ホムンクルスの箱庭 第4話 第3章 『研究施設に残されたモノ』 ⑤
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「よし、宝物庫を探そう!」
焼却場をようやく抜けて一息ついたところで、アインが笑顔で言った。
「もう、私たちはここに何らかの資料を探しに来たのよ?
だから、その過程でそういうところがあっても仕方がないわね。」
それに対して否定しているようで全く否定していないソフィが笑顔で返す。
「資料があるって、それっていったいどんな宝物庫なのよ・・・」
「ちがうちがう、ほら、私たちはいろいろな部屋を探さないといけないからね?」
「隅々まで探しつくさないといけないからね!」
片目をつぶって見せるソフィと満面の笑みを浮かべるアインををじと目で眺めながら、ドライはため息をついたのだった。
状況が落ち着いたのを確認してから、ツヴァイはフィーアにこっそりと話しかける。
「フィーア、さっきは大丈夫だったかい?」
「うん?大丈夫だよ~!」
先ほど戦闘の最中に様子がおかしくなったフィーアだったが、今は落ち着いているように見える。
それでも、ツヴァイには何か引っかかるものがあった。
もう一人自分がいるのを見て、怖がりなフィーアが怯えるのは仕方のないことなのかもしれない。
だがそれ以外の部分でも、フィーアは何かに脅えていたように見えた。
しかし、今はそれを確認している時間はなさそうだ。
仕方なくツヴァイはフィーアの手を握って皆の後ろに続く。
焼却場から一番近い扉を出た後に確認するとプレートには、廃棄場兼発電所と書かれていた。
やはり、さっきの部屋はごみの焼却と発電を同時に行っていた施設らしい。
扉を抜けた先の廊下をいくつも通り抜けて行くと道が左右に分かれる。
右側には資材室、左側には居住区・実験場・病棟と書かれたプレートが設置されていた。
当然のように一行は右側の道を選ぶ。
辿り着いた資材室の鍵をソフィがいとも簡単にヘアピンで開けた。
中には大量の資料と共に他にも使えそうな物がいくつか置かれており、資料を漁るという名目で皆はアイテムを漁り始める。
「おお!なんかかっこいい兜はっけん!」
シャキーンと装備しながらアインが嬉しそうに言った。
「ちょっと、錬金の資材室にあるような兜を普通、調べもしないでいきなりかぶる?
呪いの類がかかってたらどうするのよ犬。」
あきれ顔のドライに、アインが他に見つけたアクセサリーのような物を手渡した。
「はい、ドライ、君にはこれはどうかな?」
「へ・・・!?な、なによ、こんなところで拾ったものもらったって、ぜ、ぜんぜん嬉しくなんかないんだからねっ!!」
そう言いながらも、ドライは大事そうにそれを懐にしまった。
「それからこれは・・・何かの鎧かな?」
「あ、こら!だから、よく調べもせずに装備するんじゃないって言ってるでしょ!」
アインがあまりにも無防備にいろいろ装備するので、結局ドライも一緒になって探す。
「ソフィ!この帽子はソフィに似合うと思うの~。」
「あら、ありがとうフィーア。じゃあフィーアはこれとかどうかしら?」
「ありがとう~!」
こちらはまるでウィンドウショッピングに来た女性同士の会話だ。
「やれやれ、まるで遠足だな。」
4人を眺めながら、アハトはまたつまらなそうに時間をもてあましている。
「アハトは何か探さないのかい?」
「ああ、俺は今回は良い。」
「そうなのか。」
こちらでは、ツヴァイがアハトに話しかけながら資料を漁っている。
「何かいいものは見つかりそうか?」
「いや、これといって・・・」
ツヴァイが残念そうに言った時だ。
「ひゃう!?」
「フィーア!大丈夫!?」
フィーアの悲鳴とソフィの声が聞こえてきた。
「フィーア!何かあったのかい・・・!?」
ツヴァイが誰よりも早くそちらに駆け付けると、フィーアは資料の中に埋もれていた。
「あう・・・」
どうやら、棚の上から落ちてきたらしい。
「怪我はないかい!?」
「うん、大丈夫~。」
ツヴァイの手を借りて、よいしょとそこから抜け出したフィーアがふと資料に目をやって言った。
「あ・・・アハトの写真がある~。」
「え?」
ツヴァイが足元にあったそれを拾い上げると、表紙にはこう書かれていた。
『研究者人員名簿』
「これは・・・」
「おおー!お・・・?」
それを見てアハトがこれはしまったという表情をする。
「アハト、これは言い逃れできないわよ?」
その一瞬をソフィは見逃さなかった。
「あ、変態さんもいるの。」
フィーアが指さした先にあった写真には、銀髪の男性の写真があった。
以前、フィーアの寝室に侵入したこともあってこの男性、ノインはフィーアの中では変態さんとしての地位を築いていた。
「アルバート・・・」
ツヴァイがその写真の横にある名前を読み上げる。
おそらくは、それがノインの本当の名前なのだろう。
その次のページにはフィーアが言った通りにアハトの写真が出てきた。
「N.オーベル。」
全員の視線がアハトに集まるが、彼は視線をそらして特に何も答えようとしない。
今ここで問いただしても、彼はきっと答えないだろう。
そう判断したツヴァイはさらに資料のページをめくった。
クリストフ、ジョセフィーヌと見覚えのある2人の資料が続き、そして最後に・・・
「・・・葵?東の方で聞くタイプの名前だね。」
銀色の髪に紅と金のオッドアイの人狼の女性。
しかし、その写真にはなぜか赤い線で×印が書かれていた。
「なんていうか、他のメンバーとは違って大人しそうな人ね。」
ソフィの言うとおりその女性は物静かな雰囲気で、とてもアルスマグナで残酷な研究を繰り返していたとは思えない。
「専攻は・・・生物学、病理学って書いてあるね。」
ツヴァイが彼女のデータを読み上げていると、アインが震えながらその資料に手を伸ばしてきた。
「兄さん、見覚えがあるのかい?」
「すまない、すごく現実的な問題なんだ・・・。」
「ん?」
今にも倒れそうな青ざめた表情で、アインが口にした言葉。
「鎧が、重い・・・」
バターン!!
「えええ!?兄さん大丈夫かい!?」
「何やってんのよ犬!重いなら重いっていいなさいよ!」
どうやらさっき発見した鎧を着込んで、さらに前の鎧を背負っていたらしい。
重さに耐えきれなくなったのか、おもむろにアインがその場に倒れた。
「私に任せなさい!・・・って、おーもーいー!」
アインが背中にしょっていた鎧をドライは持ち上げようとするのだが、重すぎて上がらないようだ。
「ちょっとフィーア!あんたそのぬいぐるみ貸しなさい!」
「はう!そうちゃんの中に入れるの~?」
「そうよ、それ何でも入るんでしょう!」
背中のチャックを開けて、ドライが無理やりに鎧を詰め始める。
「ああん、そうちゃんが壊れちゃうー!」
「大丈夫よ!人間が入るでしょうがこれ!」
入口からむぎゅううっと詰め込まれた鎧は、そうちゃんの中に消えて行った。