ホムンクルスの箱庭 第2話 第6章『追跡者』 ③
皆さんゴールデンウィーク楽しんでますか~(*'ω'*)
ツヴァイの能力が長く持たないことは、そこにいる全員が分かっていた。
「早めに決着をつけるわよ!」
「当然だ。」
ソフィが魔法を唱え旋風を起こすと、アハトがそれにグレネードを放り投げた。
爆発は風に乗っていつもよりも大きくなり、黒煙が視界を遮るように広がる。
その隙に、全員が行動を開始した。
「ドライは暗いのが苦手だから、私が建物の火を魔法で消すね!」
「ちょ、ちょっと何言ってんのよフィーア!そんなことしたらただじゃおかないわよ!?」
フィーアの言葉に、ドライはあからさまに動揺する。
ゼクスがわざわざ建物に火をつけて明かりを灯したのには、そういったわけがあった。
ドライは過去のトラウマで、暗い場所が苦手なのだ。
といっても、その建物の住人を殺して遺体に火を放ったのは、完全にゼクスの趣味でしかなかったが。
「ツヴァイ、大丈夫?」
「ああ、僕に銃の狙撃は効かないから大丈夫だよ。僕が囮になるから、フィーアは隠れて。」
「うん・・・」
一緒にいても足手まといにしかならないと判断したのか、心配そうにしながらもフィーアは建物の陰に隠れて呪文を唱え始めた。
その反対側の茂みでは、アハトとソフィが様子をうかがっている。
「とりあえず俺は、グレネードでも作るか。」
アハトはグレネードの材料を取り出して組み立て始めた。
「あんた・・・8つ持ち歩くのがポリシーじゃなかったの?」
「何を言っている。持ち歩いている数の上限はちゃんと8つだぞ。
だが数が足りなくなったら作らないとは言っていない。」
「な、なるほど・・・?」
ポリシーがあるのかないのかわからない回答にソフィは戸惑うが、そんなことをしている場合ではない。
「私はアインを援護するわね。」
魔法を唱えたソフィは、忍び足で移動しているアインの元に風を送った。
それはアインの足音を完全に消すだけでなく、建物を上る際に上昇気流となって身体の負担を軽減してくれるはずだ。
風による援護を感じたアインはソフィをちらっと見て頷くと、ゼクスのいる建物の屋根を音もなく上っていった。
「ち・・・っ!うぜえな。」
煙によって狙っていたフィーアの位置を把握できなくなったゼクスは、舌打ちをして錬金銃のスコープ覗き込む。
「NO.2め・・・あからさまに誘いやがって。」
ツヴァイだけが、先ほどと変わらない場所に立ちゼクスを見上げていた。
恐怖で動けなくなったのか、子どもは逃げもせず足元で震えている。
いら立ち紛れに蹴り飛ばしてやりたいところだが、目の前にいるというのにやはりどうやっても届かなかった。
ということは、ツヴァイはこちらに対して常に能力を使っていることになるわけだが。
その状態で試しにツヴァイの方に1発撃ち込んでみる。
チュインッ!
当たる直前で空間が歪んで弾がはじかれる。
さすがに1か所にしか発動できないような、甘い能力ではないらしい。
「まあいい、そう長く持つわけもねぇんだ。あいつは力尽きてから頭をぶち抜いてやる。」
何度も撃てば力尽きるのも早いかもしれないが、余計に弾を消費する理由もない。
向こうがこちらに来れない以上は、有利なのはこちらだ。
「フェンフ!やつらをこっちに来させるんじゃねえぞ!」
フェンフの目が赤く光り命令に反応して動き出したのを確認すると、ゼクスはいつでも覗けるように窓の横の壁に右肩を当てるようにして、一度隠れてから弾を込める。
1発ずつしか籠められないのがこの錬金銃の不便なところではあるのだが、銃弾の種類を変えることが多いゼクスにはそれほどの手間には感じない。
ゼクスは元はアルスマグナで工作員として育てられた腕利きのスナイパーで、ナンバーズの実験体として選ばれたときに戦闘に特化した改造を施されている。
特に錬金銃を用いた狙撃は、ナンバーズを含め他のどんな実験体の追随も許さない。
狙撃場所や敵との距離、天候、風向きなどそのすべてを感覚的に把握して、最も効果的な一撃を繰り出す。
工作員だった頃のつてや知識を利用して、敵に関しての情報を集めることも怠らないので、一部では狙われた相手は決して逃れられないとまで言われていた。
ゼクスの主な仕事はアルスマグナに反抗的な勢力の有力者を暗殺すること。
それを見た瞬間に、誰もが戦意を喪失するような、時にはアルスマグナに反抗することが無意味だと思えるような残酷な方法で相手を殺す。
そのためなら特殊な弾頭を錬金術によって作り出す苦労も惜しまない。
今回、最初に打ち込んだ、魔力を無効化する霧を発生させる弾もゼクスのオリジナルだ。
この世界の銃と呼ばれるものは、すべて錬金術の技術を用いて作られている。
その技術の全てをアルスマグナが独占しており、一般には普及していない。
中でもライフル型は敵との距離を正確に把握してから狙撃する作業が必要となるので、拳銃型に比べると扱いが難しいとされていた。
弾自体もそれほど種類がなく、ライフル用といってもせいぜい遠距離の狙撃用や貫通力を高めたものくらいしかない。
逆に言えば、その程度で錬金術の技術を持たない者たちなど、容易に殺すことが出来る。
しかし、ゼクスからすれば相手を簡単に殺してしまうことに意味はない。
どんなにアルスマグナがこの大陸に多大な影響を及ぼす組織だとしても、潰しても潰しても反乱分子などいくらでも沸いてくるのが現状なのだ。
大国のいくつかはアルスマグナが戦闘に関する技術などを公開せずに、自分たちだけで保有していることを当然、気に入らないと思っている。
あわよくばその力を奪って、自分たちが世界を支配しようなどと愚かな欲望を抱くものは、後を絶たないのだ。
工作員だった頃にそういった世界の理を何度も目にしてきたゼクスは、ただ殺すことに意味はないと考えるようになった。
抵抗するのも馬鹿らしいと思えるほどの圧倒的な力、残虐さ、非道さをもって制裁を加えなければ・・・次に狙われるのが自分だという自覚がなければ、そういった輩は次から次へとくだらない策略を巡らすのだから。
・・・などと考えていたのは実験体になる以前のことだっただろうか?
狂気の混じった笑みを浮かべてスコープを覗く今のゼクスにとっては、そういった理念はもはや二の次だ。
今はただ、殺すのが楽しい。
自分が手を下すことによって、目の前の獲物たちが絶望しながら死んでいくのを見るだけで快感すら覚える。
特殊弾頭を作るとなると弾の発射火薬の量や弾自体の重さ、打ち込むことによって効果が得られる薬品などの最適な量をすべて計算して作らなければならない。
だが、それらの作業すらゼクスにとっては苦にはならなかった。
なぜなら、彼にとって相手が狙撃された瞬間の表情や周りの人間たちの絶望と失意に、それらの苦労を払拭してくれるだけの価値があるからだ。
いつだったか、弾を打ち込まれたどこかの国の大臣が全身から血を吹き出しながら死んでいくのを見た時はしばらく笑いが止まらなかった。
一方でそういったゼクスの残酷なやり方によって、大国が表立って動くような事態は目に見えて減ったために、アルスマグナ自体もそれを止める理由はなかった。
狙撃のチャンスさえ得られれば戦場は常にゼクスの独壇場だった。
特に今回は同じナンバーズが獲物だということもあり、念入りに彼らについて調べ、特殊弾頭をいくつも用意していた。
前期ナンバーと呼ばれるNO.1~NO.4の中のNO.3が自分たち側の施設にいることを利用して、ある条件を取引材料に情報を引き出すことに成功したのだ。
最も、そのある条件とはNO.4を生かすというものだったので、初めからその約束を守るつもりなどなく、後でNO.3も始末する予定なのだが。
先に動けなくなっている間抜けなNO.3を始末するという手もあるが、大事にしているらしいNO.4を目の前で撃ってやった時にどんな表情をするのかを考えると、もったいなくてそんなことはできなかった。
街の中心にある時計塔からの狙撃で全員順番に殺す、という手も当然思い付きはした。
殺すだけなら遠距離用の弾を少し改造するだけで十分に届く距離だ。
だが、そんな面白くもないことを出来るはずがない。
善人ぶっているNO.1たちを撃つ瞬間の、奴らが仲間を目の前で殺される瞬間のその表情と声を間近で感じなければ、殺すことに意味などないではないか。
「ネズミどもが・・・あぶり出してやる。」
ここから撃っても、おそらくはツヴァイに邪魔をされるだけだろう。
場所を変えようと、ゼクスは別の窓の前に移動する。
そして、適当に数発撃ちこんで他のメンバーの位置を把握しようとした時だった。
「な・・・っ!?」
気配を感じて慌てて顔を上げたゼクスの背後に、いつの間にか子どもを抱き上げたアインが立っていた。
銃の知識に関しては人並み以下なのであまり突っ込みいれないでもらえると助かります(ノД`)・゜・。
次回も頑張りま~す(`・ω・´)




