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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第2話 第7章『フェンフ』 ⑦

今日はお昼に更新です~(*'ω'*)

「まさか、フェンフが機械だっていうの!?」


 ソフィもようやく気付いたのか、その光景を見ながら驚愕したように言った。


「ああ、自分の意志をもって動く機械なんて、少なくとも僕は初めて見たけれどね。」


 ツヴァイもにわかには信じ難いようだったが、目の前の事実を否定することは出来ないようだ。

 アルスマグナにある機械類は、あくまでもシステム通りに動かすことのできる便利な機器の一つでしかない。

 少なくとも、ツヴァイやソフィはそう思っていた。


「アルスマグナの技術が、そこまで進歩していたなんて。」


「ふむ、あり得ないことではないと思うぞ。」


 驚く2人とは対照的に、アハトはフェンフが機械だという事実をあっさりと受け入れたようだ。


「何よアハト、意外と冷静じゃない。」


「よく考えてもみろ、3メートル越えの人間なんてそうそういるわけがないからな。」


「そ、それはそうだけど、機械っていうのは人が操作しないと動かないものなんじゃないの?」


 3メートルを超える巨体というのは種族によってはありえない大きさではなかったが、アハトが言う通り珍しいのは間違いない。

 しかし、それにしても人型の機械と比べれば十分にあり得る範囲だったので、さすがにソフィも思いつかなかった。


「音声認識で動くんだろう。だからゼクスが命令をしていたんだ。」


「でも、だったら今はどうして?」


 ゼクスが死んだ今もフェンフは動き続けている、命令する人間がいなくなったというのにだ。


「ゼクスの命令以外にも、俺たちを始末するという命令があらかじめプログラムに組まれてるんだろうな。」


「命令を組み込むって、機械の動きを予め設定しておいたってことよね?

 それでこんな風に人間みたいな動きが出来るものなの?」


 プログラムとは行うべき処理を順序立てて記述したもので、アルスマグナにある複雑な機械の多くはそれに従って作動している。

 ソフィもハッキングなどを行う技術を持っているのでプログラム自体は知っているのだが、ああいうのは融通が利かないからこそ着け込む隙があるのだ。

 それが自分でものを考えるように動くのでは今後、データを盗まなければならない時に厄介だと頭の隅で考えてしまう。


「もちろん、こいつが特殊なだけだろうがな。

 すべての機械にこんな仕様が施してあるわけではないと思うぞ。」


 表情からソフィのそんな考えを読み取ったのか、それともたまたまなのかアハトがそう補足する。


「なるほど、細かい命令はゼクスがするけれど、それ以外は自分の意志・・・・・・というか、プログラムで動いているってことかい?」


「ああ、でもそれも人工知能なんていう奇知なものをどっかの誰かが作っていなければの話だが・・・・・・」


 何か思い当たることでもあったのか、アハトはしばし考えるような動作をする。

 それを遮るようにドライが口をはさんだ。


「何よそれ!私の悪意が効かないじゃないの、むかつくわ!!」


 詳しい話は理解していないようだが、とりあえず自分の能力が効かないと知ってドライは憤慨したようにフェンフをびしっと指さした。

 放電していたフェンフの黒い鎧の継ぎ目から、シューシューと音を立てながら湯気のようなものが上がっている。

 さらに、鎧の一部の金属が熱されて赤く変色する現象が起こり始めていた。


「ちょっとまずいわね。ひょっとして壊れたせいで暴走状態なんじゃないのあれって!」


グオオオオオオ!!


 ソフィの言葉の正しさを証明するように、街全体に響き渡るような雄たけびを轟かせたフェンフが大剣を振り上げた。


「させない!!」


 慌ててアインが皆の前に立ち、フェンフの攻撃を受けた瞬間だった。


「・・・・・・なっ!?」


キィン!!


 甲高い音を立ててあっさりと、フェンフの剣を受けたアインの長刀の刃が折れて地面に刺さった。

 そのままの勢いで吹き飛ばされたアインを誰かが助けようとする間もなく、高速で駆け抜けたフェンフが次の行動を起こした。

 フェンフは片手でアインをつかむと、暴走状態で走りながら地面を引きずり回す。


「兄さん!?」


「だめーっ!!」


 フィーアが魔法をフェンフの足元に放つと片足だけが凍り付いて動きが止まり、手からすっぽ抜けるようにしてアインが地面に投げ出される。


「犬!!」


 地面を数回転がってようやく止まったアインの元に、真っ先に駆け寄ったのは意外なことにドライだった。


「ちょっと!しっかりしなさいよ!?」


 地面に横たわる身体にすがるようにして一生懸命に揺するが、アインはぴくりとも反応しない。


「ドライ、悪いけどそこをどいてちょうだい!」


 取り乱すドライを押しのけて、ソフィは回復魔法を唱える。

 アハトの時の比ではない。

 よほどの力で引きずられたのかアインの身体はボロボロになり、裂傷だけでなく打撲や骨折も考えられるほどに傷ついていた。


「どういうことだ。さっき俺が引きずられたって時はあんな風には・・・・・・!?」


「・・・・・・斥力が切れたからだ。」


 しまった、というようにツヴァイが苦い表情を浮かべる。


「どういうことだ?倒すために斥力を切ったんじゃなかったのか?」


「もちろんそのつもりだよ。

 ただ、それによってフェンフがもともと持っていた力がどう影響するかを、視野に入れるのを忘れていた。」


「もともと持っていた力?」


「フェンフは振り下ろした剣そのものというよりは、それによる衝撃で攻撃してきていただろう?

 あれは剣にも斥力が発生して、触れるものを弾くようになっていたからなんだ。」


「ふむ、なぜ剣にも斥力を発生させたんだろうな。

 俺たちをつかむときに空いているほうの手に斥力は発生していなかった。

 初めから剣もそうしていればもっとあっさりと俺たちを葬れたんじゃないのか?」


 今の状況を見ただけでも、それは明らかだった。

 肉体強化を施されているアインを吹き飛ばすほどの剣圧ならば、他のメンバーなどあっという間に粉みじんだ。


「フェンフはゼクスとは違って、大人数向けの立ち回りをするように造られているんだろうね。

 ようは、あの大剣を振り下ろすだけで広範囲を破壊できる仕様になっていた。

 一撃の威力は落ちたとしても、それこそ街や建物を破壊するのに適した攻撃が出来たんだ。

 でも、今は分散していたフェンフの力そのものが、あの大剣に乗ってしまっている。」


 もともとフェンフは国に対して、見せしめに破壊活動をするように造られている。

 ツヴァイの説明は理に適っていると言えるだろう。


「なるほど・・・・・・機械は人間とは比べ物にならないほどの力を持っているからな。

 つまり、生半可な人間ではその剣を受けることもかなわないということだ。

 今のはソフィの援護も間に合わなかった、さすがのアインでも厳しかったか。」


 衝撃だけでもミンチにされそうなほどだったのだから、フェンフの力そのものを受け止めるのは容易なことではなさそうだ。


「だが、それも長くは続かなそうだぞ。」


 アハトの視線は、氷に捕らわれているフェンフの大剣に注がれていた。


「ああ、大剣がフェンフの力に耐えきれていないんだろうね。」


 先ほどの一撃は大剣にとっても負荷だったらしく、罅が入り始めている。

 フェンフの全力を受けても破壊されないような武器を用意できなかったのか、それとも斥力が切れること自体を想定していなかったのかはわからないが、こちらに有利な状況が一つでも見つかったのは不幸中の幸いだと言えるだろう。


「そろそろ動くぞ!」


 アハトが牽制するようにグレネードを投げると、氷を砕いて動き出したフェンフは大剣であっさりとそれを切り裂いた。

 爆発がフェンフの半身だけを巻き込み、それ以外は斥力に反射されてこちらに向かってくる。


「く・・・・・・っ!」


 ツヴァイは広範囲に時空の歪を発生させることによって皆への被害を防いだが、不意に苦しそうに胸元を抑えた。


「ツヴァイ!!」


 それに気づいたフィーアが慌てて駆け寄ろうとすると、ツヴァイは首を横に振って手で制す。


「大丈夫だ、フィーア。今は戦うことを考えて!」


「う、うん。」


 駆け寄りたい気持ちを我慢してフィーアはその場に留まって呪文を唱える。

 気絶しているアインを呆然と見ていたドライだったが、ようやく立ち直ったのかキッとフェンフをにらみつけた。


「フィーア、私のフェンリルと一緒に攻撃しなさい。」


「わかった!」


「見なさいフェンフ!私たち姉妹の美技を!!」


 ドライが呪文を唱えると、何もない空間から突如3メートルもあろうかという大きさの氷の狼が姿を現す。


「フェンリル、あいつに噛みつきなさい!!」


「ドライ、行くよ!」


 召喚されたフェンリルがドライの指示に従ってフェンフの傷口に噛みつくと、それに合わせてフィーアが背中の損傷部分を凍り付かせる。

 フェンフ全体が熱を放っているためにジューっと溶けるような音がして、一部の氷が溶けて水蒸気となった。

 もう半身に当たったブレスが反射されるのを見越してか、アハトがグレネードの爆風でそれを相殺する。

 それからアインの状況を確認するために、ソフィに声をかけた。


「アインはどうだ!?」


 残りの斥力装置を破壊するにしても、フェンフを倒すにしてもアインの力は不可欠だ。

 一刻も早く、戦場に復帰してもらわなければならない。


「あとちょっと!!」


 アインの傷を急ピッチで治すソフィの額には汗がにじんでいた。

 相手の傷が深ければ深いほど、回復魔法は術者の魔力を消耗させる。

 それだけの傷をアインが負っていることをその身で感じながらも、ソフィは必死に回復魔法を使い続けた。


次回でフェンフ戦終わるといいな!と思ってます(;´・ω・)

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