第18話
「ハルディア、私たちにも噂のウサギさんを紹介しておくれ。」
ハルに手を引かれて会場に入って直ぐに、呼び止める声がかかり、私達は足を止めた。
声をかけてきたのは虎のご夫婦みたいだったけれど、近くにいた他の獣人さんたちも側に寄ってきて、あっという間に囲まれてしまった。
ハルは私を振り返って困ったように笑うと、皆の顔を見ながら言った。
「新しく村の一員になったチセだよ。見ての通り、ウサギの女の子なんだよ。」
紹介を受けて、私がペコリと頭を下げる。
「へぇ。これは素晴らしい。」
「噂以上だな。」
「私はミーシャさんから聞いてたわ。」
「本当にウサギさんなのね。」
一斉に皆が話し始めてしまい、ウサ耳も反応に困ってピクピクと動きだした。
最初に声をかけてくれた虎のおじさんが笑った。
「最初に村に来たとき以来だが、本当に可愛いらしいお嬢さんだ。
こんなに可愛い子と出会ったんじゃ、うちの娘に目が行かなくても仕方無いな。」
ハルも笑っている。
「チセは僕達が見つけたんだ。」
またこちらにウインクをくれて、続けた。
「だからチセがいくら魅力的過ぎるからって言ったって、今日は僕が付いてるからね。皆、変な気起こさないでよね!」
…、虎のおじさんに、っていうより、周りの皆に言ってるみたい。
でも虎のおじさんも気分を害された様子も無く、笑っている。
「大丈夫さ。今日は秋祭りなんだから。そんな男はこの町には居ないよ。」
「うーん。…でもこの香りだよ?」
ハルは握ったままの私の手を、自分の鼻に近づけて、なんと匂いを嗅いでくる。
「きゃ~~!」
周りで若い女の子たちの悲鳴が上がった。
「…ハルディア、その位にしときな。花飾りもまだじゃないか。早く選んでおやり。」
横から虎のおばさんが声をかけてくれた。
「チセさんと言ったかい?祭りは気に入った?良い夜をね。」
そういってさりげなく送り出してくれて、私達は輪の中から進むことが出来たのだけど。
また直ぐに
「ハルディア、花飾り買うならうちの店にしときな!
この黄色いのなんてどうだい?」
なんて呼び止められて。
ハルは微笑みながら、花飾りを選んで私のウサ耳にかけてくれた。
どうも花飾りは祭りの定番みたい。
周りの女性達を見ると皆耳や髪に付けている。
(ハル、顔広いなぁ。
それにしても、あの女の子たちの悲鳴…。
ハルってば、やっぱりモテるんじゃない。
…どうして、私にばかり、構ってくるのかしら?)
その周りにいた男の子たちの悔しそうな顔には気づくこともなく、チセは、そんなことを考えていたのだけれど。
次の店でまた自然に足が止まった。
色んな動物を型どったカラフルな飴が、沢山並んでいるのだ。
動物達は様々なポーズをしていて、まるでオモチャ箱のような、飴細工の店だ。
(なんて可愛いの!!)
思わず目が釘付けになってしまう。
「これも秋祭りの名物さ。ずいぶん時間をかけて作られてるんだよ。気に入った?…どれにする?」
ハルがまた笑っている。
「…ウサギさんは…ないかなぁ?…わ、これ、僕と同じ柄だ。どう?」
うーん、凄く可愛いんだけど…。
買っても勿体なくて食べられそうにない。
(それに、飴細工は、ジークが……。あれ?)
なんだか急にジークの顔を思い出してしまった時、ちょうどまた声をかけられたのだった。




