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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第3話 第2章『錬金都市マリージア』 ③

今日はグレイおじいちゃんとアハトが秘密基地にたどり着くまでのお話です(*ノωノ)

「やれやれ、俺はまだ寝足りないぞ。」


「いいから早く案内せんかい!」


 面倒そうに欠伸をするアハトの背中を、グレイは呆れ顔で押した。


「わかったわかった。」


 ところが・・・


「・・・!?」


 アハトが歩き出すと同時に、黒い物がぽろっとマントの中からこぼれ出した。

 それは見紛うことなくグレネードだった。


「なにやってるんじゃー!?」


ズザザザザーッ!


 美しいスライディングをしながら、グレイが落ちたグレネードを抱きとめる。


「ひ、冷や汗かいたわいっ!!」


「ん?ああ、すまんボーっとしていた。」


「お主はボーっとしているとグレネードを落とすのか!?」


 ぜえぜえと肩で息をしながら、グレイはグレネードをアハトに押しつけた。


「まったく・・・お主、この都市にいたことがあるんじゃろう?」


「まあな。」


「アルスマグナの支部に向かう目星はついておるのか?」


「ああ、もちろんだ。そのためには少々遠回りしなければならないが、なあに、その分安全な宿を提供できる。」


 どこか目的地があるのか、アハトは迷うことなく街はずれに向かって歩いていた。




「ずいぶんと遠まわりじゃのう。本当にこっちであっておるのか?」


 細い小道を抜けながらグレイは尋ねた。

 街からは随分と離れた場所に向かっているようなのだが、アハトは未だにどこに向かっているのかを明かそうとしない。


「仕方ないさ、安全性を確保するには下手に近くない方が良いだろう。

 昼間っから平気でアルスマグナの構成員がうようよしてるような街だからな。」


「なるほどのう。それは確かに下手に街の中に隠れるのは得策とは言えんの。」


 それからしばらくして、2人は街はずれにある小高い丘の上にたどり着いた。

 そこに古い家が一軒建っている。

 ぱっと見は普通の家のように見えるのだが。


「ここだ。」


 アハトは遠慮なくその家の鍵を開けて中に入った。


「久しぶりに帰ってきたな。」


 荒れている部屋の中をずかずかと進んで奥にある本棚の本をどかすと、その奥にあるスイッチを押すと。


ごごごごご・・・


「おお、隠し扉じゃったか!」


 隠し扉になっている地下への階段の扉が重い音と共に開く。


「地下に下りてくれ、上はやつらの手が入ってるみたいだからな。」


 ちらっと部屋に視線を送ってから、特に思い入れもないのかアハトは抑揚のない声でそう言った。


本や資料が散らばり窓ガラスなどが割られていることは、侵入者が部屋を荒らしたことを示している。


「幸い地下は荒らされていないようだ。」


 手近にあったランプに火をつけるとアハトはさっさと階段を下りて行く。

 それに続いてグレイも下の階に降りようとした時だ。


「おっと。」


 アハトのマント中から、グレネードがこぼれ落ちた。


「なんでお主はことあるごとにグレネードを取りこぼすんじゃああ!?」


 全身全霊の華麗なダイブでグレネードを受け止めたグレイが階段を転げ落ちそうになったので、アハトがひょいっとその身体を支えた。


「危ないぞ爺さん。」


「危ないのはおまえじゃ!!」


「何を言ってるんだ。俺ほど安全な男はいないぞ。」


「どの口がそういう嘘を言ってるのかしら!?」


 そうちゃんの中からも今の光景は見えていたらしく、ソフィの声が聞こえてきた。


「やれやれ、おまえらいい加減ぬいぐるみから出てこい。」


 下に降りてからテーブルにそうちゃんを置くと、全員が順に外に出てくる。


「ふう、やっと安全なところに辿り着いたみたいだね。」


「フィーア、大丈夫かい?」


「うん、ありがとう。もう大丈夫。」


 アインが真っ先に周りを確認したのに続いて、ツヴァイもフィーアを気遣いながら同じように辺りを見回した。


「まったく!あんたはグレイさんに迷惑ばっかりかけて、1回くらいグレネードで爆死しておいた方が良いんじゃないの?」


 アハトの行動によほどあきれたのか、ソフィは出てくるなりそんなことを言う。


「うむ、愛しいグレネードと心中も悪くないな。」


 ソフィの言葉をどこまで本気で受け止めたのかは知らないが、アハトは満足そうに頷いた。


「さ、さすがにわしも寿命が縮んだわい。」


「おじいちゃん、大丈夫?」


 心配そうにフィーアが服の袖を引っ張ると、グレイはにこにこしながら頭を撫でてやる。


「フィーア嬢ちゃんに心配してもらえたから寿命が10年は伸びたかも知れんのう。」


「本当に?よかった~。」


 微笑むフィーアを本当の孫のように可愛がりながら、グレイは薄暗い室内を見渡した。

 非常灯のような赤い灯りがぽつぽつとついている以外は明かりはなく、部屋にあるものはなんとなくしかわらない。

 だが、錬金術士であるグレイにはそこが何なのかはすぐにわかったようだ。


「ふむ・・・ここは錬金術の施設か?」


「ああ、俺が昔研究に使っていた施設だ。」


「お主・・・まさかこれは!?」


 そして、グレイは足元にあるそれに真っ先に気付いた。

 皆の足元に見覚えのある文様が広がっている。

 これはおそらく、ツヴァイを助けるときにグレイが床に描いたのと同じ類のものだ。


「紋章術・・・錬金術の中で禁術とされている存在だ。」


 壁にあるスイッチを押して、アハトは部屋の錬金灯をつける。


「賢者の石、かつて俺もそれを作ることを目的として動いていた時期があった。」


 錬金灯に光が灯り、部屋の中を明るく映し出した。

 部屋の奥にある巨大なガラス製のポッドの中には液体が入っており、循環器が動いている。

 それは中にまだ何かが入っていることを示していた。

 そのポッドに片手でぽんぽんと触れながら、アハトはにやりと笑って振り向いた。


「ようこそ、俺の研究施設へ。」


しばらくはアハトさんやりたい放題な予感(`・ω・´)

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