ホムンクルスの箱庭 第3話 第2章『錬金都市マリージア』 ②
ブックマークしてくださった方ありがとうございます(*´∀`)♪
とっても励みなります(*´ω`*)
スーツをピッチリと着こんだ銀毛アフロの巨大な獣人と老人が、錬金都市マリージアの門をくぐろうとしていた。
アフロ獣人の腕にはくまのぬいぐるみが大事そうに抱かれている。
老人の方はともかく、そんな目立つ獣人に門番が声をかけたのは当然の流れだった。
「な、なんなんだあんたいったい・・・正直怪しいなんてもんじゃないぞ。
怪しいって言葉そのものが服を着て歩いてるみたいだ。」
「いや、わしはそんな怪しいもんでは・・・」
老人が慌ててごまかそうとするが、さすがにそれでは門番もごまかされない。
「じじいはいいよっ!どっちかっていうと隣のアフロのことだよ!!」
いたって当たり前の反応を示した門番に対し、アフロ獣人はにこにこと笑いながらこう言った。
「僕は怪しい者じゃありません。おじいさんの腰の治療をしに来ただけなんです。」
「そもそも、後生大事にくまのぬいぐるみ抱きかかえてるってどういう趣味なんだ・・・。」
「これは友達の大切な人形なんです。」
「あ、ああ・・・なるほど?ある程度は納得できるところだが、あんたのアフロが解せねぇ。」
獣人はアフロによって完璧な変装ができていると思っていたようだが、周りから見ればかえって怪しく思われてしまったようだ。
「え?かっこよくないですか!」
「え・・・そんな自信ありげにかっこいいって言われたら、かっこよく見えてくるじゃねえか。」
「これは今ブームの髪型なんですよ。」
ブームといってもアフロ獣人のマイブームでしかないのだが、どうやら門番は違う意味で捕らえたらしい。
「そ、そうだったのか!?他の街ではアフロが流行っていただなんて・・・
く、俺を新たなファッションセンスに目覚めさせるとはなんてやろうだ!
くそう、さっさと先に行っちまえ!」
「ありがとう!」
「まあ、それはそれとして通行料をくれ。」
「うむ、それじゃあ通らせてもらうぞ。」
「治療院ならあっちのほうだぜ!」
門番が街の右側を指さして教えてくれる。
「ありがとう!」
「またな。アフロの君!!」
2人分の通行料を門番に手渡し、老人とアフロ獣人は錬金都市の門をくぐった。
その後、その門番が流行に乗って獣人と同じようにアフロになったとかならないとか。
「ふ、ふう・・・正直今のかなりヤバかったんじゃない?あの犬っころ、ばれたら叩いてやるところだったわ。」
「ああ・・・兄さんのアフロが返って人の目を引いてしまったみたいだね。」
「いや、返っても何もあからさまに怪しいでしょあれ。なんか変な友情が芽生えちゃってたけど。」
そこはのどかな草原だった。
草原にはドライとツヴァイ、ソフィがいて、空中の映像を眺めながらそんな会話をしている。
少し離れたところではアハトが昼寝を決め込み、2羽の鳩とフィーアが戯れていた。
ここはツヴァイの作った亜空間、ぬいぐるみのそうちゃんの中に作られた草原だった。
「ユウとアイはヒナが生まれたんだね。おめでとう~。」
のんびりとした様子で会話をしているフィーアには、鳩たちの言葉がわかっているかのようだ。
ツヴァイの案というのはそうちゃんの中にみんなを避難させ、少ないメンバーで街中を移動しようというものだった。
そこで、自分たちのメンバーとして認識されていないグレイと、アフロで髪型が代わっているアインが表に出て門をくぐることになったのだが、今のはなかなかにスリリングだった。
外の光景はツヴァイの力でぬいぐるみの目に映ったものが見えるようになっているのだが、それが返って心臓に悪い。
「ふう、危ないところだった。僕の姿は見られてしまったから、今度は別の人が変わってくれないかな?」
「そうじゃの・・・こんな怪しい輩と一緒では嫌でも目立つ。よかったらフィーア嬢ちゃんが出てきてくれんかのう?」
グレイに呼ばれると、フィーアは立ち上がって返事をした。
「うん。わかった~。」
「気をつけて行ってくるんだよ?」
「うん!」
「ばれるようなことするんじゃないわよ?失敗したらほっぺつねるからね。」
「え、え・・・うん、気をつける。」
「あ、それならフィーア、こっちに来なさい。髪型をかえてあげる。」
「ありがとう、ソフィ。」
3人に見送られてフィーアの姿が消えると、代わりにアインがこちらに姿を現す。
「いやあ、入口は狭いけど入るとずいぶん広いねそうちゃんの中は。」
「なんていうか、改めてツヴァイの能力のすごさを思い知るわねこれは。
ところで、いつまで昼寝してるのかしらあいつ・・・。」
さっきからユウとアイの巣のある木の下で昼寝を決め込んでいるアハトを、ソフィはじと目で眺めた。
「アハトもきっと疲れているんだ。もうちょっと休ませてあげよう。」
「まったく、あれだけ傍若無人でどこに疲れる要素があるのかしらね。」
はあっとため息をつくと、ソフィはまたツヴァイが作ってくれた外の見える映像に視線を戻した。
「さて、フィーア嬢ちゃん。行くとするかのう。」
「うん!」
外に出たフィーアは、いつものようにそうちゃんを抱きしめて歩き出した。
かわいらしい白のふわふわとしたワンピースを着て、ソフィに髪型をポニーテイルに変えてもらいご機嫌だ。
これならば、おじいちゃんと孫が治療のためにここを訪れたように見えるだろう。
「しかし、相変わらず大きな都市だのう。わしもその昔来たことがあるが、あの時以上の発展ぶりだわい。」
「大きな街~。」
物珍しそうに辺りを見回すフィーアを、孫を見るような愛しそうな目でみつめながらグレイが尋ねた。
「嬢ちゃんはここにきたことがあるのか?」
「うん!来たことがあるの。あのね、この街でね・・・」
元気良く頷いた後、言葉を続けようとしたフィーアがびくっと震える。
「ど、どうしたんじゃ嬢ちゃん。」
「あ、あう・・・」
何かに脅えるように視線をさまよわせたフィーアは、足元がおぼつかなくなったのかいきなりその場で転んだ。
「いたい~っ!」
「大丈夫か嬢ちゃん!良い子だから泣かないでおくれ。」
「うえ~ん!いたいのやだぁ!」
「よ、よし、わしがおんぶしてやろう!!」
子供のように泣き始めたフィーアを背負うと、グレイは慌てた様子でその場を離れる。
その光景は、そうちゃんの目を通して中にいるメンバーにも伝わっていた。
「大丈夫!?フィーア!」
「ちょっとじじい!フィーアのことちゃんと見てなさいよねっ!!」
「じゃかあしい!外に聞こえるからお主らは黙っておれ!」
ぬいぐるみから聞こえる文句にそう言い放つと、グレイは急いで人気のない方に走る。
孫娘らしき少女を背負って全力で走り抜ける老人の姿は、到底、腰の治療に来たようには見えなかった。
「こ、ここまでくれば大丈夫じゃろう・・・とりあえずアハトのやつを起こせ!
フィーア嬢ちゃんの様子もおかしいし、そろそろどこかに案内してもらわんと安心して休むこともできんわい!」
「それもそうね・・・アハト、ほら!起きなさい。」
「なんだ?飯の時間か。」
「あとで食べさせてあげるからとりあえず起きて!」
まだ寝ぼけているアハトの腕を引っ張って起こすと、ソフィはその背中を押して外に放り出す。
代わりに戻ってきたフィーアはツヴァイに慰めてもらいながら、ようやく落ち着きを取り戻したのだった。
次回はアハトの秘密基地に到着予定です(ノ´∀`*)




