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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第1話 第2章『ナンバーズ』 ①

GMの名言

『は○れんのパクリだと・・・!?何を言っているんだ!

 あの物語に出てくるキャラクターたちはこんな酷くな・・・げふんげふん。』


※6月3日に文章の整理をしました。


『ツヴァイ』として生まれたときから、自分は人とは違う視点でものを見ていた。

 与えられたのは人として遥かに超えた力と代償。

 それに気付いた時、絶対に隠し通さなければならないと思った。

 そして、この力は大切な者のためにだけ使うのだと。


【ホムンクルスの箱庭 第1話 第2章『ナンバーズ』 ①】


「ツヴァイ、大丈夫?」


「え・・・?ああ、大丈夫だよ。心配かけちゃってごめんね。」


ツヴァイが物思いにふけっていると、フィーアが心配そうに顔を覗き込んでいた。


「ううん。何か考えてた?」


「そうだね、僕はいつだってフィーアのことを考えてるよ。」


「あう。」


 それだけのやり取りで、フィーアは真っ赤になってしまう。

 そんな姿を見るだけで、ツヴァイにはどうしようもなく彼女が愛しく思えた。


「はいはい。いちゃつくのはいいけど、目的地までは遠いんだから、しっかり休んでおきなさいよツヴァイ。」


「ありがとうソフィ、そうさせてもらうよ。」


 ソフィに言われると、ツヴァイはおとなしく横になって眠り始める。

 その隣にちょこんと座ったフィーアは、ぬいぐるみで遊び始めた。

 ちなみにアハトは我関せずといった感じで、すでに昼寝を決め込んでいるようだ。


 そんな時だった、馬車の中に一羽の鳩が迷いこんでくる。

 いや、正確には迷いこんできたわけではない。

 それはソフィがもう一つの派閥と連絡を取るための手段だった。

 錬金術を施した伝書鳩は、目的の人物のところに違わずたどりつく。

 おそらく、この鳩もそんな技術を施された1羽なのだろう。


 ・・・かわいそうだけど処分するしかないわね。


 こっそりと鳩の足から手紙だけ外したソフィが、冷たい目で鳩を見ていることに気付いてしまったのだろう。


「・・・その子、どうするの?」


 いつの間にかフィーアが、不安そうにこちらを見ていた。


「え?あ・・・」


「ダメ・・・そうちゃんのおなかにしまうの。」


 フィーアは不意に手を伸ばして鳩を捕まえると、ぬいぐるみのチャックを開けて中に入れてしまった。


「へ・・・!?ちょ、ちょっと、どうなってるの!」


 昨日の資料といい鳩といい、どういった原理でぬいぐるみの中に入っているのだろう?

 ソフィが思わずぬいぐるみの中を覗こうとすると。


「そうちゃんはツヴァイがくれた大切な子だから、いじめちゃだめ。」


 フィーアは慌てて自分の後ろにぬいぐるみを隠す。

 どうやら警戒されてしまったらしい。


「ごめんね、いじめるつもりはなかったんだけど・・・」


 『そうちゃん』と呼んでいるそのぬいぐるみを、フィーアが大切にしていることは知っているので、ソフィとしても無理やりに奪ってまで調べるつもりはないのだが、鳩が入るほどの空間があの小さなぬいぐるみにあるとは思えず、やはり気になってしまう。


 その後もフィーアは警戒を解いてはくれず、結局ぬいぐるみの謎は解けないまま、これからのことを確認する意味もかねて野宿をすることになった。




 馬車を止めると、アインも後ろの荷台に移って全員で作戦会議が開かれる。


「さて・・・それじゃあまずは、出る時に持ってきた資料にでも目を通しますか。」


 ソフィが言うと、フィーアがぬいぐるみの中から金庫にあった資料を取り出す。


 それから・・・


「ああ、そういえば僕も、何か不思議なものを見つけたんだった。」


 続いてアインが、施設長室で見つけた古びた紙きれを置いた。


「・・・何これ、読めないわね。」


 フィーアが持ってきた資料、それを見たソフィの第一声がそれだった。

 資料には大量の文字が書いてあるのだが、それは普通の文字とは違い読むことが出来ない。


「これは・・・どうやら、錬金術師たちの特有の文字で書かれてるみたいだね。」


 ツヴァイはそれを一目見ただけでわかったらしくそう教えてくれる。

 そんな中、資料の一枚に目を通していたアインが声を上げた。


「ま、まさか・・・」


「どうしたの?」


 ソフィが声をかけると、アインがふるふると震えながら感動したように言った。


「どうやら僕には、こんなに兄弟がいるらしい!!」


 それに書かれていたのは、NO.0~9までの実験体の報告書だった。

 もちろん驚くべきところはそんなところではないのだが、アインにとってはそれが一番の驚愕だったらしい。


「・・・兄弟っていっても、血はつながってないと思うわよ。」


 はあっとため息をつくと、ソフィはそれを手にとって内容を眺めた。

 こちらは普通の文字で書かれており、ソフィにも読むことが出来る。


「・・・これは、あなたたちナンバーズの実験報告についてみたいね。」


 それには、特殊な実験体であるナンバーズについてのことが記載されていた。

 資料によれば、ナンバーズはそれぞれ実験の方向性が分かれている。


 アインが身体能力、ツヴァイが思考能力の強化を目的として造られている他に、ドライ、フィーアが魔力によって人の精神に干渉し、力を増幅させる能力を使えるらしい。

 そしてフェンフ、ゼクスが戦闘のみに特化して作られたのに対し、アハトが戦闘能力と自由意思を持たせた実験体として造られたと書かれている。


 その中でNO.7とNO.9については後期型の戦闘タイプとだけ表記され、NO.0に関してはunknownと書かれており、詳しいことはわからなかった。


「アハト、あんたこの中で会ったことのあるやつはいる?」


「そうだな、ここにいるメンバーの他には3と5と6の顔を知っている程度だ。」


 NO.5以降の実験体はソフィとアハトが所属していた派閥の出身なだけに、お互いに顔を合わせたことぐらいはある。


「5と6はまあ・・・いわゆる制裁と暗殺用に造られたやつらだな。」


「制裁と暗殺用?」

 

 アハトが説明すると、フィーアが不思議そうに首をかしげる。

 

「ああ・・・アルスマグナに逆らった国に対して、見せしめに制裁を加えるときとか、重要人物を暗殺するためのってことさ。」


 さらっと答えたアハトに、ソフィはさらに質問を続ける。


「0と7と9については、あんたもわからないってわけ?」


 元は同じ派閥にいたとはいえ、ソフィとアハトでは立場がだいぶ違う。

 ソフィが向こうで自由に動けたかといえばそんなことはなく、他の子供たちに混ざって、日々工作員としてのノウハウだけを叩き込まれて生きてきた。

 それに比べて、アハトは同じ実験体として他のナンバーズと接触する機会もあったはずだ。

 

 そんなソフィとアハトが出会ったのはふとしたきっかけで、こちらの施設に送られてくることになった時も一緒だった。

 そういえば、アハトと初めて会った時ってどんなだったっけ・・・?

 ふとそんなことがソフィの頭をよぎるが、アハトの次の言葉で現実に引き戻される。


「何を言ってるんだソフィ・・・いや、お前こそ知らないのか?」


「え、私は・・・」


 なぜか意味ありげに問いかけられ一瞬迷うが、ソフィはこう答えた。


「・・・知らないわね。

 私も5と6は多少は知ってるけれども、0と7と9については全く分からない。」


「・・・そうか。」


「あとは、ドライに関しては、今はあちらの派閥にいるってことくらいしか・・・」


 ソフィがちらっとフィーアに視線を送る。

 NO.3に関しては彼女の方が関わりが深いからだ。


 しかし・・・


「え・・・ドライが来るの?」


 フィーアは少しだけ怯えたように、ツヴァイの服の袖を掴む。


「大丈夫だよ、あいつは今はいないから。」


 そんなフィーアの頭をそっと撫でて、ツヴァイは安心させるように微笑む。


「ドライか・・・向こうに行って以来、会ってないよね。元気にしているのかな?」


「兄さん、今はその話はやめよう。」


 アインが懐かしそうに言うと、ツヴァイが首を横に振って止めた。


「ソフィ、それはフィーアには・・・あ。」


 フィーアには見せないでほしい、とツヴァイが言う前に彼女がそれを覗き込もうとする。

 ツヴァイは慌てて、ソフィの手から資料を取って後ろに隠した。

 この資料は今の幼いフィーアには少し刺激が強すぎる。

 そう感じたツヴァイは、できればそれを見せることは避けたかったのだが、彼女はじっとこちらを見つめている。


 仕方なく、ツヴァイは真剣な眼差しでフィーアに問いかけた。


「フィーア、これには君が知らない方が良いことが書いてあるかもしれない。それでも見たいの?」


それに対してフィーアは目をぱちくりとした後、


「ツヴァイのことも書いてあるんでしょう?だったら見たいの。」


にこっと笑ってそう答えた。


「・・・わかった、フィーアがそう言うのなら。」


 フィーアなりの覚悟を感じたのか、ツヴァイは資料を見せてやることにする。

 何も言わないまま、彼女はその資料に目を通していたが、きっとそこに書いてあることは衝撃的なものだったの違いない。


 そしてそれは、アインにとっても同じことだった。


竜討伐は第3章になる予定です。もう少々お待ちください。

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