表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
59/172

ホムンクルスの箱庭 第2話 ~エピローグ~

5月12日。

本日2回目の更新です(*´∀`)♪

 あれからツヴァイは、ほとんど休まずにフィーアの傍についていた。

 身体が強くなれば守れる、そう思いあがっていた自分に腹が立った。

 

 ドライの言うとおりだ・・・守る守ると言いながら、僕は結局、フィーアを守れていないじゃないか。

 

 そんな思い詰めた雰囲気を察したのか、グレイが拳を握りしめて俯いたツヴァイの肩に手を置く。


「あんまり根を詰めるでないぞ、小僧。」


「わかっています。」


 フィーアの額に濡らした布を乗せながら、ツヴァイは頷いた。

 ツヴァイ以外は交代制でフィーアの様子を見ることになり、今はグレイの番だった。


「小僧、おまえがフィーア嬢ちゃんを大切にしているのは、やはり惚れておるからか?」


 場をなごませるようにグレイがにやにやしながら肘でつつくと、ツヴァイは照れたようにはにかんだ。


「そうですね・・・僕にとってはそれこそ本当に子供の頃から大切で、宝物のような子ですから。」


 フィーアを愛しそうに見つめてから、ツヴァイは力なく下を向いた。


「今まであまり守ってあげられなかったのが、悔しくて仕方ないですけど・・・」


「まあ、おまえさんも少しは身体が強くなってきたわけだし、その分これから守ってやればよいじゃろうが。」


「そうですね・・・」


 そんな会話をしているうちに夜は更けて行く。

 やはり疲れがたまっていたのか、グレイがこっくりこっくりと居眠りを始め、ツヴァイが布を濡らすための入れ物に水を入れて戻ってきた時だった。

 いつの間にか起き上がったフィーアが、ベッドの上でどこか遠くを眺めている。


「フィーア!起きたんだね?」


 そしてツヴァイの声がすると、ゆっくりと振り向いてこう言った。


「蒼ちゃん・・・」


 それはいつものようにぬいぐるみに対してではなく、間違いなくツヴァイに対してのもの。


「・・・紅音?記憶が戻ったのかい!?」


「今はアレが眠っているの。それに満月で魔力が強いから・・・少しだけ出てこれたみたい。」


「アレって何だい?」


「それは言えない・・・でも蒼ちゃん、逃げて。」


 フィーアが何を言いたいのかは分からないが、自分のことを心配してくれているということだけは分かった。


「紅音を傷つける存在から僕が逃げることはできないよ。」


「ダメ・・・逃げないと皆食べられちゃう!」


 取り乱すフィーアを、ツヴァイはぎゅっと抱き寄せる。


「食べられる・・・ヌルのことなのかい?教えて、いったい何があったの?」


「わたし、は・・・」


「なんじゃ・・・?おお、フィーア嬢ちゃん起きたのか!」


 フィーアは一瞬視線をさまよわせた後、グレイを見つめて言葉を口にした。


「私は・・・グレイさん、あなたと同じような禁忌を犯そうとして。」


「なん、じゃと・・・!?」


 フィーアの様子がおかしいことに気付いたグレイはツヴァイを見る。


「どういうことなんだい?紅音」


 ツヴァイはグレイに対して任せてほしいというように頷くと、フィーアの肩に手を置いて落ち着かせてから尋ねる。


「私、蒼ちゃんのためなら何でもしようと思った。

 蒼ちゃんが助かるのなら、たとえ人じゃなくなっちゃってもいいって思うくらいに思いつめてた。」


「まさか・・・」


「私がアルスマグナの秘密について調べて行くうちに、辿り着いたのがヌルだったの。」


「なんでそんな・・・!

 あれは少なくとも僕が見た資料では、他者を食い荒らして行くだけの化け物だった。」


「うん・・・ヌルが自身で賢者の石を作ることが出来る個体だと聞いた私は、蒼ちゃんを助けるためにその原理を調べようとした。

 でも、蒼ちゃんの言うとおりアレは蒼ちゃんを助けられるような物じゃなかったの。」


「紅音・・・」


 震えるフィーアの髪を撫でて、ツヴァイは言葉の続きを待つ。


「あれは・・・私たち全員を取りこんで、完全な賢者の石を作るためのものだったの。」


「そう・・・だったのか。君はそれから僕を守ろうとしてくれていたの?」


「ん・・・でもごめんね、長くはここにいられない。」


「どういうことなんだ紅音?記憶が戻ったんじゃないのか。」


 その質問にフィーアは悲しげに微笑んで、衝撃的な言葉を口にした。


「私は・・・ヌルに食べられてしまったから。」


「そんな・・・」


「ごめんね、蒼ちゃん。」


 謝るフィーアにツヴァイは泣きそうな表情をするが、すぐに思い直して。


「いや・・・君は今日が満月で魔力が強いのと、アレが眠っているから出てこられたって言った。

 つまり、紅音はまだ消えてはいないんだね?」


「うん・・・私はずっと、アレの中にいるの。」


「なら、君は必ず僕が助けに行く。

 僕は大切な人が大変な時に、逃げろって言われて逃げるような男にはなりたくないんだ。

 兄さんたちだって紅音がそんな目に遭ってると知ったら、絶対に助けに行くって言うさ。」


「ああ・・・やっぱりそうなっちゃうんだね、蒼ちゃん。」


「ごめんね、僕は君を助けに行くよ。

 約束するよ。君を助けだして、皆と一緒に平和に暮らそう。

 そうできるように僕はいっぱい頭を使って君の元に行くから。」


「わかった・・・待ってる。」


 泣きそうになりながらも、フィーアは頷いてツヴァイの胸元に頬をすりよせる。


「蒼ちゃん、気をつけて・・・アレは私たちをすぐ傍で見ているから。」


 言ってからすぐに、フィーアはまた気を失ってしまった。


「紅音・・・!ヌルが、僕たちの近くにいる・・・?」


 ベッドに倒れ込んだ彼女はくーくーと穏やかな寝息を立てている。


「そうなると・・・可能性がありそうなのは。」


「おい、さっきから何を言ってるのかわからんぞ。

 じゃがまあ、その子がヌルとか言うわけのわからん化け物に食われて、助けなきゃいかんと言うのは分かった。わしも力を貸すぞい。」


「ありがとうございます・・・僕にも、ようやく動けるときが来たみたいだ。」


 ツヴァイはフィーアの額にそっとキスをした。

 ヌルに奪われた紅音を取り戻すことを決意しながら。


次回は第2話で出てきた新キャラクターたちの人物紹介となります(*ノ▽ノ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ