第6話
洋装店の帰り道だった。
思ってた以上に皆の視線を感じるんですけど…。
(やっぱ変?ウサ耳が変なの?)
いたたまれなくなって、こっそりテディの陰に隠れる。
「どうして皆見てるの?ウサギってそんなに珍しい?」
「まぁ、誰もこれまでウサギを見たことないからね。でもそれだけじゃないよ。
分からない?」テディは苦笑している。
モーリスは仏性面だ。まぁそんなにいつも甘い顔はしてないけどさ。
(?)
重ねて尋ねる前に、モーリスに声をかけてくる男たちが居た。
あ、助けてくれた時に居た、あの豹さんと犬さんだ。
「お前ら…。ジークまで。」
モーリスが盛大なため息をつく。
「だってモーリスの独り占めなんて狡いよ。モーリスにはテディが居るでしょ。」
豹さんはお構いなしに近づいてくる。
「こんにちは。ウサギさん。僕はハルディアだよ。ハルって呼んでね。」
手には小さい花束。え?これ、私に?
思わず見返してしまったけど、豹さんは凄く嬉しそうだ。
そういえば初めて会ったあの時も、ずっとニコニコしてたっけ。
「…チセです。あの時はありがとうございました。」
(歓迎してくれてるんだよね。嬉しい…。)
…なんて考えながら、受け取ろうとしたらそのまま両手を掴まれてしまった。
「いえいえ。お礼ならあの時じっくり見せてもらった生足で、おつりあげたいくらいだし。」
ーーーうわ~~。
さすがにこんなしょっぱなからセクハラ発言くるとは思わなくて、
かぁ~と思わず赤面してしまう。普段ならこんなことないのに。
完全に負けちゃってるよ。
「チセちゃんかぁ。可愛いなぁもう。食べちゃいたいくらいだよ。」
ピンと伸びた尻尾の先っぽがゆらゆら動いてる。
「あーいい匂いする…。」
「いいかげんにしろっ。」
モーリスさんが頭をはたこうとしたら、それより先に後ろにいた犬さんが、
思いっきり豹さんの背中を蹴り飛ばした。
「もう行くぞ。」
犬さんと目が合って、…また目を逸らされた。
(…助けてくれた?)
うーん。
でも、二人とも悪い人じゃなさそうだ。
豹さんは背が高くて、ちょっと細見。
髪は日に透けるようなブラウン。黒い瞳。
私に好意持ってくれたのかな、と思いたくなる蕩けるような笑顔。
どう見てもイケメンさんだ。なんか手早そうなのが気になるけど。
でも、後ろで揺れてた豹柄のしっぽも可愛かった。
犬さんも同じくらいの身長、シルバーの髪に尖った灰色のお耳。
瞳の色は、あれれ、いつも目を逸らされちゃうからまだ判んないや。
そういえば、名前も言ってなかったけど、ジークってモーリスが呼んでたっけ?
なんだか雰囲気は怖いけど、助けてくれたし、今日も会いに来てくれたし、
悪い人じゃないんだよね?
(また機会があったら、しゃべってみたいな~~。)
(あの耳も、ちょこっとでいいから触ってみたいな~~。)
なんて帰り道はさらにニコニコ顔だったもんだから。
最初よりも更に注目されまくってるのにも気づかず。
「うーん、やっぱりもう少しだけ目立たない服にした方が良かったかな?」
なんてすでに姉化しているテディさんが呟いて、
やっぱりすでに兄化している仏頂面のモーリスさんが、怖い視線で周りを牽制しまくって居たとかいないとか。




