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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第5話 第3章『避難キャンプの英雄』 ②

今日からまた金曜日までがんばります(*ノωノ)

「じゃあアイ・・・犬、買い物に行くわよ!てか、アインて言っちゃったじゃない!!」


「おーう!」


「というわけで、私たちは出掛けるわよ。」


 アインをひきつれてドライが買い物に行こうとすると、フィーアがそれを見送った。


「いってらっしゃ~い。」


「良い子にして待ってなさい!」


「うん♪」


「その代わり、後でいじめてあげるわ!」


「なんでー??」


「あんたの嫌いな、辛い物を買ってきてやるわ!!」


「わ~ん、食べたくない~!」


 涙目でそう言ったフィーアを気分良さげに眺めてから、ドライは買い物に出かける。


「フン、下々の者たちが暮らすところは滑稽ね。」


 悪ぶってそんなことを言うドライに、アインが話しかけた。


「ドライも買いたいものがあったんだ?」


「あるわけないじゃない・・・なんとなくよ!

 あんたと出かけたかっただけよ!なんか文句あるの!?」


 誰かがその場にいれば、まるでデートに誘っているようなその発言に突っ込みを入れているところなのだが、残念ながらここにはアインしかいない。


「よかったら僕が行きたいところがあるんだけど、一緒についてきてくれる?」


 ドライのとんでも発言をあっさりとスルーしたアインは、そう切り出した。


「あんたが私にお願いするなんてしょうがないわねえ。叶えてあげるわ、感謝しなさい!」


「ははー!」


 いつも通りの高飛車な態度で答えたドライに、アインは女王陛下に従うようにそう言った。


「で、どこにいくのよ?」


「実はね、この戦いが終わった後にみんなで食事をするのに、食器を買おうと思ってさ。」


「そうねえ、でも食器の良し悪しなんて私にはわからないわよ?」


「君が気に入ればそれでいいと思うな。皆で楽しく食事をするために、人数分きっちり食器を揃えないと。」


「しょうがないわね、つきあってあげるわ。」


 2人は避難キャンプの中を移動しながら、食器を扱っているお店に向かった。

 避難する際にいくらかの商品を持ってこれた者もそれなりにいるらしく、小さな市場らしき場所には他にも武器防具を扱うお店や雑貨屋などが出ている。


「へい、らっしゃい。」


 食器を扱っているお店は、意外と早く見つかった。


「正直、こんな仮店舗で悪いけどよ、うちはいつだって店をやってるぜ!品ぞろえも悪くはないはずだ。」


 店主がそう言って、お勧めだという食器をいくつか出してきてくれた。


「ドライ、これなんてどうかな?」


 そのうちの一枚を手に取り見せると、ドライは別の食器を指さして言った。


「私はこっちの方がいいわ。」


 その食器には、犬の絵が描かれている。


「フフン。あんたみたいでいい感じじゃない。

 こいつにこう・・・熱いスープかなんかを注いでやって、熱がらせてやるわ!」


「そっか、じゃあこれを買おうかな。」


 苦笑しながらもアインはそのお皿を手に取った。


「それは私が使うから、あんたはこの紅い花の模様が入ったやつを使いなさい。」


 ドライが指さした先にあるお皿には、花の模様が描かれていた。

 その花の色はまるでドライの髪の色のように見える。


「これって・・・ドライに似てるね。」


 そのことにアインも気づいたのか、そんな風に言いながら大事そうにお皿を手に取った。


「違うわよ!別に私の髪の色に似てるからとかじゃないんだからね!

 たまたま選んだだけよ文句があるの・・・!?」


「いや、かわいいよね。」


「な、なな、何言ってるのよー!?」


 にこっと笑ったアインに、ドライは顔を真っ赤にして慌てている。

 それから2人は、皆のイメージに合うお皿を一緒に選び始めた。


「ああ、待ちなさい。

 フィーアにはその銀色の動物の絵が入ったやつにしなさい。その方が喜ぶわ。」


 それはデフォルメされた銀色の狼か犬が描かれたお皿だった。

 その瞳はたまたまなのか蒼い色をしている。


「ドライがそう言うなら・・・」


「・・・ああ!やっぱやめたー!」


 言った後でむーっとした表情をしていたドライは、慌てて他の食器を指さす。


「ええ!?」


「こっち側の虫みたいなのが描いてあるやつにしなさい!」


「じゃあこっちにしよう。」


 アインは迷わずに動物が描いてある方のお皿を選ぶ。


「あのツヴァイとかいう馬鹿には、あの金色の縁取りに紅い花の描いてあるお皿とか、絶対ダメなんだからね!!ちなみに、そういうのはあそこにあるから!」


 そう言いながらドライが指さした先には、可憐な花の描かれたお皿が置いてある。

 ドライのセレクトに従って、アインはにこにことしながら家族分の食器を集めて行く。

 それはまるで、大切な宝物を集めるているかのようだった。

 食器を買い終わると、ほくほくとした表情でドライは嬉しそうに言った。


「フフン、買ってやったわ。」


「皆で食事するのが楽しみだね!」


「そうね・・・じゃないわよっ!フィーアの食べ物を奪ってやるのが楽しみね!」


 相変わらず素直ではないドライの隣では、アインが笑っている。

 その様子を見ていた店主が話しかけた。


「ずいぶんと若い夫婦だけど、子供たちの食器でも集めてるのかい?

 こんな時に大変だとは思うけど頑張るんだぜ。」


「ちょっと!?あんた何言ってるのよ!」


「ははは、奥さん元気だなあ。」


 真っ赤になって文句を言うドライの言葉は、店主には届いていないようだ。


「あんちゃんもこんなかわいい奥さん大切にしろよ?」


「ええ、大切にしますよ。」


 意味をちゃんと分かっているのかいないのか、アインは笑顔で頷く。

 食器を購入して移動した後、ドライは睨みつけるようにアインを振り向いた。


「まったく、あんたのせいでひどいことを言われたわ!

 超はずかしかったじゃない・・・次言う時は、ちゃんとかっこよく言いなさい!」


「ああ、がんばるよ!」


 夫婦であると勘違いされた部分は、2人にとっては別にかまわないらしい。

 ふうっとため息をつくと、ドライは不意にこう言った。


「そうね・・・あんたにはこれをあげるわ。」


 ツインテールの片方を結んでいるリボンをほどくと、ドライはそれをアインの腕に結んだ。


「私が傍にいるからあんたはどんなピンチになっても負けないっていう証明にしなさい。

 あたしが傍にいれば、あんたは無敵でしょう!」


「うん、心強いよ。」


「その間、私はこうしておくわ。」


 もう一つのリボンもほどくと、ドライは髪をポニーテイルに結いあげた。


「全部終わってその食器を使う時になったら、返しなさいよね。」


「うん、必ず返すよ。」


「ええ、そうなさい。ちょっとはかっこよくなってきたじゃない。

 なんだかいじめてやりたくなってきたわ。」


 それはドライにとって、アインが大切な存在であると感じ始めている証拠だった。

 当人がそれに気付いているということはなさそうだが。


「じゃあ、帰るわよ犬!」


「わん!!」


 犬と言われたのでアインがそう答えると。ドライが文句をつける。


「たまには、アインらしくもしなさい!」


「おーう!」


 そんなアインの腕を引っ張って、ドライは皆のところに戻って行った。


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