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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第4話 第4章『箱庭の子供たち』 ⑦

アルケンガー戦はこれで終わりとなります(`・ω・´)

「く、だがここで私はチェ~ン○ゲット!!」


 ノインが叫ぶと同時に、アルケンガーのパーツが足の部分、胴の部分、竜の頭の部分の3つにわかれて変形し、合体し直そうとした。


「おまえの行動はお見通しだああ!!」


「おのれアハトー!お約束を破る男め!?

 しまったあ!変形中は何もできない、しかも食らったらすごく痛いんだからな!!」


 変身中に攻撃してはいけないという約束をやはり約束通り無視したアハトのグレネードが、変身中のアルケンガーに炸裂する。


「くっそお!変身がうまくいけば中心でドラム缶型のUFOに乗った私がヤッホーする予定だったのに!?」


 言っていることは全く分からないが、とにかく変身が失敗して悔しいらしい。


「ぐあああ!主に私が超痛い!おのれぇ、アハト許さんぞ・・・!」


 爆発にもろに巻き込まれたノインは、恨めしげにアハトをにらみつける。


「ここは私が超かっこいいって、子供たちに尊敬される場面だったはずなのに!!」


 どうやらノインは、アインたちにかっこいいと尊敬されたかったようだ。


「再び私のターン!!行くぞアイン!」


「おう!!」


 どうにか変身を遂げて人型っぽくなったアルケンガーが、アイン目がけて攻撃しようとする。


「ふっふっふ、耐えてみせよ!」


「僕にはおじいさんとアハトが作ってくれたこれがある!」


「は!それは斥力場装置じゃないか!!」


 アインの小手から斥力場が発生し、再び打ち出されたパイルバンカーはいとも簡単にはじかれた。


「なにぃ!?私のパイルバンカーが効かないだと!

 最初の攻撃をはじいた時もそれを使っていたのか!?

 刀に見たこともない力が宿っている・・・いや、なんだかわかってるけど!!」


 分かっているのは当然だろう、斥力場装置自体を開発してフェンフにとりつけたのがノイン自身なのだから。


「だがわかっていても驚愕しておくのが礼儀!!」

 

「おーう、ありがとう!」


「斥力場フィールドをうまく使ったという点だけは評価しておこう!むしろ私ナイス!」


「にやり。」


 戦闘中だと言うのにアインとノインが仲の良い会話をしていると、それに割り込むように再びアハトがグレネードを投げ込む。


「アハト!おまえちょっとは空気を読むと言うことができんのか!!」


「ああん?聞こえんなあ。」


「くそ!今回の悪役は私のはずなのにおまえの方が悪役みたいだぞ!!」


 あまりにもグレネードの爆発に巻き込まれたせいか、アルケンガーがだんだんぼろくなってきた。


「今度は僕が行くぞ!」


「任せなさい犬!」


 アインの刀にドライが悪意の付与を行い、金色の炎と黒いオーラを纏った刀はアルケンガーの片腕を斬り落とした。


「ぐう!やるな・・・だが、この程度で私がやられると思うなよ?」


 ドライの悪意はアルケンガ―ではなくノイン本人に襲い掛かるが、彼はまだ倒れるわけにはいかないと言うようににやり、と笑う。

 戦況はナンバーズが優勢に思えた。

 しかし、長期戦になればアハトの持っているグレネードは尽き、さらに賢者の石の力を解放しているアインは消耗しきってしまう。

 そのことを予想してツヴァイがフィーアにこっそり耳打ちした。


「このまま長期戦になるのは好ましくないな。フィーア、僕に力を貸してくれるかい?」


「うん、どうしたらいい?ツヴァイ。」


 フィーアは言われたとおりの術式をくみ上げ、魔法を唱える。

 それと同時にアルケンガーの周りに突如現れた空間の歪みから、蒼い魔法陣が現れて氷の刃がいくつも降り注いだ。

 広範囲魔法を紋章術で強化したものを、ツヴァイが空間を操る能力でアルケンガーに集中させたのだ。


「さすがフィーア・・・!簡易的とはいえ紋章陣を使いこなし始めたか。」


「ツヴァイがいてくれれば、私はどんなことも頑張れるんだもん!」


 氷の刃はアルケンガーにダメージを与え、周りに突き立ったことによって行動を阻害する。


「ノイン!貴様のパイルバンカーは僕には効かない!」


「何を言うアイン!パイルバンカーはすごいんだぞ!」


「ところで、ぱいるばんかーってなあに~?」


 フィーアがノインに質問すると、彼は懇切丁寧に教えてくれる。


「うむ、フィーア。

 パイルバンカーとはな、こういった巨大な金属製の杭の根元を爆薬で爆発させて、その勢いを利用して相手に打ち込むというかっこいい兵器なのだ!」


「わあ、じゃあその根元でアハトのグレネードを爆発させたらきっともっとすごいね♪」


「ま、待つんだフィーア!

 それはいけない、なぜなら現在の耐久的にその爆発には腕が耐えられな・・・!?」


 その会話を聞いたアハトがそんな楽しそうなことを見逃すはずもない。

 わきわきと両手を動かしながら近づこうとすると、爆破されてはたまらないと思ったのかノインは慌てて攻撃方法を切り替える。


「仕方がない、フォトンキャノンを撃つぞ!アイン、私の最大火力を受けてみよ!!」


 そしてアインとドライに向けて、今度こそアルケンガーが胸のあたりからフォトンキャノンを放った。


「犬、私を守りなさいよね!」


 それを見て、ドライはさして慌てることもなくアインの肩をぺしっと叩く。


「任せてくれ!」


 斥力場を発生させたアインはこちらに向かって撃ちこまれたビームを、刀の一振りで反射させてノインに撃ち返した。


「ぐはあ!主に私のところで火柱がー!?」


 反射されたビームは見事に肩を貫き、アルケンガーはその場にがくっと膝をつく。


「危うくコックピットに直撃だったぞ!?」


「ご、ごめん・・・」


「セーフティ○ャッターはまだ搭載されていないんだ!気を付けてくれ!」


 あと少しずれていたら危険だったと大慌てするノインにアインは素直に謝った。

 それにかぶせるようにアハトが2発のグレネードを放った。


「貴様、ここにきてやたらと頑張るな!?」


 ノインはアハトの攻撃を避けようとするが、氷が邪魔をして避けられない。


「何、方法は違っても志は同じということだろう?」


「くそう!おまえそのたまにまともになる頭どうにかならんのか!

 しかも研究のライバルに負けるのは・・・!」


「ふはははは!どうだ、悔しかろう?」


 真面目なことを言ったその口で、誰が聞いても悪役としか思えないセリフを吐いたアハトの攻撃はアルケンガーを縛っていた氷ごと爆破する。

 辺りには砕けた氷がキラキラと空中に舞い、その視界を奪った。


「私の悪意がきらめくんだからねっ!!」


「そのきらめきは僕がノインに伝えるよ!!」


 すっかり息の合った連携攻撃で、アインとドライがアルケンガーに最後の一撃を叩き込む。


「ぐぬう!きらめいたああああ!!」


 派手な火柱と共にばらけたアルケンガーのパーツが、もう一度変身をしようとした瞬間だった。


「アルバートのおじちゃん!これ以上皆をいじめちゃダメーっ!!」


 フィーアが叫ぶと同時に足元に巨大な紋章陣が現れたかと思うと、アルケンガーの身体が下から凍結していく。


ビーっ!ビーっ!


 けたたましい警戒音が辺りに鳴り響いた。


「く、いろんなアラームがなりっぱなしだ!もはやこれまでか!?

 だが、私はおまえたちに最後まであきらめない力を見せてやろう。ぽちっとな。」


 完全に凍結する寸前で、ドラム缶型の脱出ポッドらしきものがスポーンと空に撃ちあがった。

 爆発の影響だろうか、ドラム缶からはみ出るノインの頭らしき部分がアフロになっている。


「マッドアルケミストに栄光あれー!!」


 真上に撃ちあがったドラム缶が、ロケットのように噴射して空中停止する。


「やはり力を合わせたおまえたちに悪役ごときではかなわないということか。

 しかし、おまえたちにはまだ足りない部分がある・・・。」


 急にまじめな声で語り始めるノインを、アインたちは見上げていた。


「まだおまえたちの知らないことが、おまえたちを待っているはずだ。

 それを知りたければ私の居城に来るがいい!主に場所はここだーっ!!」


 上からひらひらと一枚の紙が落ちてきて、アインがそれを受け取った。


「ふふん、おまえたちが本当に恐れる心を知らないと言うのならそこにくるといい!

 シーユーアゲイン!!」


 それだけ言い残して、ノインの乗ったドラム缶はどこかへ飛んでいく。


「なんてかっこいいんだ!」


『アルケンガーは自己修正機能が付いているから、放っておいてもそのうち修復するぞ!』


「え!?」


『おまえたちの好きに使ってみるといい・・・ただし武装は自分で手に入れてね!』


 最後にそんな声が聞こえた気がした。

 ドラム缶が空の彼方に消えキラーンと夕日を反射して消えた。

 第二のアフロの星となったノインを、6人はいつまでも見送っていた。


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