立っていた。
銀の毛並みに金色の瞳の・・・小さな、子供の獣人。
見間違えでなければ、それは間違いなく幼い頃の自分自身。
警戒したままアインが話しかけようとするよりも早く、相手が口を開いた。
『正義の味方になるなんて無理に決まってるじゃないか。』
幼い声で、確かに相手はそう言った。
思わず言い返そうとしたのだが、どういうわけか喉が凍りついたかのように声が出ない。
『僕は強くなんてないんだ。誰かを助けるなんてできない。
だって、僕の一番大切だった人はもういない。ねえ・・・君だってわかっているだろう?』
この子供は何を言っているのだろう?
僕の一番大切だった人はもういない?
『忘れちゃったの?』
忘れている・・・僕が?
相手が子供ということは、思い出すべきは自分が幼い頃のことなのだろう。
ゆっくりと瞳を閉じて思い出してみる。
すると・・・
『ねえ、ほんとに覚えてないの?』
目の前に、今度は幼い少女がいた。
ツインテールに結ったルビー色の髪、少しだけきつい眼差しの紅い瞳。
「ドライ?」
気が付くとそこは、暗闇ではなく孤児院だった。
見覚えのある大部屋にはたくさんの子供たちが集まって思い思いに遊んでいる。
『あいつによく似たあの人のこと、ほんとに覚えていないの?』
ドライが指をさしているのは、向こうでフィーアと絵本を読んでいる弟のことのようだ。
「え?ツヴァイによく似た人?」
『・・・どうして?なんでよ。』
見る間に涙ぐんで、幼い彼女は泣き出してしまった。
おろおろとして泣き止ませようとしたが、また声が出ない。
『あんなに一緒にいたのに、どうしてあんたまで忘れることなんてできるの?信じられない・・・。』
泣きながら彼女は怒っていた。
どうしようもない虚しさと喪失感が、心の中に押し寄せる。
手を伸ばして触れようとすると、目の前の彼女が消えて再び辺りが暗闇に呑まれた。
「ドライ・・・!?」
呼びかけても返事はない。
それもそうだ、今のはきっと自分の記憶の一部でしかなくて、本当にドライと会話をしていたわけではないのだから。
ああ、でも・・・今まで気づかなかった、いや、気づかないふりをしていた空っぽの部分が浮き彫りにされた気がする。
遠い昔、僕は大切な人を失った。
必死に思い出そうとしてみる。
かつて絵本を読み聞かせてくれた人物がいったい誰だったのかを。
・・・だめだ。どうしても思い出せない。
孤児院にいた頃の記憶に、そんな人物はいなかった。
身体の弱い弟と、忙しく働いている育ての両親、泣き虫なフィーアと、いつもそれをいじめていたドライ、少し離れたところからいつも自分たちを見ていたソフィと今とあまり変わらないアハト。
いつの間にかいなくなってしまった自分たちと同年代の他の子供たちの中にも、思い当たる人物はいない。
それなのに、心が壊れそうなくらいに痛かった。
次回も精神世界での物語が続きます。
今日の夕方辺りに出来れば第1話 第1章の文体を直そうと思っています(`・ω・´)




