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第3話

村長さんは、シロクマのおじいさんだった。見るからに優しそう。

それだけでもかなりホッとする。

どうして森の中にいたのか聞かれたので、実はヒトであることを除いて、あとは大体そのままを話した。

 『森の魔女』にココまで飛ばされたこと。

 セントルーモス王国の学生だったこと。

 自分は魔術師見習いであること。

私はもちろん真っ先に、ここはどこなのかが知りたくて尋ねたんだけど、

この村に名前は無く、セントルーモスという国も聞いたことが無い、とのことだった。

(うそでしょ?手がかりゼロってこと? 

 セントルーモスの名前も聞いたことがないなんて…そんな事ってあるのかしら?

 大陸で一番大きい国なのに…)

『森の魔女』についても、もちろん分からないらしい。

…通り名だけじゃ分かるわけないわね。


もう一つの疑問。本物の獣人の方々に、私はどう映っているのかも不安だったのだけれど。

どうやらそれも問題ないみたい。

というのも、この町にも近くの地域にも、ウサギ族とは聞いたことが無いらしいの。

ウサギの姿をした獣人がいることも全く予想もしなかったというような口ぶり。

だから、恐らくずいぶん遠くの国から飛ばされてきたんだろうってすんなり受け取ってもらえたみたい。

…とりあえず、すぐに追い出されたりしなくて、ホント良かった。

…そう思ったら、いつの間にか始まってた手の震えが、治まってきて。



少し安心したところで、獣人の皆さんをこっそり観察する余裕ができた。

皆、お顔は人間とほとんど変わらなくて、っていうか何気にかなり整ってるの!

うん、ちょっと強面系から優しそうな人まで色々なんだけど、イケメンさんばっかり。

ここに居るのはほとんど男性なんだけど、背も皆すごく高い。

何の種族かは、頭の上の耳の形と、体格としっぽから、およそ見当がつく程度。

獣人さんたちと接するのホント初めてなんだけど、なんていうか、ちょっと楽しいじゃない。

(そっかぁ、獣人さんたちって全然優しかったのね…。

 うーん、あの人の耳とか、あの人のしっぽとか、触ったら気持ちよさそう!

 しっぽ、揺れてるよ~、可愛い!!)

なんて考えてたら、自然に自分の顔緩みまくってて。

始めの時以上に、皆がこっちを食い入るように見てたことにもしばらく気づきませんでした。


「いや~、それにしても可愛らしい。」

仕切り直すように、シロクマ村長さん。

「ウサギのおじょうちゃん、歳は?」って。

あれ、私もしかしてずいぶん幼く見られてるんじゃ…??

いや、確かに背丈はもともとかなり小柄なんだけど。

皆さんが大きすぎるんです!!!…とはさすがに言えず。

「17歳です。もう成人しているんですよ~」って、

今度は完璧な美少女スマイル!!アンドちょっと小首かしげるポーズ。

うんうん、大分調子出てきたわ。

(この磨いてきたナイスバディが、目に入らないの?なんてね。)



そんな心の声が聞こえたのか聞こえなかったのか…。

また一部の男たちの目つきが変わったことには、やっぱり気づかなかったのでした。



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