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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第4話 第2章 『始まりの箱庭』 ④

この章の始まりを見て考えてしまいます。

アインさんの正義ってなんだろう(; ・`д・´)

己の正義のためなら使えるものはすべて使えってことだろうか(`・ω・´)


「残念ながら民家にはお金の類はなかったよ・・・。」


「ちょっと犬!?しんみりしながらあんた何言ってんのよ!」


 一通り村を見終わった後に、合流したアインが口にした一言目にドライがすかさず突っ込みを入れた。


「いや、旅の役に立つものがあればと思ったんだけど。」


 アインとしては特に悪気があったわけではなく、使える物は使わせてもらおうという腹積もりだったようだが。


「まあ、正直、この村は捨てられてからの時間がかなり長いみだいだから。

 私たちも民家を中心に回ってみたけれど、ほとんど壊れて使えない物ばかりだったわ。

 お金はともかく、直せば多少使えそうなものはなくもないって感じね。」


 ソフィも似たようなことをしていたらしく、そんなことを述べる。


「梯子とかはあったかな?」


「ああ、それなら兄さん。

 むこうに壊れた梯子があったからあれを補強して持って行こう。」


 ツヴァイが言っていた通り、近くの民家に壊れかけの梯子がある。

 多少補強すれば使えないこともないだろう。


「ふふーん、ふんふん。」


 物作りの得意なアハトが梯子を治すことになり、彼は鼻歌を歌いながらそこらへんの柵にある錆びた中でも比較的使えそうな釘を集め始めた。


「ちょ、ちょっと!それ持って私に近づくんじゃないわよ!

 最近先端恐怖症なんだから!!

 いたっ!なんか古傷が痛むんだけど!?」


 どうやら、しばらく前にグレネードの爆破で釘が飛んできたことは、ドライの心にしっかりとトラウマとして残ってしまったらしい。


「大丈夫よ。あなたには使わないわ。」


「使ったじゃない!使ったじゃない~!?」


 梯子を直すのを手伝いながらあっさりと返されたソフィの言葉に、ドライは涙目で抗議する。


「言っておくが俺は知らん、俺は愛しのグレネードを爆破しただけだ。」


「おっと、そういえば僕、他にやらなきゃいけないことが。

 フィーア、一緒に付き合ってくれるかい?」


「ちょっとツヴァイ!あんたがやったのわかってるんだからねっ!!

 あんな陰険なこと思い付くのはあんただけよ!

 っていうか、何さりげなくフィーアのこと連れて行こうとしてるのよ!」


 ここにいると面倒だと思ったのか、フィーアを連れてさっさと逃げようとするツヴァイの背中にドライは思いっきり文句をぶつける。


「あのねあのね!あの時、私は小麦粉を撒いたの~。」


「フィーア!あんたも共犯だったわけ!?」


「よしよし、えらかったねフィーア。」


「えへへー。」


「私のこと無視しないでよね!これだから昔からあんたたちは・・・っ!!」


 無視して先に進もうとするツヴァイとフィーアをドライが追いかけると、急に2人が立ち止まった。


「な、なによ!急に止まるんじゃないわよ・・・!?」


 ドライがそう言いながら2人の視線の先を見ると、そこには巨大なクレーターのような物があった。

 施設の建物の一部を撒き込み、地面やそこにあった物ごと抉られたような跡にドライが一瞬息をのむ。


「あ・・・」


「どうしたの?ドライ?」


 フィーアが不思議そうにドライを見ると、彼女は一瞬、泣きそうな表情をしてからプイっとそっぽを向いて。


「なんでもないわよっ!」


 強い口調でそう答える。


「どうやらここは地下施設への入り口があった場所みたいだね。

 困ったな、どうやって地下に潜るか考えないと。」


 ツヴァイが言うとおり、建物の造りから考えるとそこはどうやら地下の入り口があった場所の様だ。

 このクレーターがいったい何が原因でできたのか少なくともツヴァイには分からないが、自分たちが行くべきは錬金術の実験が本格的に行われていたであろう地下だ。

 となれば、他に入口を見つけるしかないのだが。

 ツヴァイがクレーターを眺めながらそんなことを考えていると。


「あれ?何か音が聞こえる!」


「あ!フィーア!?」


 隣で興味深げにクレーターを眺めていたフィーアが突然、近くにあった建物に向かって走って行ってしまう。


「こっちから機械の音がするの!」


 大きさは小さな倉庫程度だろうか。


「フィーア、一人で行ったらだめだ!」


 何の警戒もなしにそちらに無防備に走って行くフィーアを、ツヴァイが慌てて追いかける。

 その後ろ姿を眺めながらも、ドライはクレーターに視線を落とした。

 そして、誰にも聞こえない小さな声で。


「・・・おにいちゃん・・・」


 ぽつり、と呟くと小さく首を左右に振って。


「ちょっとフィーア、一人で動いちゃだめでしょう!」


 妹を叱る姉のように言うと2人の後を追いかけた。




「どうやらここはボイラー室みたいだね?」


 危険がないかどうかを確認するために、アインが中に入って調べてから皆にそう告げた。


「機械の音がするってことはまだ生きてるみたいね。」


 ソフィの言うとおり機械はまだ起動しているような音を出している。

 フィーアが聞きつけたのはこの音だったのだろう。

 中には配管がつながった装置がいくつも並んでいる。


 おそらくは、地下の温度管理や熱源に関する装置だろう。

 ここで主な熱処理を行っていたのだろうか?

 地上側の熱源と地下の熱源を一括管理していたらしく、装置が所狭しと置かれている。

 だが、建物の老朽化も激しく手前の装置はもはや動いてはいないようだった。

 奥に設置されている地下施設の熱処理をしているらしい装置だけが、今も変わらずに動いている。

 さらにその奥にある壁に設置された換気口は、金属製の蓋がひしゃげて外れてしまっていた。


「もしかして、ここから奥には入れるんじゃないかな?」


「おーい、梯子は直ったぞ。」


 かなり大きなその換気口からアインが身体を潜り込ませて中をのぞき込むと、ちょうどアハトが梯子を抱えてボイラー室に入ってきた。


「アハト、この下がどうやら地下施設とつながっているみたいなんだ。」


「ふむ。」


「さっそく君のグレネードで・・・!」


「まって兄さん!そんなことしたらせっかくの入り口がなくなってしまうよ!?」


 アインがどのくらいグレネードが万能だと思っているのかは分からないが、少なくとも今この状況で使えば老朽化しているこの施設もろとも地下への入り口は埋まってしまうだろう。


「そ、そうか。じゃあ僕がロープで吊ってもらって先に下に・・・!」


「それも危ないよ。

 下から空気の流れを感じるし、何よりファンが回る音がするからね。

 もしそれに触れるようなことがあったらいくら兄さんでも怪我をしてしまうよ。」


「む、むう・・・」


 困ったようにアインが唸ると、アハトがやれやれと言うようにため息をついて近くに落ちている石を拾いあげた。

 それをロープの先に結びつけるとロープの端を掴んでぽいっと投げ入れる。

 数秒後、カンカンカンと石が何かに数回ぶつかる音がして、ロープが切れた。


「こりゃだめだな。」


 ロープを引き上げて見るとやはり先がちぎれてしまっている。


「私がファンを魔法で破壊したほうが良いかな?」


「いや、それだと下の空気が循環しなくなる可能性が・・・」


 地下の施設がどの程度機能しているかが分からない今、ツヴァイの指摘はもっともだ。

 ファンを破壊することはできれば避けたい。


「じゃあ魔法で凍らせるのはどうかな?」


「よし、それで行こう。頼めるかい?フィーア。」


 ツヴァイに頼まれるとフィーアはこくこくと頷く。


「うん!」


 さっそく魔法を唱えると換気口の中を覗き込んで、下に向かって魔法を放つ。


ギイ・・・ギイ・・・ギ・・・


 何かがきしむ音と共にファンの稼働音が止まった。


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