ホムンクルスの箱庭 第2話 第4章『錬金術の闇』 ③
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「今回の人体実験は爺さんの協力がればうまくいくはずだ。」
「人体実験じゃなくて儀式よ!」
開口一番、自信満々にそう言い放ったアハトの脇腹をすかさずソフィがどついた。
「じ、人体実験・・・」
「人体実験じゃないの!」
「もう少し確実な方法でやってほしいな!!」
ツヴァイが苦笑しながら呟き、フィーアとアインもしっかりと突っ込みを入れる。
「いやあ、すまないすまない、間違えた。
今回の儀式はじいさんの協力の元、絶対成功すると思うぞ。」
わざとらしく言いなおしたアハトを全員がじと目で見るが、当人は素知らぬ顔をしている。
アインとソフィが戻ってきてから、5人は再びツヴァイの部屋で情報交換をしていた。
「儀式に最適な時間は明日の夜、満月が空に昇る頃だね。」
「その時間が魔力が一番強くなるっておじいちゃんが言っていたの。」
ツヴァイが皆にそう伝えると、隣でフィーアもにこにこしながら頷く。
儀式は明日の夜、グレイの屋敷内で行うことになっていた。
今日一日かけて必要な道具の整備を行い薬品なども揃え、実験の概要はまた改めて説明してもらうことになっている。
「明日になればまた詳しい話があるだろう。
ところでそっちはどうだったんだ?何かあったのか。」
アハトが話を振ると、ソフィが渋面になりながら答えた。
「何かあったも何も・・・この街に、どうやらゼクスが来てるみたいなのよ。」
「なん、だと・・・!?」
その報告にアハトが声色を全く変えないまま、わざとらしく驚愕している素振りを見せる。
「あんた、言葉だけ驚いた風に言うのやめなさいね。」
「いやあ、前にも会ったことがあるから特に何も感じなかっただけなんだ。」
アハトがはっはっはと笑っているのを見て、ソフィは疲れたようにため息をついた。
「ゼクス・・・ってNO.6のことかい?」
別の派閥で造られた実験体の名前が出てきたことに嫌な予感がしたのか、ツヴァイが確認するように尋ねる。
「ええ、ゼクスはナンバーズの中で6番目に当たる人物よ。」
「それって、さっきの下水道と関係があるのかな?」
アインもまだ状況がわかっていないので、さっそく質問した。
先ほどの出来事で破棄されていた施設が起動していたことはわかったが、それがどういうことなのかまではアインには理解できていない。
「それも説明しようと思ってたんだけど、施設に繋がっている下水道に殺された人間が多数いたのよね。
それも、つい最近のことみたいなの。」
遺体のほとんどがまだ腐敗が始まったばかりものか、殺されて間もないものばかりだった。
となれば、その犯人がこの街に来たのはここ最近の出来事ということになる。
「僕たちに少し遅れてゼクスが来たってことは、少なくとも僕たちがこの街に潜んでいることはすでに組織に知られているってことかな?」
「その考えで合っていると思うわ。
詳しいことは分からないけれど、組織には私たちが裏切ることが分かっていたみたいね。」
ツヴァイの冷静な仮説に対して頷いてから、ソフィはふうっと憂鬱そうにため息をつく。
「ゼクスは常にフェンフと行動を共にしているの。だからフェンフも来ている可能性が高いわね。」
「いったいどんなやつらなんだい?」
以前、NO.5とNO.6については少し話に出ただけだったのでアインは改めて尋ねた。
「そうね・・・ナンバーズの5番目であるフェンフはアインを軽く超える大男よ。
私も遠目にしか見たことがないんだけど、いつもフルフェイスのアーマーをがっちがちに着こんでいて素顔は見たことがない。」
「なるほど・・・それはいればわかるだろうけど。ゼクスの方はどんな人物なの?」
アインを超える大男ならば、街にいるだけで目に付くのですぐに見つけられるだろう。
ならば問題はゼクスの方だと判断したツヴァイが質問すると、ソフィは明らかに嫌そうな表情を浮かべる。
どうやらあまり好ましい人物というわけではないらしい。
「ゼクスは・・・ぱっと見は普通だけど正直フェンフより性質が悪いわ。
殺人快楽者っていうのかしら、にこにこ笑って話していた相手の頭を、次の瞬間には錬金銃で打ち砕くような嫌な奴よ。」
「それは・・・確かに仲良くなれそうにないな。」
大変わかりやすい説明に苦笑してから、ツヴァイは不安そうにしているフィーアの頭を撫でる。
「大丈夫だよ、フィーア。」
「うん。」
そんな2人の様子を見ながら、ソフィはどこかすまなさそうに例の資料を取りだした。
「実は・・・こんなものを見つけちゃったのよね。」
受け取った資料に目を通したツヴァイは、あからさまに顔色を変えて厳しい表情になる。
「これは・・・!?」
「僕たちの弱点が書いてあるみたいなんだけど・・・」
「いや、兄さん、僕たちの弱点なんてどうでもいいよ。それよりもフィーアの方が問題だ。」
ツヴァイにとって、自分の身体ことや賢者の石の位置を予測しただけの情報などどうでもよかった。
フィーアに関する資料には、エルフ族に効く即効性の毒の情報が記載されていた。
それはつまり、敵がその物質を持っている可能性が大きいということだ。
「ゼクスは遠距離から相手を狙撃する戦闘タイプの人物よ。
これに書いてある物質で作った弾を持っている可能性は、ゼロじゃないわね。」
もしその物質を含んだ弾丸を撃ち込まれた場合、たとえ急所を外していたとしてもハーフエルフであるフィーアは書いてある通りに即死するだろう。
「そんなこと絶対にさせない。僕は今からグレイさんと相談してくるから皆はここにいて!」
「ツヴァイ!」
部屋を飛び出していったツヴァイの後をフィーアが追いかけようとすると、アハトがそれを止めた。
「まあ待てフィーア。
おまえが今ついて行ったところで何もできないだろう。
それだったら明日のツヴァイの儀式がうまくいくようにするのがお前の仕事じゃないのか?」
「うん!」
その言葉にフィーアは素直に頷いて、クマのぬいぐるみを抱きしめる。
「私にも何かお手伝いできるのかな?」
「フィーアがそう言うだけで、じいさんは喜ぶだろうよ。」
フィーアに実際どの程度のことが出来るかはわからないが、手伝いを申し出るだけでグレイが喜ぶだろうことは容易に想像がついた。
「僕はあのおじいさん、グレイさんはとてもいい人だと思うんだ。
だから改めて僕たちのことを話そうと思うんだけど、皆どうかな?」
ここに来た時に本当のことが言えなかったことを、アインは気にしているらしい。
グレイは自分たちがここに来てからずっと儀式のための準備をしてくれている。
信用できる相手だと分かった今、アインは本当のことを隠しておく必要はないと感じたようだ。
「まあ、俺はじいさんには最後は華々しく散ってもらいたいとは思ってるぞ。」
「言っておくけど、変なことしたら本気で怒るからね!?」
アインの提案に対して不穏な発言をするアハトのわき腹を、ソフィがぐーで殴った。
「僕はせっかくだからグレイさんも一緒に僕たちと来てもらおうと思ってるんだ。」
「私もそれが良いと思うわ。
ゼクスたちがこの街に来ている以上、彼を置いて行くことはできない。
私たちと関係があったと分かれば彼は間違いなく始末される。」
どうやら、アインとソフィの意見は既に決まっているらしい。
そんな3人を交互に見た後、フィーアが明るい表情で尋ねた。
「おじいちゃんも家族になるの?」
「・・・そうね、家族になれるかどうかは分からないけれど、しばらくは一緒にいられるようにしたいと思っているわ。」
せめて安全な場所にグレイを連れて行くまでは、一緒にいることになるだろう。
「じゃあ、私もいっぱい頑張るから。」
フィーアにとっては、グレイもすでに家族の一人になっているらしい。
「それじゃあ、そのことは後でグレイさんに伝えましょう。
ツヴァイはすぐには戻ってこないでしょうし、私たちも明日に備えてそろそろ休んでおかないとね。」
ソフィがそうまとめて、この日は解散となった。
次回、新キャラ登場予定です~☆




