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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第2話 第7章『フェンフ』 ③

やった!勝った!仕止めた第7章完(。・ω・。)ゞ

 銀の月明りが照らし出す湿原に、一人の妖精が降り立った。

 透明がかった水色の翅は、光の粉を纏い神秘的な雰囲気を醸し出している。

 浅く張った水源にそっと足をつけると、踊るようにふわっと舞い上がり彼女は歌を口ずさむ。

 シルフ族の言葉で紡がれるそれは、遠い昔に誰かが聞かせてくれた妖精たちの子守歌。


 静かな水面に小さな波紋を残しながら、ステップを踏むようにして彼女はフェアリーダンスをする。

 その光景は、誰もが視線を外せないほどに美しいものだった。

 そして、それは無慈悲な殺戮の騎士ですらも魅了したらしい。


 兜の隙間から見える2つの赤い光が妖精の姿を捕らえたかと思うと、迷うことなくそちらに向かって湿原の中を進んでいく。

 風が何かを知らせるように強く吹き抜けると、妖精は踊ることをやめて振り向いた。

 澄んだ声で歌を口ずさんだまま、じっとそちらを見つめる。


 3メートルを超える巨大な騎士と小柄な妖精は、まるで物語の一場面のようにしばし見つめ合ったが、やはり物語のような美しい展開は望めないらしい。

 漆黒の騎士は迷うことなく、手にした大剣を振りかぶった。


「・・・かかったわね!!」


 それに対して物語の妖精らしからぬ表情でにやり、と笑うとソフィは空高く舞い上がり振り下ろされた剣をかわして叫んだ。


「今よアハト!!」


「よくやったソフィ!!」


 アハトは発信機を改造して作った遠隔装置を起動させて、水辺に仕掛けられたグレネードを一斉に爆発させた。

 爆炎は四方から渦巻いて、水面に撒かれた油の上を走っていく。

 それは湿原にあっという間に燃え広がって、フェンフを飲み込んだ。


 炎はやはり不自然な動きを見せるが、さすがに全てを反射させることは出来ないらしく湿原は一面火の海だ。

 いくら炎が避けたところで、あの周辺の空気は吸い込めば肺が焼けるほどに熱されているはずだ。

 生身の人間が、生きていられる環境ではない。

その上、金属の鎧を着こんでいるのだから中は灼熱地獄、まるで拷問器具のファリウスの牡牛のように蒸し焼きになるだろう。


「鎧を着こんでいたことが仇になったな。」


「どう?アハト!」


 ソフィは水辺にいたアハトのもとに舞い降りて、状況を確認する。


「ああ、おまえのおかげでうまくいったぞ。」


「そう、それならよかったわ。」


 シルフ族の歌はセイレーンのように相手を誘惑したり眠らせたりするような力はないが、相手の心を惹きつけるような不思議な魅力がある。


「・・・なかなか悪くない歌だった。」


「はいはい、褒めても何も出ないわよ?」


 ぼそっとアハトが言うと、いたずらっぽく笑ってソフィは翅を消す。


「お世辞ではなく、お前の歌には魅力があると思うぞ。」


「もう、こんな時に何言ってるのよ。」


 照れたようにソフィはアハトの腰のあたりに拳をとん、とぶつける。

 最初、歌ってくれと言われたときには少し戸惑いもしたが、そんなに喜んでくれたのなら歌った甲斐があったとソフィは内心うれしく思っていたのだが。


「まるでご○ぶりホイホイのように、フェンフが吸い寄せられていって見事に罠にかかったからな!!」


「・・・そういわれると、なんだか私が某虫に好かれてるみたいだからやめてくれない?」


 アハトの余計な一言によって、ソフィがげんなりとした時だった。

 丘の上に見知った人影が現われる。


「おーい!ソフィ、アハト!」


 肩にドライを担いだアインが、大きく手を振っている。


「ソフィ、アハト!2人とも無事かい!?」


「2人とも元気~?」


 ツヴァイは心配そうに、フィーアはいつも通りぬいぐるみのそうちゃんを抱きしめてのんびりと言った。

 どうやら3人とも無事なようだ。


「よし、行くぞソフィ。」


「了解。」


 アハトが走り出すと、ソフィもそれに続いて丘の上に駆け上がった。


「これはアハトの仕業かい?」


 一面炎の海になっている湿原を見て、ツヴァイも驚いているようだ。


「まあな、ソフィの歌にほいほいつられて、湿原に突っ込んでくれたのがよかったな。」


「なるほど、あれならいくら鎧を着こんでいたとしても、中身がただじゃすまないだろうね。」


 見ただけでアハトの作戦の意図を理解したツヴァイは、納得したように頷く。

 攻撃を当てることばかり考えていたが、間接的に中身にダメージを食らわせるならこういう方法もあったと改めて感心しているようだ。


「アハトが事前に用意してくれていたおかげだね。ありがとう!」


 にこにこしながら言ったアインに、ソフィが訝しげな表情で話しかけた。


「あの・・・ドライはどうしてそうなっているのかしら?

 見たところ怪我をしているようには見えないのだけれど。」


 ぐでーんと伸びたまま、ドライはアインの肩に担がれている。


「うん、一緒に来てもらいたかったんでとりあえず気絶させたんだ!」


「あのね、アインがドライのおなかに、えいってパンチして気絶させたの。」


 アインは得意げに、そしてフィーアがにこにこしながら言ったのに対してソフィはめまいを覚える。


「そ、そう・・・どういう状況だったのかはわからないけれど、アインはもう少し女の子の扱い方を覚えたほうがよさそうね。」


「え!?だ、だめだったかな・・・僕はただ、家族になってほしかっただけなんだけど。」


「家族になって欲しい女の子に、いきなり腹パンはどうなのかしら・・・」


「ソフィ、兄さんを責めないでやってくれ。ドライが抵抗したのが悪いんだ。」


「そ、そう・・・?そうかしら。」


 ツヴァイまで笑顔でそういうので、ソフィにもだんだん何が正しいのかわからなくなってくる。


「それにしてもアハト、あんたあんな秘策があるなら黙ってないで教えてくれれば・・・」


 フェンフを倒す手立てが見つかっているのなら、せめて協力した自分には先に教えてくれればよかったのに随分と人が悪い。

 そう言おうとしたソフィの視線の先で、アハトは湿原を凝視していた。


「うそだろ・・・」


 呆然としながら呟くアハトにつられて、ソフィもそちらに視線を送る。


「え・・・?」


 目の前で信じられないことが起きていた。

 炎が燃え盛る中で、フェンフがギギギ・・・と重い音を立ててこちらを振り向いたのだ。


 そして・・・


グオオオオオオン!!


 怒りを顕わにした漆黒の騎士の雄たけびが、水の都に響き渡った。


仕留めてなかった(´・ω・`)

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