ホムンクルスの箱庭 第2話 第7章『フェンフ』 ⑤
今日はなんとか更新できました(*´∀`)♪
「フェンフはあの赤く光っている穴から、大気の魔力を吸い込んでいるみたい。」
こちらに進撃を開始したフェンフの周辺の魔力の動きを、フィーアは正確に感じ取って皆に伝えた。
皆が確認してみるとフィーアの言う通り、フェンフの背中にあるパイプは下側に穴が開いて微かに赤く光っている。
「つまり、それを破壊することができれば何とかなるってことだな。」
グレネードを上に放り投げては掌で受け止める動作を繰り返しながら、アハトはフェンフの様子を覗っていた。
「斥力は確かに厄介だが、それが発生している原因が何なのかさえ分かれば手の打ちようもある。
俺のかわいいグレネードを何度も避けてくれたんだ。
やつには相応の礼をしなくちゃならない。もうそれこそあんな目やこんな目にだな・・・!!」
「あんた、相当根に持ってるわね・・・」
変なオーラを発生させながらぶつぶつ言っているアハトを見て、ソフィは呆れ顔だ。
「でも、まともに攻撃しても弾かれちゃうんだよね?」
「兄さんの言う通り、正攻法で攻撃してもこちらが痛い目を見るだけだね。
けど、魔力を吸収しているということは、少なくともあのパイプ部分は魔力を弾かないってことだ。」
アインの疑問にツヴァイが答えると、その意味を理解したのかソフィが口元に笑みを浮かべた。
「つまりは魔力を使うのね?」
「魔力・・・魔法を使うのかい?」
「違うわアイン、魔法は魔力ではないからおそらく弾かれてしまう。」
「魔法が魔力じゃない?」
ソフィの言っていることが分からずにアインがおうむ返しに尋ねると、それに対してツヴァイが補足した。
「兄さん、魔法っていうのは、魔力を使って事象を発生させる一種の法則のことなんだよ。
魔法で引き起こされた事象は、具現化したものとして世界に認識される。
フィーアの氷やソフィの風がそれだね。それらは魔力そのものではないんだ。」
アインがやはりわからないというように難しい顔をしていると、ソフィも別の言葉を選んで説明しようとしてくれる。
「つまり、魔法っていうのは種族や資質、魔力の保有量によって、魔力を使って様々な現象を引き起こす法則全体のことを指すのよ。」
「そうだね、魔法と違って魔力はすべての根源にあり、逆に言えば魔力自体に種類や法則はない。
さっきの儀式でもわかると思うけど、魔法だけでなく錬金術にも使われる。
魔力はあくまでも動力源の一種で、魔法とは違うものなんだ。」
「え~っとね、魔力がないと魔法は発生しないの。魔力は魔法のごはんなの!」
2人の説明は難解だったが、フィーアの説明はもっと難解に思えた。
ただ、今の3人の説明で魔力はエネルギーそのもの、魔法はそのエネルギーがないと発生しないものなのだということくらいはアインにもなんとなくわかる。
「魔力と魔法は違う、か・・・なんとなくわかったよ。でも、それとフェンフとどう関係があるんだい?」
「ツヴァイが言いたいのは、斥力を発生させる装置も魔力によって動いているんだから、魔力自体を弾くことは出来ないだろうってことよ。」
「う~ん、僕にはちょっと難しくてわからないけれど、具体的にはどうすればいいのかな?」
獣人族は身体能力が高い代わりに、魔力の保有量が少ないと言われている。
そのためアイン自身は魔法を使うことが出来ないので、今一つイメージしづらい様だ。
「魔力だと誤認識させるような方法で攻撃すれば、おそらくは背中のパイプ・・・あの魔力を吸収する装置は破壊できるはず。
そうすれば動力源のなくなった斥力の発生装置も止まって反射出来なくなるから、フェンフに攻撃することが出来るわ。」
「ふむ、ならば俺とフィーアで見せてやろう。ただ、誰かフェンフの気を引いてくれると助かる。
背中の装置そのものに攻撃しなければ意味がないからな。」
「私も装置を壊すお手伝いするね。」
アハトが装置の破壊を買って出ると、フィーアもクマのぬいぐるみを抱きしめて頷いた。
「なるほど、普通に攻撃してもはじかれちゃうから、誰かがフェンフの気を引いてその隙に攻撃しないとだめね。じゃあ私はその援護をするわ。」
皆がそんな相談をしている間にも、フェンフは未だ燃えている湿地を悠然と歩いていた。
通ってくる場所の炎が割れるようにして周りに広がっている。
炎をあのように避けるのだから、やはりソフィの風やフィーアの氷も同じだろう。
「ほんと厄介ね・・・炎の中でもなんともないなんて。何とかして動きを止めないと。」
「そうだな。だが、あの湿原で戦うのは無理だ。こちらにおびき寄せてから行動を開始するぞ。」
「そうだね、僕もそれがいいと思うよ。兄さんには、フェンフの気を引く役をお願いしたい。」
「もちろんだ!」
「フィーアはアハトと協力して、あの装置を壊すのに専念してくれるかい?」
「は~い!」
ツヴァイの指示でアインとフィーアが頷くと、それを見ていたドライが急に言葉を挟んだ。
「ふふん、私の召喚魔法があればあいつを動けなくするのなんて簡単なんだから。」
今まで会話に加われなかったのが悔しかったのか、いきなり前に出て自慢げに胸を張る。
「やれやれ、無い胸張っても誰も喜ばないぞ?」
「な・・・っ!?無い胸っていうんじゃないわよ!!あるわよ!脱いだらすごいんだからねっ!?」
アハトの突っ込みに対してドライがいきなり脱ごうとすると、フィーアが不思議そうに尋ねる。
「ドライの魔法は斥力が効かないの~?」
「・・・ふ!そんなわけないじゃない!」
脱ぐのをやめて即答したドライに、フィーア以外の全員がはあっとため息をついた。
何か画期的な方法を思いついたのかと思えば、そういうことではないらしい。
皆の期待を速攻で裏切ったにも関わらず、反応が気に入らなかったらしいドライはむっとしたようにこう続ける。
「私のフェンリルのブレスを使えばこの辺一帯に攻撃があたるから、きっとフェンフにも攻撃が当たるんだからね!」
かなり大雑把な作戦だった。
「待て!斥力で反射された場合、それはここにいる全員が巻き込まれるぞ。」
そして、その作戦は言った傍からアハトによる待ったがかかる。
フィーアと同じくハーフエルフであるドライは、エルフ族の種族魔法である召喚魔法を使える。
エルフ族はもともと魔力の保有量が高い種族で、その種族魔法にはさまざまなものがある。
エルフ族だけの種族魔法の中でも当人の資質によって使えるものと使えないものがあり、ドライはフィーアのように氷を自在に操ることは出来ず、逆にフィーアは召喚魔法を使えない。
召喚魔法とは、自分と相性のいい魔獣を魔力を使って形成し召喚するものだ。
動物を使役するのとは違い魔力によって一定の時間しか召喚することが出来ないが、代わりに力の強い魔獣と呼ばれる存在を具現化することが出来る。
魔獣と呼ばれる存在が召喚される前はどこにいるのか、そもそも存在しているのかというところは理論が分かれており詳しいことは解明されていない。
召喚される魔獣が当人のもつ魔力の気質などに近いことから、自身の魔力を具現化したものという見方もあるようだ。
ドライの場合は氷の魔獣フェンリルを召喚することができる。
フェンリルは氷で出来た巨大なオオカミの姿をした魔獣で、ブレスを吐いたり相手に噛みついたりすることで、相手を切り裂き凍り付かせる能力を持っている。
しかしこんな状態でブレスなどを撒き散らせば、アハトの言う通りここにいる全員に被害が出てしまうだろう。
「は!ちょっとそれやばくない!?ま、まあいいわ。」
「う、うん・・・斥力がなくなってから一緒に攻撃しようね。」
そんなことを言っている合間にも、フェンフは目の前に迫ってきていた。
いつまでも話し合っている時間はない。
フィーアがやんわりとドライの行動を止めてから、全員がフェンフを倒すためにそれぞれの行動を開始した。
今回は魔力と魔法について説明してみました。
分かりづらいところがあったらすいません(。>д<)




