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第12話

「チセ、今日は森に薬草を取りに行きましょう。」


急にテディがそう言うから、ちょっと心配になったのだけれど。

「分かったわ。でも、どうして?誰かケガでも?」

「もちろん違うわ。」

テディは笑って答えてくれた。


「色々使えるアスミ草ね。あなたも知ってるでしょ?この時期が一番効能が凝縮してるのよ。」

なるほど。

だからこの時期に幾らか採ってきて、干しておき、冬の万が一に備えておくのである。

(そうだわ…。)

私がこの村に来たばかりの頃の事だ。

私の足のケガにも、確かモーリスが塗ってくれた。

何故か、もうずいぶん昔の事のような気がする。


……?


何か大事なことを忘れているような気に駆られて、思考の海に沈みそうになったところで。

可愛い声に引っ張られる。


「わー、もーり、もーり!」

「やくそ、やくそ!」


そう!

最近、ルーカスとフィリィが人型をとれるようになったのである。

「ちいちゃ、一緒。」

「ズルい~、フィと一緒!」

舌ったらずで一生懸命大人に混じって話す姿の可愛いの何の!

抱っこをせがまれても、うーん、役得。

本当に幸せな気分。


「ローズさんも誘って、今日は女同士、紅葉狩りよ。」

「ええ、楽しみだわ!!」

そうと決まれば、と二人で笑い合って、バスケットにパンやジャムを詰め始めたのだった。




薬草は直ぐに見つかって、沢山採った後は、おやつタイム。

子供たちは、拾い集めた落ち葉やドングリを並べて、楽しそうに遊んでいる。

ローズさんも持参してくれていた手作りのマフィンを振る舞ってくれた。


「それで?チセは秋祭りはハルと行くの?もう誘われたんでしょう?」

テディが急に話を振ってくる。

「まぁ、そうなの?」

ローズさんまで。…そんな綺麗な顔で期待してこっちを見られたんじゃ、話を反らしにくいじゃない。

「うん、まぁ…。」

「ジークは?何も言われてないの?」

テディってば。ローズさんの前で…。

いや、確信犯?

「ジークは、…誘われていないわ。」

「あら、そうなの?変ねぇ。」

テディはあからさまにガッカリしてるけど、ローズさんはフフフ、と笑っているだけだ。

思いきって、気になることを聞いてみる。

「ジークは、…誰かと行くのかしら?」

「いいえ。あの子は誰にも申し込んではないはずよ。だから、祭りで会ったら、あの子とも踊ってやってね。チセさん。」

そう言って微笑んでくれる。

ん?

「そうねえ。あなた、きっと大変よ。きっとまた凄く注目されるはずだから。もしもの時には、ハルでもジークでも盾にするのよ。」

んん?

注目?そういえば町に行く度に皆に見られるのも凄く気になってたんだけど。

(いや、その前、何て言った?)

「もちろん、ダンスよ。すっごくロマンチックなのよ。私もあの時は、モーリスがカッコ良く見えてねぇ。」

「秋祭りのダンスは特別よね。」

「ローズさんとガウディさんも、当時、相当注目されたわよねぇ。何てったって、美男美女だし。」

「もう昔の話よ。

それに、あなたたちだって、皆見てたわよ!

あのモーリスが顔真っ赤にして踊って、ねぇ。」

「フフフ。」

「ウフフ。」

ってノロケ話始まっちゃってますけど。

(ダンス~?わぁぁ、どうしよう!!)



知らなかったよ~、ダンスもあるなんて。

「自然に身体動かしてれば良いだけだから、大丈夫よ。」ってテディは言ってたけど。

大丈夫かしら??

それから帰るまではダンスのことで頭いっぱいになっちゃって。


頭の隅に引っ掛かってた何かは、結局、そのままになってしまったのでした。










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