ホムンクルスの箱庭 第4話 第3章 『研究施設に残されたモノ』 ①
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今日からまた金曜日まで頑張りま~す。
「ふう、危ないところだったね!」
「ああ、主に俺の股間がな・・・」
あの後、アハトとアインは順番に鏡を持ちかえて通路を何とか通り抜けたのだが、2回連続のダイレクトアタックはさすがのアハトも応えたようだ。
「ご愁傷様。」
珍しくげっそりとした様子のアハトに、ソフィがさらっと言った。
「まてソフィ、俺のアレを勝手にご臨終させるな。」
そこは聞き捨てならなかったのかアハトが反論する。
「俺のアレってなあにツヴァイ?」
「ああ、フィーアは気にしなくていいんだよ。」
気になってしまったのか興味津々に尋ねてくるフィーアに、ツヴァイは困ったように笑ってごまかした。
「俺のアレは俺のアレだ。」
「あはは、アハト、あんまり連呼すると・・・もぐわよ?」
『もぐ!?』
目が笑っていないソフィの発言に、男性陣が恐怖を感じつつも移動していくと今度は少し広めの部屋に出た。
部屋の右側には階段があったようなのだが、本来、上の階につながっていたであろう場所は倒壊してしまっている。
その近くには焼却場と書かれたプレートのかかっているドアが一つあった。
「とりあえず、他に何かないか探してみよう。」
アインが部屋の壁を片手で叩いて移動し始めた。
どうやら、他に道がないか探しているらしい。
「私も探す~!」
フィーアがまねをして壁をぺしぺしと叩きながら進んでいると。
「フィーア、危ない!」
「え?」
ツヴァイがフィーアを後ろから抱きしめて飛び退った。
同時にフィーアが今まで立っていた場所の横にある壁が崩れて瓦礫が積もる。
「あう!」
「壁が崩れかけていたみたいだ。ごめんね、すぐに気付けばよかったんだけど。」
「ううん、大丈夫。ありがとうツヴァイ!」
「フィーア!あんたちょっと大丈夫なの?」
こちらのやり取りに気付いたのか、少し遅れてドライも駆け寄ってきた。
「うん、大丈夫~。」
「そう、だったらよかった・・・じゃない!転んで泣いちゃえばよかったのに。」
「ふぇえ・・・」
転ばなくてもドライのその言葉だけでフィーアは泣きそうになる。
「ふふふ、いいわよフィーア。もっと泣きなさいっ!」
「ドライ、心配だったなら素直にそう言え。
もののついででフィーアをいじめるのはやめろ!」
「うるさいわねツヴァイ!
フーンだ、あんたなんか瓦礫に潰されちゃえばよかったのに!」
憎まれ口を叩いてから、ドライはさっとアインの方に走って行ってしまった。
「まったく、困ったやつだな。」
その様子を見て軽くため息をつくと、ツヴァイはフィーアの手を取ってその場から離れた。
「犬、なにかあった?」
「いや、こっちもまだ調べているところだ。フィーアは大丈夫だったのかい?」
向こうでのやり取りに気付いていたアインが尋ねると、ドライは隣に並んで壁を叩きながら答える。
「平気よ。・・・あの馬鹿が守ってるんだから、そう簡単に怪我することもないでしょう。」
「そうだね、ツヴァイはきっとフィーアを守ってくれるよ!」
「べ、別にそんなこと言ってないでしょ!
とにかく、焼却室なんて物騒なところに入るのはごめんよ。
他に道を探しなさい!」
「おーう!」
ドライに言われるがままに、アインはさらに壁を叩きながら部屋を一周しようとした。
「あれ?」
進んですぐにアインは壁の違和感に気付く。
「どうしたのよ?」
「ここだけ壁が薄い気がする。」
先ほどまでと違って叩くと音に違いがあるようだ。
叩くたびに向こう側で音が反響している。
その様子に気付いたのか他の4人も近づいてきた。
「先に空間があるんだろうね。周りを崩さずに、ここだけ壊すことはできるかい兄さん?」
建物自体がだいぶ古いため、壊すにしても必要最低限にしておかなければならない。
「やってみるよ!」
神経を集中させるように刀を構えると、アインは静かに目をつぶって深呼吸する。
そして。
「斬・・・っ!!」
気合の入った掛け声と共にアインが刀を一振りすると、ちょうどアインが通れるサイズ程度の穴が壁に開いた。
「ふう、またつまらぬ物を斬ってしまった。」
「お見事!」
「わー!」
ぱちぱちぱちとみんなが手を叩くと、アインは照れたように後ろ頭をかいてからビッと親指を立てる。
それに返すように他のメンバーも親指を立てた。
壁に開いた穴は廊下の途中につながっているようだ。
左右に広がる道は右側が瓦礫で埋まり、左側はどこかに続いている。
「ここは明かりが生きているみたいだ。」
埋もれていない方の廊下には明かりが灯っていた。
時々ジジっと音を立てながら、錬金灯がついたり消えたりを繰り返している。
おそらくここは焼却場の熱を使って発電をしており、電源が生きているのだろう。
左に進んで行くとつきあたりにはドアがあった。
「普通のドアっぽいね。」
鉄製のドアには特に何も書かれておらずこれといって罠の気配もない。
ただ、すごく熱いというわけではないが、他の部分よりは熱を帯びているように思えた。
アインがドアに耳を当てて中の音を聞いてみると、ドロドロと粘着質な音がする。
「うーん、中で何かが流れる音がする。」
ドアを開けた瞬間に何かが流れ込んでくる危険性はないと思いつつも、アインは自分が先頭に立って他の5人を後ろに立たせる。
慎重にドアを開けると、そこは思っていたよりも横に広い空間だった。
目の前にはダストシュートから直接ごみを送るための斜めになった水路のようなものがあり、そこを粘質性の高そうな透明の液体がどろどろと流れていた。
部屋にはそれ以外にごみ置き場としての棚が設置されていて、錬金術の薬品が入っていた瓶やレポートの残骸などが積まれている。
左側には液体の流れる通路が下まで続いており、どこかに流れ込んでいた。
通路を伝って行けばそちら側に出られるかもしれない。
熱源はその方向にあるようで生温かい空気が流れてくる。
この部屋の高さ自体は2m程度しかなくアインが通れるぎりぎりくらいだった。
「この粘液は・・・特に害はないみたいだ。
何かを下の広場に流すための潤滑剤としての効果があるみたいだね。」
ツヴァイが手に取って指先をすり合わせながら教えてくれる。
「せっかくだから、この棚にある廃棄される予定だった物たちを調べよう!」
ゴミ置き場の棚に近づいたアインは、ごそごそとそこを漁り始めた。
「ドライ、君も手伝ってくれ!」
「なんでそーなるのよっ!もう・・・仕方ないわねぇ。」
ごみを漁るのには抵抗があるようだが、頼まれたこと自体は悪い気はしていないらしくドライも一緒になって棚を漁り始めた。
「皆もちょっと探してみようよ!何か使える物があるかもしれないよ。」
「じゃあ、私はこれを解読してみるね。」
フィーアが棚から取り出したのは、破り捨てられた資料の数々だった。
「それを並べるのは少し大変そうだね。僕も手伝おうか。」
「うんうん!」
ツヴァイが隣で手伝い始めると、フィーアは嬉しそうに笑った。
雑に破き捨てられた資料は繋ぎ合わせることで何とか読めそうだ。
しばらくの間、資料の残骸とにらめっこしていると、ソフィが棚に残っていた同じような残骸を数枚持ってきてくれる。
「フィーア、まだ残っていたわよ。」
「ありがとうソフィ、これで全部できたの!」
受け取った資料を合わせて、フィーアはツヴァイと共にその資料を解読した。
並べてみるとそれは誰かの日記のページの一部だということが分かる。
かなり古いものらしく、日付は今から十数年程度前の物のようだった。