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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第1話 第3章『双頭の竜』 ①

PC「領主軍って名前無いの?」

GM「そんなものはない!なにしろ領主軍がいることは今考えたからな!!」


そんなわけでこれから出てくる領主軍の人たちには名前がありません(; ・`д・´)


※6月3日に文章の整理をしました。


「これは・・・」


 アインは御者席から降りると、馬の手綱を引いて村の入り口に立った。


「着いたか。」


 馬車のホロを開けたアハトが身軽に飛び降りる。


「ふむ、まあこんなもんだろう。」


 そして、アインの隣に並んで一言だけそう述べた。


「あらら、これはかなりひどいみたいね。」


「フィーア、降りれる?」


「うん、ありがとうツヴァイ。」


 ソフィが続けて馬車を降り、先に降りたツヴァイが手を取るとフィーアがぴょんっと荷台から飛び降りる。


「わ~!誰もいないね!」


 にこにこしながらフィーアが言った通り、昼間だというのに村の中には人っ子一人見受けられない。


 ようやくたどりついた村は荒廃していた。

 人の気配はなく、誰かが生活しているのか怪しく思えるほどにだ。

 村全体が色あせて見えるというか、まるで活気がない。

 竜対策なのか村全体に木の杭で柵が作られているのだが、その何か所かが破壊され、黒く炭化した跡が生々しく残っている。


 北の山に竜が住みついたのは、数か月ほど前のことらしい。

 ここに来るまでの村や町で集めた情報通りの光景に、アインは思わず言葉を失った。

 竜が里に下りては人や家畜をさらっていくために、人々は外に出ることを恐れて家の中にこもるようになってしまった、という話が本当だということはこの様子を見れば一目瞭然だった。


「これじゃあ、話を聞くこともできないわね。」


「まあいい、とりあえず村長の家にでも行ってみるか。」


「そうね。」


 アハトの意見に特に反対する理由もないので、一行は村はずれにあるという村長の家を訪ねることにする。

 訪ねた先にいたのは、白いひげを蓄えた小さな老人だった。

 その人物は突然の来訪者に訝しがったものの、危ないのでとりあえず家に入るようにと促してくれた。

 そして、こちらの話を聞いて驚きを隠せないように尋ねてくる。


「おお、あなた方が竜を退治してくださると言うのですか。」


「ええ、その代わりと言ってはなんですが、村の方々の力を貸してもらえませんか?」


 アインが代表として話を始めたのだが、村長はその提案に対し申し訳なさそうに答えた。


「手を貸したいのは山々なのだが、皆、竜を恐れて家にこもってしまっておる。

 声をかけたところで、どの程度集まってくれるのか。」


 普通の人間が竜を恐れるのは当然のことだ、村長がどの程度人望のある人物なのかはわからないが、危惧している通り人が集まってくれるかどうかわからないというのが本音なのだろう。


「このまま竜を放っておけば、むざむざと殺されるのを待つばかりです!

 ここは皆で力を合わせて、竜を倒すべきではないでしょうか!」


「ふむ・・・その通りなのかもしれませぬ。少し待っていてくだされ。」


 かといってアインの言葉が正しくないかと言えばそんなことはないこともわかっているのか、重々しく頷くと村長は部屋から出て行った。


「村長さん、いい人だね!」


 そんなことを言いながら、アインはにこにこしている。

 確かにこちらの言葉に耳を傾けてくれたという点では、ありがたいと言えるだろう。


「まあ、藁をもつかみたい状況っていうのは間違いないだろうな。」


 会ったばかりの村長がいい人かどうかという意見はともかく、アハトの意見には他の3人も同意できた。


「こんな小さな村が籠城することしかできなくなれば当然、食料があっという間に底をつくだろう。」


「そういえば、田畑も十分に耕されていないみたいだったしね。」


 窓の外を眺めながら、アインもそんな言葉を口にする。

 ここに来るまでの間、村の中にもいくつかの畑があったのだが取るものを取りつくされた荒地には、わずかに枯れた作物の残骸があるだけだった。


「ウサギやなんかの狩りにも行けてないんじゃないかな?竜は森にも来るみたいだから。」


 ツヴァイの言葉は、ここに来るまでに通り抜けた森の炭化した場所や、なぎ倒された木々のことを指しているのだろう。

 おそらく、あれは竜に獣や人が襲われた跡だ。


「ありゃあ、結構なもんだったな。なんでも噂によれば、頭が二つあるかなりでかい竜らしいじゃないか。」


「こんな感じ~?」


 すると、フィーアがどこからかペンを持ってきてテーブルの上に絵を描き始める。


「とにかく、私たちじゃあここの地理もわからないし、作戦の立てようもないわね。」


「うん、すべては村の人たちの話を聞いてからだね。」


 ソフィの言葉に頷くと、ツヴァイはフィーアの頭をそっと撫でた。

 テーブルには絵本に出てくるような、悪そうな顔の竜が描かれている。


「よく描けているね、フィーア。怖くないのかい?」


「うん、ドラゴンは今どこにいるのかな~?」


 ドラゴン自体は少なくとも今は怖くないらしく、フィーアはクマのぬいぐるみの手を持って、完成したドラゴンの絵をぺしぺしと叩いている。


「ドラゴンは夜行性らしいからね。今は寝ぐらで大人しくしているんじゃないかな。」


「すご~い!ツヴァイよく知ってるね!」


「少しだけ調べたんだ。

 他にも、竜はその場で獲物を食べずに巣に持って帰るらしい。

 そういったことも利用できるかもしれない。」


「なるほど、ならば囮用の獲物を用意して腹に俺のグレネードを仕掛けてはどうだ?」


「それはそれで効果的かもしれないわね。」


 そんなことを話しながら、一行は村人が集まってくるのを待つことにした。


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