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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第5話 第8章『白銀の獅子』 ③

この物語もいよいよクライマックスとなりました(`・ω・´)

具体的には今週の土曜日まで更新すると、無事最終回を迎えます( *´艸`)

最後まで頑張りますので、温かく見守っていただけると幸いです。

 戦いは拮抗していた。

 アハトが毒を拡散させるグレネードを駆使して触手にダメージを与え、アインとドライがその隙に本体に攻撃を仕掛ける。

 さらに、ソフィの回復魔法だけでは間に合わない時にはツヴァイが力を使って致命的な傷を癒し、触手の攻撃をノインとツヴァイ、ソフィが防ぎ一斉攻撃が来ればフィーアがそれを凍りつかせる。

 それぞれの役割をこなすことによって、7人はヌルに対抗しているものの決定的なダメージを与えることができない。

 全くダメージを与えていないわけではないのだが、その分消耗も激しい。

 とはいえ、ぎりぎりの状態ではあるが、今のままであれば戦いを続けることは可能にも思えた。


 しかし・・・


「く・・・っ!」


「蒼ちゃん!」


 ヌルの攻撃からフィーアを庇ったツヴァイがよろめいた。


「フィーア、ツヴァイを連れて一度後ろに下がれ!!」


 ノインが襲いかかる触手から2人を守りながら叫んだ。

 その隙に、フィーアはツヴァイを連れてヌルから離れる。

 追いすがるように向かった触手を、アハトのグレネードが爆破した。


「ツヴァイ、無茶はしないで。」


 駆け寄ったソフィがツヴァイの傷を癒すが、すぐに触手たちがまた襲いかかってくる。

 それだけではない、ヌル本体も先ほどからブレスを放ちこちらの動きをかく乱していた。

 アインとドライが本体の傍に取り残され、他のメンバーが触手と戦いつつもそれを援護する形となる。


「ドライ!!」


 ドライに向かって振り下ろされた爪による一撃を、アインは刀を使ってそらした。

 だが、その切っ先が腕をかすめアインがよろける。


「アイン・・・!行きなさいフェンリル!!」


 それを見たドライは、動揺しつつもフェンリルを召喚しヌルの前足に喰らいつかせる。

 一振りでフェンリルをなぎ払ったヌルは、そのままアインに襲いかかった。

 アインは寸前でそれを避けるが、足元の地面が砕ける。


「アハト!アインの傷を直すわ、援護をお願い!!」


「了解だ。」


 このままでは不利だと悟ったソフィがアインたちに駆け寄ろうとするのを、アハトがグレネードで援護した。

 ヌルに向かって投げつけられたグレネードが爆発し、その動きを鈍らせる。

 少し離れた場所からソフィがアインに回復魔法を使って腕の傷を癒した。


「ありがとうソフィ!」


「ええ、アインはドライと一緒にヌル本体をお願い。その代わり、援護は私たちに任せなさい。」


 それに対して、アインとドライが同時に頷いてみせる。


「私たちに任せなさい!!行くわよアイン!」


「おう!!」


「フェンリル、援護しなさい!!」


 フェンリルたちはドライの命令通り、アインの攻撃をサポートするように動いた。

 直接獅子に攻撃を加えるのではなく、攻撃しようとしたところを邪魔したり、アインに襲い掛かる触手に食らいついたりと器用に動いて見せる。

 だが、その分アインの肩でフェンリルたちを具現化し操っているドライにも疲労の色が濃い。

 もともと消耗の激しい魔獣の召喚を連続して行い、その上、細かい指示を与えているのだから当然と言えば当然だろう。

 しかし、一言も弱音を吐くことなくドライは戦い続けていた。


「アイン、私の悪意をぶつけてやりなさい!」


 さらに自身の能力を乗せて、アインの攻撃がヌルに届くように援護する。

 そんなアインたちの戦いを見て、ヌルが嘲笑うかのように言った。


『だいぶ苦労しているようじゃないか、アイン。

 家族を守るはずのおまえが、守ることよりも俺との戦いを優先するとはな。』


「家族っていうのは、誰か一人が守ろうとするのではなく互いに守り合うものだよ兄さん。

 僕は確かに今、兄さんの攻撃から皆を守り切れてはいない。

 だけど、僕は兄さんと戦うことによって皆を守っているんだよ!」


『ほう、ならばおまえの代わりに家族を守っている盾が失われた場合はどうなるのかな?』


 にやりと笑ったヌルが吠えると同時に、ツヴァイの足元が消えた。


「く・・・っ!!」


「蒼ちゃんっ!!」


「させるか!うおおおおっ!」


 触手を相手にしていたアハトが、自分の身も顧みずにツヴァイの近くにグレネードを放つ。

 その爆風によってツヴァイが吹き飛ばされ、穴から現れた触手はむなしく空を掴んだ。


「アハト後ろ!!」


 ソフィの声に、アハトが振り向いた。

 とっさにソフィが風の防壁が張り、鋭い刃の切っ先がアハトのローブをかすめる。


「くっ!俺はもう生身なんだぞ・・・!?だから、触手ぷれいはかんべんなー。」


「そんなことを言っている場合か!?何か来るぞ!!」


 ノインが叫ぶと、全員が互いを守り合おうと視線をかわす。


「ソフィ!」


 ソフィを庇ったアインの身体が、見えない刃に切り裂かれ血が噴き出す。

 ツヴァイはアインの傷を癒すために駆け寄ろうとするが、背中にぞくっとした寒気を感じてフィーアの方に視線を送った。


「フィーア!!」


 見えなくても分かる、何かの力がフィーアに向かって襲いかかろうとしていた。


「そんなことさせない!!」


 フィーアを守るように前に立ったツヴァイがとっさに時空の盾を張るが、見えない攻撃がそれを砕き身体を貫く。


「蒼ちゃん!?」


「かは・・・っ!」


 身体中を切り裂かれて、ツヴァイが膝をついた。

 さらにそれに追い打ちをかけるように、不可視の力がツヴァイを噛み砕こうとする。


「やらせないっ!!」


 ソフィを庇って傷を負っているはずのアインが、ツヴァイを守るために間に走り込んだ。


「ぐう・・・っ!!」


「兄さん!!」


「アイン!!」


 攻撃を喰らい血を吐いたアインがよろめき、それを駆け寄ったドライが支える。


「ごめん兄さん、僕がもっとちゃんとしていれば・・・」


 自分を責めるツヴァイにアインはにこっと笑うと。


「ツヴァイだけに皆を守る役目を押し付けたりはしない。互いに守りあってこその家族だろう?」


 アインは心配そうに支えるドライに向かって頷き、刀を構え直す。

 それを見たドライは、何も言わずにアインの刀に自分の力を乗せることで応えた。


『さて、なかなか面白くはあったが、そろそろ潮時なんじゃないかアイン。』


 ヌルも傷を負い血を流していたが、それでもまだ余裕のある声が聞こえてきた。

 白銀の獅子が空気を震わせるような咆哮を上げると、その身体がまばゆく輝きだす。

 それに呼応するように、辺りの肉壁のあちこちが光を放ち始めた。

 何をするつもりかは分からないが、これをまともに食らったらひとたまりもないということだけは分かる。


「ここは僕が・・・く・・・っ!」


 力を行使しようとしたツヴァイが、胸を押さえてうずくまった。


「だめ、蒼ちゃんこれ以上は!」


「でも、僕がここでやらなきゃ・・・!」


 無理やりに立ち上がろうとするツヴァイを止めたのは、ソフィだった。


「ツヴァイ、誰かを守りたいと思うのはあなただけじゃないわ。

 私にだってその権利はあるはずよ・・・今はそれを譲ってくれないかしら?」


「ソフィ・・・」


「あなたは何でも一人でやろうとしすぎなのよ。たまには、家族に・・・お姉さんに頼りなさい。」


 にこっと笑うと、ソフィは風の防壁を展開した。

 それはいつもとは違い皆を守るのではなく、攻撃をしようとしている光る壁の前にいくつも現れる。

 どうやら、発動する前に抑え込む算段のようだ。

 両手をかざし、全力で魔力を注ぎ込もうとするソフィを見てアハトが叫んだ。


「フィーア!ソフィの防御結界に重ねるように氷で結界を作るんだ!!」


「え?え・・・?!」


「いいから、俺の指示通りにやってくれ!」


「うん!」


 アハトに言われるがままに、フィーアが紋章陣を形成し瞬時に氷の結界を張り巡らせる。

 すると、先ほどアインの精神世界で食器を・・・皆の体を作り直した時と同じように、アハトの胸元が光ったかと思うと氷の結界がその形を変えた。

 ほぼ同時に、ヌル本体と部屋中から放たれた光が全員の身体を貫こうとしたが。


『馬鹿な・・・!?光が当たらないだと・・・?』


 壁と本体から放たれたレーザーのような光が部屋中を貫き、全員を撒きこもうとしたものの、全ての光がギリギリのところで当たらない。

 アハトに作り替えられたフィーアの氷の結界が、その光を乱反射して拡散していた。

 

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