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第1話

とりあえずローブにしまっていた杖が無事なのを確認してホッとする。

「う~ん、どうしよう」

家族が捜してくれる、というのは期待できない。

というよりも、やっぱりこの姿をなんとかしなきゃ…。

これまで学んできた魔術の中に、確か幻影の術みたいなものはあったけど、獣人に変化する術なんて知らない。

もちろん、呪いの解き方なんて見当もつかない。

とりあえず、森の出口を探そうと立ち上がろうとして、あまりの痛さに再び倒れる。

さっきの着地失敗で、足を痛めてしまったらしい。

「う~」

めったに泣かないチセだけど、さすがにちょっと泣きそうだ。

くやしい。くやしい、くやしい!

これでも、容姿は整ってるほうなんだよ。魔力だって、飛びぬけてってことはないけど、そこそこある。

だから、両親が亡くなった時、おじさんの家においてもらえた。

少しでも綺麗にみられるように、頑張ってた。

正直ずっとおじさんの家で肩身の狭い思いしたくなくて、魔術学校にも入った。

でも学校では、やっぱり貴族の家の子や、生まれつき魔力の多い子、頭のいい子には勝てないことも気づいてた。

それでも負けたくなくて、…考えて、『森の魔女』の所に行った。

 『森の魔女』。

この国、セントルーモス王国の魔術師達とは異なる、古代魔法を操る魔法の使い手を魔法使い、魔女という。

でもその存在は知られていても、ほとんどはどこに住んでいるのかも分からなくて、彼らのことは別名『さすらい人』とも呼ばれていた。

『森の魔女』はその魔法使い、魔女の中でも、現在居場所が知られている数少ない一人で、セントルーモス王都から最も近い森に住んでいた。


何日も何日も森の中をさまよって、やっと見つけた森の魔女。

弟子にしてくれるよう、何度も頼みこんだ。

「自分の家にお帰り」

彼女は言ってたけど、やっぱり諦めきれなくて。

「本当にいいんだね?」

と彼女は聞いた。

そして、―――冒頭にもどる、というわけ。


知ってたけど、やっぱり、世の中甘くない。



動けないし、とりあえずすぐそばにあった木の根っこに座り込んで、もう一度自分の身体を確かめる。

服装は、着てたちょっと丈の短めのローブのままだ。両手もなにも変わってない。長く伸ばした自慢のふわふわウエーブの髪も、

魔女の家にたどり着くまでに彷徨ってたせいで、汗でべとついて台無しだったけど、もともとの金髪のままで特に変わってないみたい。

そうだ、と、外出時には持ち歩いている鏡の存在を思い出して、取り出して覗いてみる。

見慣れた自分の顔だ。別に変ってない。

でも耳だけが、あるべき場所になくて、頭の上にふわふわの毛で存在を主張している。

真っ白くて、ちょっと毛足が長めの、…どう見てもウサギの耳。

触ってみると、それは間違いなく自分の身体の一部だと解る感触。

はぁ、と一つため息をこぼして、痛めた足を見ようと、ブーツを脱いで、足首を触る。

どうせ誰もいないし、とローブの下に穿いてたタイツも脱いで見ていた時だった。

自分のこのウサ耳が、近づいてくる足音をとらえた。それも一人じゃなくて、すぐ間近で。

驚いたけど、今は隠れることもできそうにない。

(どうか、悪い人たちじゃありませんように。)

無意識に杖を握りしめた。



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