ホムンクルスの箱庭 第4話 第4章『箱庭の子供たち』 ⑤
この落差がこの作品のいいところ(ノ´∀`*)・・・のはず(´・ω・`)
「ダメね、ここには何も残っていない。
廃棄することを決めたときにデータの類は全て消去されてしまったみたい。」
錬金装置のパネルを操作しながら、ソフィがお手上げというように振り向いた。
「でもまあ、それぞれ得る物はあったようだな?」
アハトの言葉にアインが頷き、他の3人も互いに顔を見合わせた時だった。
キーンと何かが空気を裂いて飛んでくるような遠い音がして。
ズシン、ズシン、ズシーン!!
頭上に何か重い物がいくつか降り立った振動と同時に地下施設が大きく揺れた。
「来たか・・・」
それを聞いて、アハトが目を細める。
「はうう!」
「フィーア、僕に捕まって!」
地下施設全体がまるで地震のように大きく軋んだ。
研究室の壁の一部が崩壊し、そこから風が強く吹き込んでくる。
「ここはまずい、いったん外に出るぞ!」
崩れた壁の向こうには地上に続くと思われる階段があった。
正規の出口の一つのようだが、どうやら今の衝撃で地上で埋もれていたの瓦礫の一部が崩れたらしい。
ここを通って外に出ることができそうだ。
全員が階段を駆け上がり地下施設から抜け出したところで、とても聞き覚えのある声が響き渡った。
「ふーはははは!私参上!」
そこにあったのは4足の巨大な機械人形、いわゆるロボットと呼ばれるものだった。
10メートルもあるかと思われる身長の半分を形成している4つの巨大な爪で支えられた身体には、腕の生えた竜の半身といくつもの金属の棘のようなものが生えている。
「こ、これは・・・!」
「ふふふ、かっこいいだろう!これぞ私の新兵器!」
「な、なんだって・・・」
「あるけみ・・・いや、アルケンガーだ!!」
「か、かっこいい・・・!!」
アインがその姿を見てかっこよさにふるふると震えている横では、ソフィが口の端をひきつらせながらノインを見ている。
「私たちの感動を返しなさいよね・・・」
地下で日記を読んだ後の余韻は、ノインの笑い声と共に綺麗にどこかに吹き飛んでしまった。
「ツヴァイ、あるけんがーってなあに?歩けないの~?」
「アルケミガーだと語呂が悪いからアルケンガーにしたみたいだね。
まあ、大きさからするとあまり器用に歩けるようには思えないけど。」
「おじちゃん・・・相変わらずのネーミングセンスね。」
こちらもこちらでロボットに対してのそれぞれの感想を述べている。
「アルケミガー、もとい、アルケンガーのあまりの素晴らしさに声も出まいっ!!」
「もう1回言いなおしちゃったわよあの人。」
頭痛がするのかソフィが片手で顔を覆う。
「そして見よ!これは私が作った生体金属を合体させたロボット!
ナンバリングするならばNO.10!!つまりおまえたちの兄弟的な何かだ!」
「それって繋がりがあるの番号だけじゃないの!」
ソフィの突っ込みにも負けじとノインは胸を張る。
「ふふん、すごいだろう!もっとかっこいいって言っていいんだぞ!?」
ドヤ顔で自分の作ったロボットの紹介を始めたこの人物が、あの日記の持ち主だということ自体が怪しく思えてきた。
「貴様ら全員が力を合わせて戦うように、私もちょっと大型ロボを用意してみた!
ちなみに武器はフォトンキャノンとパイルバンカーを搭載している!!」
「なんかよくわからないけどかっこいい!!」
「それは素晴らしいな。」
それに対してアインとアハトがそう言うと、ノインはますます気を良くして説明を続ける。
「そうだろうそうだろう!
大型キャノンにパイルバンカーとくれば勝てる者などいない!」
「あの変態さん、どうして私たちにロボットさんのこと教えてくれるの~?」
「単に自慢したいだけでしょうね・・・」
「おまけに隠し腕もある!!これによって私は一度に2回攻撃することも可能に!!」
「隠し腕なのに隠れてないわよ!?」
頭からしっぽまで突っ込みどころしかないその行動に、突っ込み役のソフィもさすがにたじたじだ。
「ここまで説明してくれるなんて・・・なんてかっこいいんだ!」
「あ、ああ・・・なんとかと天才は紙一重って言うけどここまできわどいと判断に困るね。」
アインが感動しながら言った言葉に、ツヴァイは半分あきれた表情でそう答える。
「しかもこのアームを見よ!すごく固いんだからな、当たったら痛いんだからな!」
一通りの説明を終えた後、ノインは急に真顔になってこう言った。
「だがいいな?変身中にだけは攻撃するなよ!変身をミスると私がとても痛いからな!」
ご丁寧に弱点まで明かしてくれるとは誰も予想していなかった。
「昔の某アニメのように、変身に失敗すると真ん中が多大なダメージを負う構造なのだ!
ちなみに私は真ん中に乗っている・・・これがどういうことか分かるな!?」
なぜそんな構造にしたのか、それは誰にもわからないのだった。
「やるなよ!?絶対にやるなよ!?」
人間、やるなと言われると余計にやってみたくなるのは性なので、この後の事態は容易に想像がつく。
すでにアハトがグレネードを片手に、わきわきと手を動かしながらその瞬間をねらっているようだ。
「は!ちょっと待てマシントラブルが発生した。しばらく待ってろよ!」
肩の部分からぷすぷすと黒い煙が上がり始めたのを見て、ノインはいそいそと工具箱を取り出すと、コックピットから出てきてそこまでよじよじと登って行く。
「変態さんがんばって~!」
「ふははは!任せろ!!」
なんとなく応援したフィーアの言葉に、ノインはさわやかに答えて修理を始めた。
――10分後。
「ふう、異例の事態に遭遇したが何とか切り抜けたぞ!」
修理を終えたノインがシャキーンとポーズを決めて地上を見ると、そこではささやかなお茶会が催されていた。
「フィーア、もう1杯お茶をもらえるかい?」
「はい、ど~ぞ♪」
ツヴァイのカップにフィーアは楽しそうにお茶を注いだ。
「ちょっと、おなか減ってきたんだけど食べるものないの?」
「野菜でよければあるよ!」
「えー、また野菜?仕方ないわねぇ・・・ぽりぽり。」
こちらではアインが差し出したニンジンをドライがおいしそうに食べ始める。
「ちょっとアハト、寝ないでよ。」
「いいじゃないか、こんな日よりなんだし。」
「確かに暇だけど、寝るほどの時間はないでしょ・・・って、ふああ。
私もなんだか眠くなってきたわ。」
あまりに平和な時間に、アハトとソフィはうとうとしている。
「待たせたな!」
「もう終わったの~?」
「まだ試運転中でな、時々故障するのが難点だ!」
フィーアが立ちあがって手を振るとノインも手を振り返してくれる。
、
「こんな短時間で直すなんて、なんてかっこいいんだ!」
「ふふふ、それでは早速、このロボの攻撃力を見せてやろう!」
アインの言葉に気を良くしたのか、ノインはロボットの腕に設置されているパイルバンカーを発動して地面に突き刺した。
「皆も出てきたことだし、安心して地下に打ち込めるぞ!
ふははははー!こんな古臭い施設はもういらないのだー!!」
重い音を立てて下の施設が崩れて行く。
それはまるで、彼自身がその場所への思いを断ち切ろうとしているように見えなくもなかった。
「よし、全ての条件は整ったようだな!よーし!
アイン、ツヴァイ、ドライにフィーア!あとおまえはいいやアハト。それからソフィ!!」
「あら、私とこいつをちゃんと別物扱いしてくれるのね。」
「当り前だ、私はその男が気に入らないからな!!
それはともかく、おまえたちに引導を渡しに来てやったぞ!
私のライバルだと言うのなら、このロボットを打ち破って見せるといい!!」
アイン以外は彼のライバルになった覚えはないのだが、なぜか誰もが温かい目で見てしまう。
「ふはははー!では戦闘開始だ!!」
ロボットがノインと同じく無駄にかっこいいポーズを決めたのを見てアインが叫んだ。
「みんな!かっこいいポーズだ!!」
「ふ!任せなさい!」
ドライがアインの隣で美少女戦士がお仕置きしそうな謎のポーズを決める。
「ほ、ほら、私たちもやらないとツヴァイ!!」
「え?え・・・僕も?」
それを見て慌てたようにフィーアが魔法少女的なポーズを決め、さらにツヴァイにかっこいいポーズを強要する。
「うわあ・・・ノリとは言えなんで私が・・・」
「だったら俺のように棒立ちしてればよかっただろう。」
「え!?あんたそれ棒立ちしてるつもりだったの!?」
釣られてポージングしてしまったことを後悔しているソフィに、6人の真ん中で仁王立ちしているアハトがあきれたように言う。
ちなみに、アハトの前ではアインが前傾姿勢で鶴のように片足と両手をあげてポーズを決めていた。
「な、なに・・・!?ここまで決まっているだと、いつ練習したんだ!
しかもアハトずるいぞ!なんでお前が主人公ポジなんだ。」
「違うな、俺は6人目の戦士ポジだ。」
「ばかな、6人目の戦士だと!?
まだ主人公たちがやられて助っ人登場の回でもないのに!!」
それを見たノインが驚愕の表情を浮かべてわなわなとふるえている。
ノインからしてみるとかっこいいらしい。
「しか~し!演出が足りないぞ!!」
ノインが言うと同時に、4足部分の後ろからグレネードが飛び出してアルケンガーの後ろで激しい爆発が起こる。
「ふふふ。ヒーローものと爆発は切っても切れない関係なのだ!」
「しまった・・・!アハト!僕たちもグレネードだ!!」
「ほらよ。」
言われるがままにアハトが後ろにぺいっとグレネードを投げる。
ちゅどおおん!!
「アフロ戦隊!アフレンジャー!!」
爆発と同時にアインが叫んだ。
「まさかこの時代にアフロ戦隊・・・!?やだ、かっこいい・・・!!」
ノインは感動しているようだが、こちらはそれどころではなかった。
「アフロはもういやああ!」
「フィーア、フィーア!気をしっかり!?」
「ちょっと!フィーアが取り乱してるじゃないのよ!アフロはやめなさいよね犬!!」
「ご、ごめん・・・」
トラウマをえぐられたフィーアが混乱したのをツヴァイが必死になだめ、ドライがアインの頭をはたいている。
そんなこんなで、アルケンガーとアフレンジャー、もといナンバーズの戦闘は開始した。