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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第2話 第6章『追跡者』 ②

5月1日

本日2回目の更新です。



 何発かの銃弾が撃ち込まれて地面が砕けたが、そこにフィーアの姿はなかった。

 弾が当たる寸前でアインがとっさに反応して、フィーアをかっさらうようにして避けたのだ。


「誰だ!?」


「おいおい、マジかよこの距離からあれをかわすかあ?」


 弾の飛んできた位置を音から把握したアインが鋭い視線を向けた先には、ライフル型の錬金銃を手にした長髪の男の姿があった。

 燃えているのとは別の家の屋根裏から、男は楽しげにこちらを眺めている。


「こいつはNO.3のために明かりをつけたのは、失敗だったかもしれねえなあ。」


「どうせあんたが燃やしたかっただけでしょうゼクス?」


「人聞きが悪りいな、ちゃんと仲間(・・)のためにやったんだぜ?

 ただそれにちょっと俺の趣味をくわえたけどなぁ。」


 ソフィの言葉に、ゼクスはニヤっといやらしい笑みを浮かべる。


「フィーア、大丈夫?」


「うん、ありがとう!」


 アインはフィーアをその場に下ろすと、びしっとゼクスの方を指さして宣言した。


「おまえがゼクスか・・・!街の人たちの仇は必ずとる!」


「おまえらナンバーズのくせして善人面してるんじゃねえぞ。

 その考えは甘くねえか?俺としては不思議で仕方ないぜ。」


 それが気に入らなかったのか、ゼクスは憮然とした態度で尋ねる。


「どこが不思議だと言うのかね?」


 にやにやと笑うアハトを見たゼクスは、憮然を通り越してあきれ顔になった。


「まあ、おまえは俺と頭のいかれ具合が同じくらいだからいいんだけどよ。

 どっちかというとこっちよりの人間だろうがおまえは、俺と一緒に楽しもうぜ?」


 その誘いに対して、アハトはやれやれと言うように首を横に振る。


「おまえとは美学が合わない。」


「美学かあ、そいつぁしょうがねえな。

 じゃあ俺も俺の美学でおまえの心臓を撃ち抜くぜNO.8。」


「やれるものならやってみるがいい。」


 挑発するようにアハトはローブを翻した。

 いつでも戦闘準備はできている、というようにグレネードを見せびらかす。


「それはそうとよお、さっきの錬金術師のじじいとかなんで殺さねえんだよ。

 秘密を知ってるんだぜ?意味がわからねえ。」


 アハトの行動をスルーして、ゼクスはさらに質問を重ねた。

 ゼクスからしてみれば、自分たちの秘密を知った時点でグレイは生かしておけない存在のようだ。

 やはり、先にソフィの魔法で逃がしておいたのは正解だったかもしれない。


「彼にはまだ利用価値があるんでね。」


「マジかよ、まあそれなら納得できなくもないんだがよぉ・・・そこの2人もそうなのか?」


 アハトのもっともらしい回答は逆に納得できたようだが、ソフィとフィーアに関してはそうとは思えないのか再度確認する。


「おじいちゃんは家族だから!」


「そうする理由がないのよね。

 生かす理由がないから殺すんじゃなくて、殺す理由がないから生かすの。

 この理屈があんたにはわかるかしら?」


「あ~・・・やっぱり、お前らは気に入らねぇわ。」


 フィーアは純粋な笑顔で、ソフィは苦笑しながら答えるとゼクスはやはり気に入らないというような表情をする。


「わからねえなあ。そいつはわかんねえよ、俺の美学に反する行為だ。

 生かす理由がなければ殺される価値しかねえ、そういうことじゃねえのかよ。

 まるでそこの犬っころ・・・善人ぶってるNO.1に毒されちまったみてえだ。

 どうしちまったんだおめぇ?俺たちは組織の言うこと聞くだけの道具だったじゃねえか。」


 特に元から知っているソフィの言い分は全く理解できないらしく、真意を確かめようとしているようだ。


「そうね・・・でも、あなたの傍にいた時よりもアインの傍にいる方が悪くないわ。

 善人ぶって見えて大いに結構。

 少なくとも、あなたに対して善人ぶる必要はないからむしろ楽だけどね。」


 ゼクスの質問にソフィは過去の自分を思い返すように一瞬だけ遠い目をしたが、すぐにそう答えた。


「じゃあこれならどうだ?」


 ソフィの言葉に気を良くしたように、ゼクスは横から自分の前に何かを引っ張り出す。


「たすけて・・・っ!」


 それは小さな男の子だった。

 泣きじゃくりながら助けを求めているその姿を見て、ソフィは苦虫を噛み潰したような表情をする。

 おそらくその家の住人だろう。

 子供に銃を突きつけて、ゼクスは穏やかな笑みを浮かべた。


「おまえらが抵抗すればその瞬間に俺はこのガキを撃ち殺す。それでも動けるのか?」


「ああ、やってくれ。」


「おまえには聞いてねえよっ!!」


 間髪いれず答えたアハトに、ゼクスは盛大に突っ込みを入れる。


「アイン・・・アインどうする?」


 その隙に、フィーアがアインに助けを求めた。


「ここからじゃどうすることも・・・!」


 アインが悔しそうに言った時だった。


「おまえがそういう奴だってことは、最初からわかっていた。」


 今まで黙っていたツヴァイが、ゼクスに向かって言葉を投げかける。


「なんだこりゃあ!?」


 ゼクスが声をあげるのも無理はない。

 今の一瞬で、子供と自分の間にいつのまにか透明な壁のようなものが出来ていた。

 どんなに手を伸ばしても、見えない何かに阻まれて子供を掴むことができない。

 ツヴァイはどうやら、皆が話している間に状況を確認してどうするのが一番いいかを模索していたようだ。


「これで一方的な攻撃はできないだろう?」


「おい、こんな能力聞いてねえぞ?」


 一瞬焦ったようにドライを睨んだゼクスだったが、彼女はぷいっとそっぽを向いてしまう。

 だが、ちっと舌打ちをしてからツヴァイに視線を戻したゼクスは、何かに気付いたのか口元に余裕の笑みを浮かべた。


「それにしてもおまえ、ずいぶんと汗をかいてるじゃねえか。

 こんな大層な能力持続しては使えねえんだろう?

 こうやって戦闘に出てきてるってことは、何かしら小細工をして付け焼刃の応急処置はしたんだろうがよぅ。

 そもそもてめぇは出来そこないなんだ。無理はするもんじゃねぇぜ?」


「お前にそんなことを心配してもらう必要はない。少なくとも、お前を殺すまでもてば十分だ。」


 アインが建物の陰を移動して、こっそりとゼクスとの距離を詰めていることに気付いたツヴァイは、話を長引かせるためにわざと挑発的な言葉を返した。


「ひゅ~、女みてぇな顔してる割には言うじゃねぇか。

 俺は男色じぇねえが、今の表情はなかなかにそそられるものがあったぜ。」


 しかし、それは相手を喜ばせる結果にしかならなかったようだ。


「・・・・・・」


 その言葉には本気で腹を立てたのか、ツヴァイは無言でゼクスをにらみつける。


「てめぇを絶望させてやりたくなってきたぜ。

 俺は気に入った相手の顔が恐怖に歪む瞬間が何よりも好きなんだ。

 まずはそうだなぁ・・・てめぇが大事にしてるっていうそこの女から殺すっていうのはどうだ?」


 ゼクスの言葉に、氷の網を外そうともがいていたドライが顔色を変えた。


「ちょっと!フィーアには手を出さないって約束でしょう!!」


「ああ、流れ弾が当たったらわりぃって先に言っておくぜ。」


「あんた絶対殺すわ!!」


 じたばたともがきながらも、ドライがゼクスに向かって叫ぶ。

 そんなやり取りを見ていたフィーアは、ぬいぐるみを片腕に抱きながらびしっとゼクスを指差す。


「確かにツヴァイはかわいいけどかっこいいもん!あとドライをいじめちゃダメ!!

 私の大切な家族たちは傷つけさせないから!」


「フィーアがかっこいいって言ってくれた!

 で、でもかわいいってほうのフォローはいらなかったよ・・・。」


 かっこいいと言ってもらえたことはかなり嬉しかったようだが、同じくらいかわいいと言われたことがショックだったらしくツヴァイはがっくりとうなだれる。


「ちょっと、その家族って、ちゃんと私も含まれてるんでしょうね!」


「うん、含んでるよ~!」


「マジで!!」


 フィーアの迷うことない返事に、ドライが大変に満足そうな笑みを浮かべた。


「それはそれとして泣きなさいフィーア!なんかその笑顔がちょっとムカつく!」


「あう!」


 なぜかいじめられてしまったフィーアはツヴァイの後ろに隠れようとしたが、今はそんなことをしている場合ではないと思ったのかその場に踏みとどまった。


戦闘開始です(`・ω・´)

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