ホムンクルスの箱庭 第2話 第3章『廃墟の施設』 ①
すいませんおそくなりました~(´;ω;`)ウッ…
読みやすくするために1日2回更新にしたのに今回は結局文字数が多くなってしまいました(´-ω-`)
本日なんとか2回目の更新です~(/・ω・)/
「おい、小僧、起きているか?」
ツヴァイが言われたとおり2階の部屋で休んでいるとドアを叩く音がする。
誰の物かはわからないが、かわいらしい人形などがいくつも置いてある日当りのいい部屋。
グレイの部屋ではないのは見れば分かったが、綺麗に掃除がされ窓が開け放たれていた。
窓からは街の時計台や水路を眺めることが出来る。
そんな落ち着く空間で長旅の疲れが出たのかちょうど眠りかけている時だった。
「・・・っ!はい!」
何かあったのかと慌てて身体を起こすと、ガチャッと無遠慮にドアが開いてグレイが部屋の中に入ってくる。
「お主に聞きたいことがある。」
「なんでしょうか?」
儀式のこと、心臓病のこと、聞きたいことはおそらくいくらでもあるだろう。
何を聞かれるのか予想し、ある程度納得してもらえそうな回答をツヴァイが頭の中で選んでいると、グレイは思ってもみない言葉を口にした。
「フィーア嬢ちゃんの年齢にそぐわない異常なまでの幼さのことじゃ。」
「・・・・・・」
いきなり出されたフィーアの名前に、当然ながらツヴァイはあからさまに警戒した様子を見せた。
なぜこのタイミングでフィーアのことが出てくるのか。
様々な考えが一瞬で頭の中を巡る。
この老人がアルスマグナと繋がりがあるという可能性。
組織の追手である可能性、あるいは待ち伏せされた可能性。
いくつもの選択肢が頭の中に浮かんでは消えていく。
「そう警戒しなくてもいいわい。
別に危害を加えるつもりはさらさらないからのう。
むしろその逆じゃ。」
真意がわからず値踏みするように見るツヴァイに、やれやれとため息をつきながらグレイはベッドサイドにある椅子に座る。
「あの子の不自然なくらいの幼さ、あれは何が原因なんじゃ?」
出会った時から感じていた違和感をグレイは感じたまま言葉にした。
最初、フィーアを見た時に確かに自分がかつて大切だった人物に似ていると思った。
だが、見たところ16,7歳といったところのフィーアと当時10歳だった少女が重なって見えたことを不思議に感じた。
いくら似ている、といってもそれだけの年齢差があれば感覚的に何かしら大きな違いはあるはず。
しかし、その疑問は先ほどのやり取りで解けた。
料理を作っているときのちぐはぐさだけではない。
ツヴァイが彼女にとってどんな存在なのかを確認したとき、彼女はただこう答えた。
ずっと一緒にいたい相手だと。
照れ隠しに言葉を選んだという風でもなくただ純粋に。
助けるために、外法に手を出しても構わないと思えるほどの相手に対してだ。
いつだったか、孫娘が自分に。
『ずーっとずっと一緒にいようね!おじいちゃん!』
そう言った時と同じように。
16,7の思春期の少女の言葉にしてはあまりにもそれっぽくない。
それでようやく理解した。
彼女は見た目よりも中身がだいぶ幼い、まるで10歳前後の子供のように。
「それは・・・」
「お節介かもしれんがあの子の様子は不自然じゃ。
純粋で穢れがない代わりに、大切な部分がごっそりと削り取られておる。」
「・・・フィーアは記憶喪失なんです。」
「記憶喪失だあ?そんな生易しいもんじゃないじゃろうあれは。」
はっきりと言われてしまいさすがのツヴァイも沈黙してしまった。
ツヴァイにもわかっている、フィーアのあの状態が単なる記憶喪失とは違うということは。
だからこそ、仲間である他の3人にすら伝えることができずにいるのだから。
「なあ、小僧。
おまえはあの嬢ちゃんを大切にしておるんじゃろう。
フィーア嬢ちゃんの一生懸命な様子を見ればわかる。
じゃが、大切にしすぎて踏み込めないままでは嬢ちゃんは壊れたままじゃぞ。」
「・・・っ!」
壊れたまま、その言葉が深く心に刺さった。
やはり、他人の目から見ても、今のフィーアは壊れているのだ。
「お主一人でなんともならないというのならわしも力を貸してやろう。
今の嬢ちゃんは錬金術師のはしくれとしても見ていて気持ちのいいものではないわい。」
思わずうつむいたツヴァイに、グレイは今までよりもほんの少しだけ優しい声で話しかける。
「どういう経緯かは知らんが、おまえはわしに命を預けるつもりでここに来た。
ならば、少しは信用してくれてもいいんじゃないかのう。」
ツヴァイは少しの間考えてから、ようやく顔を上げて言葉を口にする。
「・・・今の僕のままではフィーアを守ってあげられない。
だからせめて僕が竜の宝玉とバイパスを繋げるまでは待ってください。」
「ほう?」
「僕たちはある組織から狙われています。
そして、フィーアはそいつらの陰謀に巻き込まれてああなってしまいました。」
「その組織というのは?」
質問に対し、ツヴァイは迷うことなく組織の名前を答える。
「アルスマグナ。
表向きは世界に貢献する錬金術師たちの組織ですが、実際は組織的に人体実験を行っている犯罪組織なんです。」
ツヴァイにとってその言葉は一種の賭けであり、グレイを試すためのものでもあった。
アルスマグナと繋がりのない錬金術師と言っても、仮にも錬金術を行うものにとってアルスマグナはなくてはならない組織だ。
いきなりそんなことを言ってこちらの言葉を果たして信じてもらえるのかという心配もある。
だが、逆に言えばもしグレイがアルスマグナと少しでも繋がりがあるのなら、彼は必死にそれを否定してくるだろう。
そんなはずはない、アルスマグナは錬金術師たちのための組織で世界に貢献している立派な組織だと。
それだけ、アルスマグナの組織に属する錬金術師たちに対する支配力と恩恵は大きいのだ。
彼の反応次第で、自分がこれからどうするのかが決まる。
「まさか・・・アルスマグナが!?」
そんなツヴァイの思惑を知ってか知らずか、グレイは当然のように驚いた表情をした。
しかし・・・
「いや・・・錬金術自体が何かと等価交換を求められる術じゃからのう。
その最たるところにある組織が、まともなだけであるはずもないか。」
組織の名前に一瞬驚いたようだったが、すぐに納得したかのようにそう言った。
どうやらこちらの言葉を信じてくれるようだ。
そして、それは同時にグレイがソフィの言っていたとおり、アルスマグナとの関係を持たない錬金術師であることを示していた。
「なるほどのう、お主らが一種異様な空気をまとっているのはそのせいか。
それで?おまえが動けるようになると何がどう変わるんじゃい?」
ツヴァイがまっすぐに目を見ると、それに対してグレイも目をそらすことなく見つめ返した。
それによってグレイが信用に足る人物だと判断したのか、ツヴァイは静かに口を開く。
「僕は、アルスマグナで造られた賢者の石の実験体です。」
「そうじゃな。
フィーア嬢ちゃんから聞いておる。」
フィーアが懐いている時点で、そして今回儀式を行うことによってそのことが知れるリスクくらいは、初めから織り込み済みだったようだ。
ツヴァイはグレイの返答に特に驚いた様子はなく話を続けた。
「今はまだ身体に負担がかかりすぎて自分の能力を使うことはできませんが、ある程度安定すればその力で皆を守ることができると思っています。」
「ほほう、してその力とは?」
「それは・・・」
言い淀むツヴァイにグレイはにやり、と笑った。
「言えないのであれば、わしも手を貸すことが出来なくなるかもしれないのう。
何しろわしが信用されていないのでは、うまくいくはずの儀式も成功などせん。」
「・・・あなたの言う通りです。
ですが、それを知ればあなたもアルスマグナに狙われることになるかもしれない。
それでも知りたいですか?」
組織ですら解明していないツヴァイの能力について一般人であるグレイが知り、そのことが組織に知られてしまえば、彼は口封じのために命を狙われることになるかもしれない。
「老い先短いじじいが命を狙われたところで、痛くも痒くもないわい。」
「そうですか・・・わかりました。」
グレイの覚悟を知り、ツヴァイもまた覚悟を決めることにした。
自分にはもうこの儀式を成功させる以外に、生きる道がない。
たとえ一時凌ぎだとわかっていても、この儀式を成功させなければならないのだ。
そのためにはグレイの信頼を得なければならない。
それならば、この人物に自分の能力を教えることもまた必要経費だと。
「フィーアの持っているぬいぐるみはご覧になりましたか?」
「ああ、大事そうに抱えておるからのう。
しかし、あのぬいぐるみがどうしたというんじゃい?」
また少し考えるようにしてから、ツヴァイは真顔でこう伝える。
「あのぬいぐるみの中には鳩が住んでいます。」
「ほ、ほほう?
それはまたずいぶんとユニークなぬいぐるみじゃのう。」
ぬいぐるみに鳩が住んでいるという様子を、グレイは思わず想像してしまった。
巣の代わりにしているとでもいうのだろうか?
クマのぬいぐるみのおなかに巣篭っている、なんともファンシーでかわいらしいものを思い浮かべる。
「鳩は中の草原で2羽で暮らしていて、最近ヒナが誕生しました。」
「それはずいぶんとめでたい・・・って、お主何が言いたいんじゃ!?
ぬいぐるみの中に草原があるとでもいうのか!」
さすがにわけが分からずグレイが混乱すると、ツヴァイは迷うことなく頷いた。
「僕の能力は空間に干渉し、別の空間を作りあげることができます。
あのぬいぐるみの中には、僕が作った亜空間が存在しているんです。」
「なん・・・じゃと・・・!?」
言葉を正確に理解したグレイは、驚愕の表情を浮かべる。
「おぬし・・・それはもう錬金術などという生易しいものではなく、まさに神の領域ではないか!?」
空間を操る能力などグレイが知る限りでは人間のできる範疇を・・・いや、生物のできる範疇を超えていた。
シルフ族の移動魔法ですら瞬時に移動するわけではなく、姿を風に変えて目的の場所までわざわざ移動しなければならない。
もちろん、風の速さと同じなのだから歩いて移動するよりはずっと早いおまけに人間には出来ない芸当ではあるのだが、空間を創るとなるとそれを遥かに上回る所業だ。
「ええ・・・だからこそ僕はこの能力を組織に悟られることなく、単なる失敗作としてこれまで生きてきました。
この力は僕の大切な者のために・・・フィーアのためだけに使おうと誓いあのぬいぐるみ以外に僕の力を使ったことはありません。」
もしこの能力の存在を組織が知れば自分は多くの実験を繰り返され、組織にいいように利用され、皆と共にいることは叶わなくなっていただろう。
それを回避するために、ツヴァイは自分の能力を封印し続けてきた。
賢者の石が不完全であることによって、力を使う代償が思っていた以上に大きいことも、あのぬいぐるみの中に空間を創った時に知っていたので使うこともできなかった。
だが、組織から追われている今は、そんなことを言っている場合ではない。
フィーアを守るのは自分だと、幼い頃から決めているのだから。
「竜の宝玉の儀式で安定すれば、その力を使って組織から嬢ちゃんたちを守れるというわけか。」
「ええ・・・フィーアを守れるようになったその時には、僕はフィーアの欠けてしまっている部分を取り戻すために全力を尽くします。」
自分の身体ことももちろんあったがフィーアを取り戻すために、そしてこれから先ずっと守るために、あの時、竜と戦うなどという危険な賭けに出たのだから。
「・・・なるほどのう、わかった。
それならばわしもその儀式に力を貸してやろう。
その代わり小僧、身体が治ったその時には、全力でフィーア嬢ちゃんを助けるんじゃぞ。」
「もちろんです。」
力強く頷いたツヴァイを見て満足したのか、グレイは椅子から立ち上がって部屋を出て行こうとする。
「話はそれだけじゃ。そうそう、これから夕飯を作るがお主好物はなんじゃ?」
「好物、ですか?そうですね、フィーアが作る物なら何でも。」
「・・・似た者同士め。2人して難問を押しつけおって。」
にこっと笑って答えたツヴァイに対し軽いため息交じりに言うと、グレイは苦笑しながら部屋のドアを閉めた。
やっと出てきたツヴァイのチートっぽさ(*'ω'*)




