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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第4話 第3章 『研究施設に残されたモノ』 ③

おはようございます~(*´ω`)

 元の部屋に戻った一行は、今度は例の燃焼室と書かれた部屋に入ってみることにした。

 先ほどの部屋から粘液の流れる通路を伝ってどこかに行けることは分かったのだが、それにしても情報が少なすぎる。

 出来ればもう少し詳しいことを調べたい。


 燃焼室に入ってみると右側にはいくつも装置があり、対して左側は装置の合間を縫って進めば小窓のある場所に行ける。

 そこからならば、粘液が流れ込んでいく先を見ることができそうだ。

 大量のパイプが設置された部屋は狭く、その上、装置が起動しているために少し暑い。

 全員でそこを一人ずつ通り抜けて小窓の方まで行くと、視界の先には広い空間があった。


 何箇所かに錬金灯が設置されていて、薄暗いながらも中の様子が見える。

 すり鉢状になったその場所にはさっきの粘液の通路から液体が底に流れ続けていて、中心の熱源に辿り着くとジューと音を立てて蒸発していた。

 見た感じ、巨大な焼却場といったところだろうか。


「あれ、なんだろう?お人形?」


 フィーアが指さしたのは、手前の天井からぶら下がっている物体だった。

 鎖のような物に吊るされているだが、そこに人形がぶら下がっている。

 2か所ほど設置されており、ただのおもちゃだとは思えない。


「なんだろう・・・たぶん、何か意味があるんだろうけど。」


 ツヴァイが見定めるように細めた時、ちょうど上から粘液の通路の縁を通って一匹のネズミが走ってきた。


「あ!ネズミさん!」


 フィーアが嬉しそうにその場所を指さす。


「やだ!ネズミ苦手なんだけど!?」


 ドライが嫌そうに言うと、ちょうど前足で顔を洗っていたネズミがつるっと滑ってすり鉢の中に落ちた。


「あっ!」


「わ、私のせいじゃないんだからね!?」


 フィーアとドライがおろおろとするのと同じくらいの慌てぶりで、ネズミは何とかその場に留まったのだが、その瞬間人形が動いた。

 かくかくっと動いた人形の目が光ったかと思うと、足元の床が移動し始めて止まっていたはずのネズミが下に向かって流れていく。


 そして・・・


「あうっ!」


「フィーア、見ない方が良い。」


 ネズミの行く先の想像がついてしまったのか、ツヴァイがフィーアを抱き寄せて見えないようにする。

 皆の想像通り、下まで運ばれたネズミは真ん中の熱源に触れる前に蒸発した。


「なるほど・・・あの人形はどうやら引っかかってしまった物を下まで運ぶ役目をしているようだね。」


 ツヴァイが冷静に言ってフィーアの髪を撫でる。

 見ていなくても何が起こったか想像出来てしまったのか、フィーアはしょんぼりとうつむいていた。


「ほらフィーア!しょんぼりしてる場合じゃないでしょ。

 あの人形を何とかしないと私たちもネズミとおんなじことになるんだからね!」


「う、うん!」


 ドライに言われると、フィーアはようやく顔をあげてツヴァイから離れる。

 小窓からもう一度中を覗いて人形の位置を確認すると同時に、魔力の気配を感じ取って他に何かいるかを調べた。


「えっと・・・人形の他に、2匹何かいるの。」


「いったい何がいるっていうんだいフィーア?」


 アインが尋ねると、フィーアはまず真ん中の熱源を指さした。


「あそこにはマグマスライムがいるの。」


 マグマスライムとはマグマを核として作られたスライム状の錬金生物で、常に熱を発している。

 中央に落ちた物はマグマスライムが燃やしているらしい。


「それから、ここから少し離れているんだけど・・・」


 フィーアが次に指さしたのは、すり鉢状の空間を抜けたさらに向こう側。

 ここからだと30メートルほど離れた向かい側の部屋にある小窓だった。


「何がいるのかは分からない。でも、ずっとこっちを見ているの・・・」


 フィーアが少しだけおびえたように言うと、ツヴァイがそっとその手を握る。


「大丈夫だよフィーア。」


「うん。」


「なるほど、何がいるのかは分からないけれど、とりあえずは手前の人形を始末することから始めましょう。」


 ソフィの提案はもっともだが、ドライはムスッとした表情で奥を指さした。


「手前の人形は良いけど、奥のはどうするのよ?」


 手前側にぶら下がった人形はフィーアの魔法が届く位置だ。

 しかし、もう1体はここからかなり離れていて並みの攻撃は届きそうにない。

 大きな魔法を使って施設が壊れる可能性は回避したいところだ。

 すると、アハトがフィーアの持っているそうちゃんをぽふぽふと叩きながら言った。


「何言ってるんだ。ズィーベンに協力してもらえばいいじゃないか。」


「なるほど!それはいい考えだ。」


 アインが納得したようにポンッと手を打った。

 確かに、ズィーベンのビームならば奥の人形にも届くはずだ。


「マグマスライムはどうしようかしらね?」


「あれは近づかなければ問題ないから、外周を通って抜けよう。」


 ソフィとツヴァイがそんな会話をしていると、フィーアがそうちゃんを小窓に向けた。


「ユウ、お願い、ネズミさんの仇を取ってほしいの。」


「任せろ嬢ちゃん!俺のビームが火を噴くぜ!!」


 くるっぽー!と鳩の鳴き声が聞こえたかと思うとそうちゃんのおなかのあたりからビームが発射される。

 小窓ごと破壊したビームは、奥の人形を釣るしている鎖を焼き切った。

 下に落ちた人形は粘液の流れに沿って真ん中まで転がり落ちると、ジュっという音と共に蒸発する。


「また何かあったら呼ぶといいぜ、フィーア。」


「ありがとう、ユウ!」


 ズィーベンの声だけが聞こえ、フィーアはそうちゃんに向かって礼を述べる。

 不思議なことにビームが出たはずのそうちゃんのおなかは特に変化はなかった。

 手前の人形はフィーアが氷の刃で鎖を断ち切り、同じように処分する。


「ありがとうフィーア、よく頑張ったね。」


「えへへ。」


 ツヴァイに頭を撫でられると、フィーアは嬉しそうに目を細めた。


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