ホムンクルスの箱庭 第4話 第1章『始まりの場所を目指して』 ②
あと数章の間は目的地までの道中になりま~す(*´ω`)
「アハト、グレイさん、それに、父さんと母さんにもなんだけど、お願いしたいことがあるんだ。」
『始まりの場所』へと目的地を定めてから数日後のことだ。
道中で休憩をとっていた4人にアインが話しかけた。
「このままだとヌルには勝てない。だからこそ、出来る限りの準備をしなきゃいけないと思うんだ。
それで、今まで手に入れたもので準備を進めて行きたいと思うんだけど、力を貸してくれないかな?」
「ああ、任せておけ。」
二つ返事で真っ先に頷いたのはアハトだった。
「で、どんな改造が良いんだアイン?」
わきわきと両手を動かしながら近づいてくるアハトを華麗にスルーして、隣のクリストフが答える。
「別にいいよ。今の僕たちにできることはそれしかないしね。」
「ありがとう父さん、母さん!」
アインがいつもの勢いで両親を抱き寄せるようにがしっと肩をつかむが、そんなことにはもう慣れてしまっているのかクリストフは特に驚いた様子もなく頷いた。
対してジョセフィーヌは困ったように視線をそらしながら。
「別に私は手伝うとは言ってないわよ・・・」
ぽつりと言ってそっぽを向いてしまう。
「おーけーじゃ、任せんしゃい!」
「まずはこれを使えるようにしてほしいんだ。」
頼まれたからには全力を尽くしたいのか、グレイがさっそくアインから例のノインにプレゼントされた斥力場装置を受け取る。
グレイはそれらを眺めるとアハトと共にさっそく改造し始めた。
「じじい、どうするよこれ。」
「穴開ければいいじゃろう。」
物すごく適当な会話をしているように思えるが、アハトもグレイもかなり腕のいい錬金術師だと言える。
彼らの適当は計算しつくされた完璧な動作だった。
「じゃあじじい、アインの小手とくっつければいいんじゃね?」
アハトがアインの装備している小手を受け取ると4か所程度穴をあけ、グレイがかなり乱暴な手つきで斥力場装置をぐりぐりと押し込む。
「機器自体は複雑すぎてわしらには扱えんし、まあ、はまりゃあいいじゃろう。
あとは出力どうするかじゃ。」
「この前、アインがフェンフから取ってきたやつがあっただろ?あれ直せば使えんじゃね?」
「ふむ、やってみる価値はありそうじゃの。」
とんでもなく我流なやり方にもかかわらず、驚いたことにそれは初めからそう作られていたかのように綺麗にはまる。
「父さんと母さんにはこの宝玉を頼みたいんだ。」
そんな様子を眺めていた2人にアインが差し出したのは、マリージア錬金術研究所の宝物庫で手に入れた宝玉だった。
「やれやれ、こんなものどこで発掘してきたんだい?」
「聞いてよ父さん!すごかったんだよ!あのねアハトがね・・・!
レーザーを華麗な動きとグレネードで封殺したんだ。」
子供が父親に語りかけるように、アインはアハトの武勇伝を語った。
宝物庫のレーザーがいかに危険だったか、アハトがそれらをどのように華麗にかわしたのか。
それを聞いているうちにクリストフは苦笑してしまう。
この子はたとえどんな時でも変わらないのだなと。
「あの罠がそんな方法で突破されるとはね。わかったよ。これは使えるようにしておこう。」
「・・・ちょっとあなた、その方向じゃ違うでしょう。」
台座と共に渡された宝玉をクリストフがはめようとすると、横からジョセフィーヌが声をかけた。
「ああ、すまないジョセフィーヌ。こうだったね。」
2人はそんな調子で会話しながらも、アインが渡した宝玉を使えるようにしようとしてくれている。
それを嬉しそうに眺めていたアインの近くに、いつのまにかドライの姿があった。
最近、気付くとドライが傍にいる気がするのは気のせいだろうか?
不思議に思いながらもアインはドライに近づいて、以前からしようと思っていた頼みごとをすることにする。
「な、ななな、なによ!?」
アインが自分の方に近づいてきたことに気付いたドライはなぜか大慌てしている。
そんな彼女の目の前に立つと、アインは改めてドライに話しかけた。
「ドライ、お願いがあるんだ。」
「だ、だから何よ・・・ひゃ!?」
身をかがめたアインは、周りに聞こえないようにドライの耳元で囁いた。
突然のことにドライは真っ赤になって硬直してしまう。
「僕は皆を助けたい。だけどこのままじゃ守れない、だから君の力を借りたいんだ。
君なら出来るはずなんだ。」
「あ、当り前でしょ?私にできないはずじゃない!何言ってんのよ、この犬っころ!」
まだ何をするかは聞いていないのだが、勢いでそう言ってしまう。
そんな彼女を見てアインはにっこりと笑った。
それを見てどこか決まり悪そうにドライは尋ね返す。
「そ、それで何をすればいいのよ・・・?」
「君の力を使って、戦いのときに僕に相手の悪意が向くようにしてほしいんだ。」
「ちょっとあんた・・・確かに出来るけど、そういうのはナシ。
それってあんたが一方的に狙われるだけでしょうが、正直つまらないわ。」
アインが言っていることは、敵の悪意を向けさせることによって自分にだけ攻撃させようということだ。
「大丈夫だ、僕はその全てを受け止めてみせる。
皆を守るためにはそれしかないんだ。」
「だからってそれであんたが傷ついたら、他の子たちが傷つくでしょうが!
・・・って何を私に言わせてんのよっ!?」
自分が言ってしまったことが恥ずかしかったのか、乱暴に言うドライを見てアインは思わずこう言ってしまった。
「君は優しいなあ。」
「は!?ちょっと何言ってんのよっ!」
その言葉があまりに恥ずかしかったのか、ドライは顔を真っ赤にしながらびしびしとアインの頭をはたき始める。
「この犬!犬の分際で生意気よっ!」
べしべしというよりはもふもふと当たっているドライのその手を受け止めて、アインは真剣な眼差しで言った。
「君にしか頼めないことなんだ。頼むよドライ。」
その眼差しに何を思ったのか、ドライはしばらく沈黙した後に大きなため息をついて。
「・・・わかったわよ。あんた・・・あんたってほんとにもう、昔からいつもそう。
何か頼む時そういう目をして、そんなんだから放っておけな・・・!」
そこまで言いかけたドライは、ハッとしたように言葉を中断すると乱暴に言い放った。
「い、いいわよ!!やればいいんでしょう!?
あんたが死んでも私、責任取ってあげないんだからね!」
「ありがとう。」
そんなドライの肩をアインは反射的に抱き寄せていた。
いつだったか、同じことをしたことがあっただろうか・・・?
どこかそんな不思議な感覚にとらわれながらも、アインは懐かしさに浸るようにしばらくの間そうしていた。
ドライも同じような感覚だったのだろうか?
いつものように暴れるようなことはせず、しばらく大人しくした後、自分から身体を放して。
「ふ・・・任せなさいよ、それくらいのこと私だったら余裕よ!
ただし、そう・・・一つだけ覚えておいて。これだけは絶対に守らないとだめよ?」
アインに顔を近づけて言った。
「ああ、なんだいドライ?」
「絶対に、どんなことがあっても死んじゃ駄目。死にかけちゃだめよ?」
「もちろんだ。」
「絶対に・・・絶対に約束だからね?」
いつになく真剣なドライの言葉は、アインを心配していることはもちろんだが、それ以上に何かを危惧しているようにも思えた。
そのことをアインも察したのか、決意のこもった瞳で強く頷く。
しばらくじっとアインの瞳を見つめてからドライはまた軽くため息を吐いて。
「わかったわ・・・じゃあ、練習しましょう。」
さっさと先に歩き出す。
「おう!」
そんなドライにアインは嬉しそうについて行った。
「私についてこれなかったらけたぐりまわすからね!」
「おーう!明るい未来へレディゴー!」
そんな会話をしている2人は、いつになく楽しそうだった。




