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ホムンクルスの箱庭  作者: 日向みずき
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ホムンクルスの箱庭 第4話 ~プロローグ~ 『炎の旅立ち触手編~あの日僕らはアフロの星になった~』

すいません更新遅れました( ノД`)…

第4話プロローグです(*ノ▽ノ)

「・・・そんなわけで悪の組織と戦った俺は、命と引き換えにやつを足止めしたわけだ。」


「ちょっと、あんたさっきからいったい誰に向かって語ってるのよアハト?」


 アハトが復活してから数時間後、一行は包囲されていた。

 地下の研究室の隠し通路の扉は今まさに壊されようとしている。

 何者かがとてつもない力で鉄の扉を打ち破ろうとしていた。

 扉には木の根が喰い込んだような跡が全面に浮きあがりギシギシと音を立てている。


 そんな中、アハトが前回までのあらすじ?をいきなり語り始めたのでソフィは思わず突っ込みを入れる。

 すると、フィーアがアハトの言った内容を省略してぬいぐるみのそうちゃんに語り始めた。


「えっと~、前回までのあらすじ。

 パパとママに会いに行きました。

 アインが説得しようとしましたが出来なかったので、とりあえずパパとママとヒュドラをふるぼっこしました。

 そしたらヌルが現れたのでお話し合いしたら、ヌルが怒ってアハトを殺しちゃいました。

 でもアハトは戻ってきたので、めでたしめでたしだったと思います。まる。」


「まってフィーア!いろいろと省略しすぎてまるで私たちが悪役よ!?」


「で、でもそうちゃんに今日の寝物語を~・・・」


「よしよし、寝物語は僕が後で聞かせてあげるから、今は一緒に逃げようねフィーア。」


「うん!」


 いろいろと簡略化されすぎて事実とはかけ離れてしまった物語は、どうやら後でツヴァイが修正してくれるらしい。

 まあ、そんなことはともかく。


「みんな、この場所はもう駄目だ!街も完全に囲まれてしまっている。

 ここも時間の問題だよ!」


 様子を見るために外に出ていたアインが駆け込んできた。


「丘から街の様子を見てみたんだけどあちこちに火の手が上がっている。

 それだけじゃない、ヌルの触手みたいなものが街の中心にあった施設を飲み込んでしまった。」


「あれだな、絶体絶命のピンチってやつだ。触手プレイまであと3秒。」


「3秒!?短すぎるからっ!せめてあと5分は持ってくれないと。」


 なぜか満足そうに頷くアハトにそう言いながらも、ソフィは着々と逃げる準備を進めている。


「MS5・・・マジで触手の5分前。」


「古いおまけに、今の世代に伝わらないからやめてもらえないかしら。」


 キリッとした表情で言うアハトをあきれ顔で眺めながら、ため息交じりにソフィは言った。


「ツヴァイツヴァイ、触手プレイってなあに?」


 わくわくとした表情で尋ねるフィーアに、ツヴァイは笑顔を崩さないまま。


「そうだね、とても良くないことだからそうなる前に逃げよう。」


「ええ・・・!?触手ぷれい?される前に逃げようツヴァイ?」


 楽しいことだと勘違いしていたフィーアは、おろおろとしながら袖をつかむ。

 そんなフィーアににっこりと笑いかけながら、ツヴァイはこう答えた。


「大丈夫だよ、もしそんなことになったらアハトを生贄にささげるからね。」


 どうやら、フィーアに良くない知識を与えようとしたことを怒っているらしい。


「生まれたてぴちぴちの俺にプレイを強要するとは・・・ツヴァイ、おまえさてはドSだな?」


「フィーアによくない影響を与える者に対しては厳しいだけだよ。」


「ちょっとあんたたち、そんなこと言ってる場合なわけ!?」


 悠長に構えているように見えるメンバーに、ようやくまともな突っ込みを入れたのはドライだった。

 ドライはアインと一緒に街の様子を見てきたのだが、少なくともギャグをやっていられる余裕はないように思える。

 扉を軋ませていた触手はすでに地下全体を覆っているらしく、壁には小さな亀裂が入り始めた。


「そうね・・・でも、まともな方法じゃ逃がしてもらえそうにはないわよ?」


「そうだな、こんなことをやっている場合じゃない・・・これは炎の旅立ちしかありませんな。」


「炎の旅立ちって何!?」


「仕方がない・・・ここに非常用のボタンがある。」


 ドライの突っ込みをさらっと交わして、アハトは壁の横にあるスイッチを押そうとする。


「ま、待つんじゃ・・・まさか押すとグレネードが爆発するとかそういうんじゃないじゃろうな!?」


 これまで成り行きを大人しく見守っていたグレイだが、さすがにそれには顔色を変える。


 すると・・・


「なあに言ってんだ。俺がグレネードを爆破するしか能がないみたいじゃないか。」


「ま、まさかそこを否定するとは思わんかったわい。」


 やれやれとため息をつくグレイに、アハトはにやにやと笑いながらこう言った。


「ここに2つの液体がある。」


 アハトが言うとおり、研究室の壁には小さめのポッドが備え付けられており、そこには液体が満たされていた。


「仮にAとBとしよう。この2つを混ぜ合わせるとあら不思議ただの液体が爆弾に・・・」


 ぽちっとボタンを押すと同時に片方のポッドがカシャンっと割れて液体が流れ出した。


「ちょっとちょっと!それってまずいんじゃないの!?」


 慌てるドライにアハトは笑顔でこう言った。


「ドライ、悪いんだがちょっとそっちのボタンも押してくれ。」


「な、なによ、私は子供じゃないんだからボタンがあったら押したくなるなんてことないんだからね!?頼まれて嬉しいなんてことこれっぽっちもないんだから!!

 ・・・ぽちっとな。」


 どこかわくわくした様子でドライがボタンを押すと、もう一つのポッドが割れて液体が流れ出した。


「ちょっとお!?余計状況が悪くなってるじゃないのお!!」


 アハトの言葉に乗せられてボタンを押してしまったが、このままでは数十秒後には液体が融合して爆発してしまう。


「誰のせいでこんなピンチに陥ってるのよおお!!」


 叫んだドライだったが、誰もが自分に視線を送っていることに気付いたのか慌てて反論する。


「私!?私なの!私は言われたとおりボタンを押しただけなのにぃ!」


「大丈夫だドライ、君は僕が守る。」


 そんな状態の中、突如送られたアインの言葉にドライはぽかん、としてしまった。


「・・・あ!?え?あんた何言ってんのよー!?

 そ、そんなこと言われたって、昔のこと許してあげないんだからね!?」


「これから一緒に未来を築いて行こう、よく分からないけど!」


 驚きすぎて声が裏返ってしまったドライを、アインはひょいっと肩に乗せた。

 そんな2人の様子を気にすることもなく、アハトが今度はフィーアに声をかける。


「しまった、鉄板を用意するのを忘れていた。フィーア、ちょっと凍らせておいてくれ。」


「は~い。」


 フィーアは魔法を唱えると、流れ出した液体が触れ合う寸前で凍らせた。

 アハトが別のスイッチを押すと上から凍った液体の上に鉄板が落ちてきて、さらに天井が秘密基地のように開いていく。


「と、とにかく逃げるわよ犬っころ!」


「まあ落ち着きたまえ、そこの鉄板の上に皆乗るんだ。」


「か・・・かっこいい!」


 その様子を見てアインが感動しながら、アハトに言われるがままに鉄板の上に乗った。


「グレネードじゃないが、結局、爆弾なんじゃろうが・・・」


 深いため息をつきながらも、グレイも鉄板の上に続く。


「ちょ、ちょっと鉄板の上に私たちを乗せてどうするつもりよ!

 焼○土下座でもさせるつもり!?っていうか、乗るんじゃないわよ犬っころ!」


「大丈夫だ、アハトを信じるんだドライ!」


「・・・みんな、鉄板の上に乗って飛ぶわよ。」


 アハトの意図を正確に読み取ったソフィは、やはり大人しく鉄板の上に乗った。

 怯えるフィーアを抱き上げて、ツヴァイは鉄板の上に乗る。


「大丈夫、もし何かあっても僕が助けるからね。」


「ツヴァイ・・・」


 フィーアとツヴァイが見つめあった時だ。

 ちょうど液体が溶けて融合したのだろう。

 地面から白い煙が上がり始める。


「ちょっと!?やめなさいよ!やめなさいよー!?」


 パニックになりそうになるドライをしっかりと捕まえて、もとい、支えてアインは言った。


「さらばわが家・・・じゃなかったアハトの家。君のことは忘れない。」


 そしてアインがびしっと敬礼した瞬間。


ちゅどおおおおんっ!!


 大きな爆発と共に鉄板が上に飛び上がり、さらに下のアジトが爆発した。

 その爆風のあおりを受けて鉄板はさらに勢いを増して飛び立った。

 このままではたとえ脱出できても、地面に落下するだろう。


「ちょっとおお!これどこまで飛ぶのよお!?」


「どこまでもなー。」


 泣きそうになっているドライにアハトはしれっと答える。


「はいはい・・・。」


 はあっとため息をつきながら、ソフィが背に翅を具現化させて鉄板に妖精の鱗粉をかけた時だ。


「うおおおお!残りの衝撃は僕が受け止めるっ!!」


 刀を構えたアインが下に向かって衝撃波を放つと。


ちゅどおおんっ!!


 さらに爆発が起こって黒い煙が辺りを包み込んだ。


 そして・・・


「あらアイン、アフロが乱れていてよ。」


 いつかの調子でアハトがアインにそう言った。


「そういうアハト、君も素敵なアフロだよっ!」


 きらっと笑みを浮かべてアインが言った通り、今の衝撃で気づけばアフロが量産されていた。

 

 アインの肩に乗っているドライも、フィーアを抱き上げるツヴァイも、抱きあげられているフィーアも、無言で諦めたように座っているグレイも全員がアフロと化していた。


 街から離れた方向に飛び立つ際に見えたのは街の様子だった。

 肩越しにちらりと振り向いたアインは、それを見て最後にこうつぶやいた。


『アフロの彼は大丈夫だろうか・・・』と。




「みんな!早く逃げるんだ!」


 その頃、街ではアインにインスパイアされてアフロになった例の兵士が、街の住人を避難させているところだった。


「女子供から街の外に逃がすんだ!前代未聞のマリージアのピンチ・・・!

 十数年間ただ平穏な日々を過ごす門番でしかなかった俺のアフロが火を噴くぜっ!!」


 周りから聞けばよくわからないことを言いながらも、彼は心に誓っていた。


「アフロの君・・・!あんたにもらった勇気を今ここで振り絞って俺は街の住人を守るぜ!

 いつ守るの!今でしょ!」


 そんな時だ。


「あ、危ない!?」


 誰かの声に反応してアフロが振り向くと、触手がその身体を突いた。


「ぐふ・・・っ!!」


『あふろおおっ!!』


 仲間たちの悲痛な声が響く中、なんとかその場に踏みとどまったアフロの兵士は触手を剣で切り裂いてこう言った。


「ふう・・・アフロがなければ即死だった。」


『アフロ関係ないっすよ!?』


 仲間たちの至極当然な突っ込みはともかく。

 空を仰いだ彼の視線の遠く先。

 具体的にはアハトの屋敷のある丘から何かが空に舞った。

 それは月の光を反射しながらきらっと輝き、森の中に落ちて行った。


「みんな見ろ・・・あれがアフロの星だ。」


 そんな彼らを指さしながら、アフロの兵士は希望を見出したかのように言った。

 たとえ遠く離れていても、彼にはそれがわかる。

 アフロになって旅立っていった彼らを、アフロの兵士はいつまでも見送っていた。




 ちなみに、同じ頃、触手に飲み込まれた研究施設からその様子を眺めるヌルの姿があった。

 アフロの星、もとい鉄板で吹き飛ぶアフローズの様子を眺めていた彼が。


「・・・あれ、良いな。」


 と、ぼそっと呟きながら、うらやましそうに見ていたとかいなかったとか。


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